2015.06.08 | ニュース

C型肝炎ウイルスの治療、ウイルスが少し出ても失敗とは限らない?

インターフェロンなしの治療効果を検証

from Clinical infectious diseases : an official publication of the Infectious Diseases Society of America

C型肝炎ウイルスの治療、ウイルスが少し出ても失敗とは限らない?の写真

C型肝炎ウイルス(HCV)感染症の治療には歴史の長いインターフェロンのほか、最近さまざまな治療薬が開発されています。HCVは一度いなくなったように見えて再発するなど、治療効果を簡単には判定できません。アメリカの研究班が、インターフェロンを使わない治療のあとの検査値と経過の関係を調べたところ、治療終了時にウイルスが少し見つかっても、そのあとウイルスがいなくなることがある、という意外な結果が出ました。

◆SVR12はHCVが根絶された目安

HCVは、普通の生物のようにDNAに遺伝情報が書き込まれているのではなく、DNAに似たRNAという物質がその代わりをしています。このことから、ウイルスのRNAの量は、そこにいるウイルスの量を反映すると考えられ、治療効果の評価に使われます。治療終了から12週後に血液中にHCVのRNAが見つからないことを「SVR12」といい、治療によってHCVが根絶されたことの目安にされます。

 

◆インターフェロン以外で治療されていたHCV感染者が対象

研究班は、HCVの感染があり、インターフェロン以外の薬剤で治療されていた人を対象に、治療終了時にHCVのRNAを計測し、その結果がSVR12を正しく予測できるかどうかを調べました。

 

◆治療終了時にRNAが出ても12週後には消えていた

調査から以下の結果が得られました。

ソフォスブビルとリバビリンで治療されていた55人の患者すべてが、治療終了時にロシュ社とアボット社の試験でHCVのRNAが感度未満とされた。しかし、そのうち38人だけがSVR12を達成した(陽性正診率69%)。ソフォスブビルとレディパスビルで治療されていた人は、GS-9669またはGS-9451を使っていた人と使っていなかった人を合わせて、59人全員がロシュ社の試験でHCVのRNAが感度未満となり、1人が再発した(陽性正診率98%)。アボット社の試験では90%にあたる53人でHCVのRNAが感度未満となり、そのうち1人が再発した(陽性正診率98%)。注意すべきことに、治療終了時にHCVのRNAが感度以上(レンジ14IU/mLから64IU/mL)となった6人はSVR12を達成した(陰性正診率0%)。

ソフォスブビルとリバビリンで治療されていた55人の全員で、治療終了時にはHCVのRNAが見つからなくなっていましたが、そのうちSVR12は38人だけでした。

ソフォスブビルとレディパスビルを使っていた59人では、2種類の方法でHCVのRNAを測ったところ、以下の結果になりました。

  • ロシュ社の試験の結果
    • 治療終了時:59人全員にHCVのRNAなし
      • →12週後:1人にHCV発見(再発)
  • アボット社の試験の結果
    • 治療終了時:53人にHCVのRNAなし
      • →12週後:53人中1人にHCV発見(再発)
    • 治療終了時:6人にHCVのRNAあり
      • →12週後:6人全員にHCVのRNAなし(SVR12)

研究班はこの結果から、「インターフェロンを含む治療についての過去の経験に反して、治療終了時に少量のHCVのRNAが検出されることは治療の成功を必ずしも否定しない」と結論しています。

 

この結果が再現されるとすれば、治療終了から12週待たないと正しい結果はわからないことになりそうですが、早い段階でより正確な予測をする方法はないものでしょうか。治療終了時にRNAが見つかった6人に何が起こっていたのかが気になるところです。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Utility of hepatitis C viral load monitoring on direct-acting antiviral therapy.

Clin Infect Dis. 2015 Jun 15

[PMID: 25733369]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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