2015.06.19 | コラム

すり傷も程度によっては消毒する

コラム「すり傷は消毒せずに◯◯する」に対して形成外科的な視点から
すり傷も程度によっては消毒するの写真
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MEDLEYニュースのコラムで紹介された、「すり傷は消毒せずに◯◯する」という記事に関して、形成外科医として少し補足をさせて頂きます。形成外科医として、傷の治療を専門にしておりますので、「簡単に治らなかった傷を多く見ている」医師の1つの意見としてご参考になれば幸いです。

◆すり傷でも程度によってはきちんと消毒が必要です

治癒の専門家の観点からは、すり傷を一律に「消毒しない」と考えることは、危険がある場合があると思います。

「消毒薬は傷にたいして使用するべきではない」という言葉のみがひとり歩きし、医療者が傷の状態の評価なしに盲目的に消毒薬の使用を避け、傷を悪化させたり、なかなか治らない傷にしてしまったりということにしばしば遭遇します。

感染もしくはその前段階(Critical colonization)になる前の急性期の傷に対しては通常消毒は不要であり、消毒薬を使用せずに水洗いのみで、軟膏もしくは被覆材で保護することが妥当な処置であると思われます。

しかしながら、汚染が酷い場所で受傷したすり傷や、植物等による刺し傷を含むすり傷や異物が多数埋入してしまっているようなすり傷、受傷から時間が少し経過しているすり傷など感染のリスクが高い傷はそれだけで治ると思い込まずその後経過を慎重に見る必要があります。

すり傷であっても、経過によっては必要に応じて傷に消毒薬を使用するべきであるという考え方が現在の主流となってきています。水洗いをして保護をする、のみで治癒が悪いようであったらそれだけで治ると思い込まず早めに対応することが大切です。

 

◆傷の覆い方も多種多様

消毒薬を過剰使用しないという考え方とともに、この20~30年ほどで広がってきた近代的な傷の治療法として湿潤療法というものがあります。市販品ではジョンソン・エンド・ジョンソンのキズパワーパッドや3Mのネクスケアなどのハイドロコロイド材などが代表的な湿潤療法のための商品です。先の記事中では、保護の方法としてガーゼを当てることが勧められていますが、急性期で感染のない傷にはしっかりと洗ったのち、このようなもので覆うのが、治癒が早く、とてもよい方法です。

ただし、この治療も「感染がない」ということが非常に重要で、やはり盲信は危険です。赤みや痛みが強い場合や治癒がなかなか進まない場合には治療を切り替える必要があります。

どのような傷の被覆方法がよいのかは、その場その場で臨床的な判断を加える必要があります。

 

◆傷の処置の仕方1つとっても、色々な方法があることを知って下さい

傷は消毒するべきではないという考え方は1980年台頃から「眼に入れて安全なものしか傷の中にいれてはいけない」という米国のコンセプトが導入されたのが契機となっています。それ以降、「消毒薬は使わない」という風潮が始まり医療者の中に広がっていったようですが、最近では必要に応じて消毒薬を使用することが見直されてきています。

すり傷に対しても、他の様々な傷に対しても盲目的に「消毒薬は使用しない」と判断することは、形成外科の中では一般に支持されていないと思います。必要に応じて消毒薬をきちんと使用するというのが、形成外科の一般的な見解ではないでしょうか。

すり傷はまずなるべく早くしっかりと洗うのが大切です。

そして、洗う、保護をするということをしているだけでは治らない場合があることを認識し、経過に不安があったり、悪化していく様子が見られたりしたら、早めに医療機関に相談することをおすすめします。

診療科によって治療する患者さんの状態も異なりますし、治療法で「正解」を決めるのはとても難しいことです。「すり傷は消毒せずに◯◯する」というコラムと、本コラムを通して、傷の処置の仕方1つとっても色々な考え方があるということを感じて頂けたら嬉しいです。

まず傷に関しては「軽い場合は消毒は要らないが、全ての傷で消毒薬を使わないということではない」ということを覚えて下さい。

 

参照:「すり傷は消毒せずに◯◯する」

http://medley.life/news/item/555d627959747e2b01e633a6

執筆者

脇村 祐輝

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。