◆SVR12はHCVが根絶された目安
HCVは、普通の生物のようにDNAに遺伝情報が書き込まれているのではなく、DNAに似たRNAという物質がその代わりをしています。このことから、ウイルスのRNAの量は、そこにいるウイルスの量を反映すると考えられ、治療効果の評価に使われます。治療終了から12週後に血液中にHCVのRNAが見つからないことを「SVR12」といい、治療によってHCVが根絶されたことの目安にされます。
◆インターフェロン以外で治療されていたHCV感染者が対象
研究班は、HCVの感染があり、インターフェロン以外の薬剤で治療されていた人を対象に、治療終了時にHCVのRNAを計測し、その結果がSVR12を正しく予測できるかどうかを調べました。
◆治療終了時にRNAが出ても12週後には消えていた
調査から以下の結果が得られました。
ソフォスブビルとリバビリンで治療されていた55人の患者すべてが、治療終了時にロシュ社とアボット社の試験でHCVのRNAが感度未満とされた。しかし、そのうち38人だけがSVR12を達成した(陽性正診率69%)。ソフォスブビルとレディパスビルで治療されていた人は、GS-9669またはGS-9451を使っていた人と使っていなかった人を合わせて、59人全員がロシュ社の試験でHCVのRNAが感度未満となり、1人が再発した(陽性正診率98%)。アボット社の試験では90%にあたる53人でHCVのRNAが感度未満となり、そのうち1人が再発した(陽性正診率98%)。注意すべきことに、治療終了時にHCVのRNAが感度以上(レンジ14IU/mLから64IU/mL)となった6人はSVR12を達成した(陰性正診率0%)。
ソフォスブビルとリバビリンで治療されていた55人の全員で、治療終了時にはHCVのRNAが見つからなくなっていましたが、そのうちSVR12は38人だけでした。
ソフォスブビルとレディパスビルを使っていた59人では、2種類の方法でHCVのRNAを測ったところ、以下の結果になりました。
- ロシュ社の試験の結果
- 治療終了時:59人全員にHCVのRNAなし
- →12週後:1人にHCV発見(再発)
- 治療終了時:59人全員にHCVのRNAなし
- アボット社の試験の結果
- 治療終了時:53人にHCVのRNAなし
- →12週後:53人中1人にHCV発見(再発)
- 治療終了時:6人にHCVのRNAあり
- →12週後:6人全員にHCVのRNAなし(SVR12)
- 治療終了時:53人にHCVのRNAなし
研究班はこの結果から、「インターフェロンを含む治療についての過去の経験に反して、治療終了時に少量のHCVのRNAが検出されることは治療の成功を必ずしも否定しない」と結論しています。
この結果が再現されるとすれば、治療終了から12週待たないと正しい結果はわからないことになりそうですが、早い段階でより正確な予測をする方法はないものでしょうか。治療終了時にRNAが見つかった6人に何が起こっていたのかが気になるところです。
執筆者
Utility of hepatitis C viral load monitoring on direct-acting antiviral therapy.
Clin Infect Dis. 2015 Jun 15
[PMID: 25733369]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。