2015.06.06 | ニュース

善玉コレステロールは糖尿病を阻止しないのか?

デンマークにおける2型糖尿病発症率の調査から
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高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールは、いわゆる善玉コレステロールで、一般的にはHDLコレステロールが多いほうが動脈硬化が阻止されると言われています。また、HDLコレステロールが少ないと2型糖尿病になりやすいとも言われています。しかしながら、今回著者らのグループの調査では、HDLコレステロール低下に関わる遺伝子変異が、必ずしも2型糖尿病の発症に繋がらない結果となりました。

◆デンマークでの大規模研究

著者らは以下の方法で調査しました。

一般人集団(47,627人)の前向き研究において、HDLコレステロール関連遺伝子変異と、HDLコレステロール量低下およびそれに伴う2型糖尿病のリスク上昇の関連を調査した。

つまりHDLコレステロール低下に働く遺伝子変異の状態を約4万7千人に対して確認し、2型糖尿病発症率と相関関係があるか調べています。

 

◆HDLコレステロール低下の遺伝変異は2型糖尿病発症率と関係がない

著者らは、以下の結果を得ました。

この範囲の低下に伴い理論的に予測される2型糖尿病発症率の比は遺伝子スコアの効果に対して1.44(95%信頼区間 1.38から1.52)、対立遺伝子数の効果に対して1.77(95%信頼区間 1.61から1.95)である一方、遺伝的推定では有意差が無い。0.2mMのHDLコレステロール低下による2型糖尿病発症への遺伝要因の効果は、遺伝要因を加味しないHDLコレステロールの観察結果から導かれるハザード比1.37(95%信頼区間 1.32から1.42)に対して、0.2mMのHDLコレステロール低下に対応する遺伝スコアの変化からはリスク比0.91(95%信頼区間 0.75から1.09)、対立遺伝子数の変化からはリスク比0.93(95%信頼区間 0.78から1.11)であった。

HDLコレステロール低下は2型糖尿病の発症率増加と関連していましたが、HDLコレステロールの値に影響する遺伝子変異と2型糖尿病には関連が見られませんでした

結論として、「遺伝子変異によるHDLコレステロール低下は2型糖尿病発症率増加と相関関係がなく、対応して観察される関連は別因子および/または逆因果関係によるものである」と述べています。

 

この研究では、「メンデルランダム化」という考え方が使われています。

HDLコレステロールと2型糖尿病に関連があることは必ずしもHDLコレステロールの低下が2型糖尿病の原因であることを意味しません。2型糖尿病の結果としてHDLコレステロールが変化する可能性や、未知の原因がHDLコレステロールと2型糖尿病の両方に影響している可能性が考えられます。

しかし特定の遺伝子変異がHDLコレステロールに影響し、その結果2型糖尿病にも影響するという仮説に対しては、遺伝子変異の原因になりうる要因が限られているため、HDLコレステロール、2型糖尿病は遺伝子変異の結果であるという因果関係が比較的確かと考えられます。またこの研究で観察した遺伝子変異は、HDLコレステロール以外の変化を介して2型糖尿病に影響するとは考えにくいものです。

したがって、遺伝子変異によってHDLコレステロール低下があったにもかかわらず2型糖尿病の発症率には変化がなかったという結果から、HDLコレステロール低下が2型糖尿病の発症率増加の原因ではないことが推論されます

 

善玉と思われていたHDLコレステロールですが、2型糖尿病を予防する効果は意外となかったのかもしれません。動脈硬化が関係するほかの病気については別の研究が待たれます。やはり一筋縄ではいかないものです。

執筆者

高田

参考文献

High-density lipoprotein cholesterol and risk of type 2 diabetes: a Mendelian randomization study.

Diabetes. 2015 May 13.

[PMID: 25972569] http://diabetes.diabetesjournals.org/content/early/2015/05/06/db14-1603.abstract

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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