糖尿病の指標「HbA1c」が低すぎても心血管疾患のリスクが高かった
糖尿病の指標に用いられるヘモグロビンA1c(HbA1c)が高いと、糖尿病に近い状態と考えられています。また、糖尿病は虚血性心疾患などの心血管疾患を増やす要因と考えられています。しかしながら著者らが日本の大規模集団を対象にした研究データを利用して解析を行ったところ、HbA1cがある範囲より低い場合にも、心血管疾患の発症リスクが高くなっていました。
◆日本の多目的コホート研究対象者29,059人を調査
著者らは、日本の多目的研究対象者である10,980人の男性と18,079人の女性(46から80歳)に関し追跡調査を行い、
◆HbA1cが5%未満で心血管疾患リスクが1.5倍、6.5%以上では1.77倍
以下の調査結果を得ました。
中央値9.4年の追跡調査期間において、935例の心血管疾患のイベント(770が脳卒中、165例が
冠動脈 疾患)が生じた。糖尿病を指摘されていない患者でのHbA1cレベルと心血管疾患リスクには非線形の関連が観察された。HbA1cレベルが5.0から5.4%(31 - 36 mmol/mol)の人と比べて、糖尿病を発症 していない状態での心血管疾患のハザード比は5%未満(<31 mmol/mol)では1.50(95% 信頼区間 1.15から1.95)で、5.5から5.9%(37-41mmol/mol)では1.01(95% 信頼区間 0.85から1.20)、6.0から6.4%(42-47mmol/mol)では1.04(95% 信頼区間 0.82から1.32)、6.5%以上(≥48mmol/mol)では1.77(95% 信頼区間 1.32から2.38)であった(非線形傾向でのP<0.001)。
つまりHbA1cが通常値(5から5.4%)の人と比較して、心血管疾患のリスクは
- 5%未満では1.5倍
- 5.5%から5.9%では1.01倍
- 6.0%から6.4%では1.04倍
- 6.5%以上では1.77倍
という結果でした。
著者らは「糖尿病を発症していない一般の日本人では、HbA1cが高値でも低値でも、心血管疾患の高リスクと関係があった」と結論づけています。
HbA1cは
執筆者
Hemoglobin a1c levels and the risk of cardiovascular disease in people without known diabetes: a population-based cohort study in Japan.
Medicine (Baltimore). 2015 May
[PMID: 25929925 ] http://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2015/05010/Hemoglobin_A1c_Levels_and_the_Risk_of.33.aspx
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。