2015.06.17 | ニュース

ペースメーカーを入れていても運動するべき?

24週間のウォーキングで効果あり
from Circulation
ペースメーカーを入れていても運動するべき?の写真
(C) Ingus Evertovskis - Fotolia.com

植え込み型除細動器(ペースメーカー)は、危険な不整脈を予防するために使われます。運動をして心臓に負担をかけると、良い効果よりもかえって不整脈を誘発してしまうのではないか、と思われるかもしれません。アメリカのメイヨー・クリニックの研究班が、植え込み型除細動器を使っている人にウォーキングをしてもらったところ、除細動器を作動させる不整脈を増やすことなく、運動機能を向上させたという結果が報告されました。

◆植え込み型除細動器を使っている人160人をランダム化

研究班は次のように運動療法の効果を調べました。

植え込み型除細動器を一次予防目的(43%)または二次予防目的(57%)で装着している合計160人の患者(124人が男性で36人が女性)が家庭での有酸素運動トレーニングと維持のプログラムまたは通常のケアにランダム割り付けされた。

植え込み型除細動器を使っている人160人が、家庭で24週間のウォーキングをするグループと、何も運動を決められないグループにランダムに振り分けられました。

 

◆作動回数増加なし

次の結果が得られました。

植え込み型除細動器を装着していた参加者の平均年齢は55歳±標準偏差12年で、ejection fractionは40.6±15.7だった。

有酸素運動は8週後にピーク酸素摂取量を有意に増加させ(26.7±7.0mL/kg・分、通常のケアでは23.9±6.6mL/kg・分、P=0.002)、維持運動が続けられていた24週後にもその効果が続いていた(26.9±7.7mL/kg・分、通常のケアでは23.4±6.0mL/kg・分、P<0.001)。植え込み型除細動器の作動は頻繁ではなく、有酸素運動群で4回、通常のケア群で8回であり、入院または死亡には両群に差がなかった。

ウォーキングのグループで、運動能力を反映するピーク酸素摂取量が増加していました。植え込み型除細動器が作動した回数は、ウォーキングのグループで4回、何も決めないグループで8回でした。入院、死亡の多さには差がありませんでした。

研究班は「処方された家庭での運動は、植え込み型除細動器を装着した人にも安全で心血管機能を有意に改善させ、除細動器の作動や入院の原因になることがない」と結論しています。

 

植え込み型除細動器を使っている人がウォーキングをしても危険は見つからなかったようですが、もっと激しい運動や、もともと全身状態が悪い人についても同じかどうかはわかりません。植え込み型除細動器を使っていて、運動をしたほうがよいか気になる方は、主治医と相談したうえで検討されることをお勧めします。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Prospective randomized trial of moderately strenuous aerobic exercise after an implantable cardioverter defibrillator.

Circulation. 2015 May 26

 

[PMID: 25792557]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。