2015.06.05 | ニュース

脊髄損傷の手術を遅らせたほうが死亡率が低かった?

外傷性脊髄中心症候群の患者1060人の手術結果から

from Spine

脊髄損傷の手術を遅らせたほうが死亡率が低かった?の写真

交通事故などのけがで、脊髄(背骨の中を通っている神経)が傷付くことがあります。傷ついた場所によってさまざまな症状が起こり、外傷性脊髄中心症候群はそのひとつです。普通、脊髄損傷は早く手術するのが良いと考えられていますが、アメリカのイェール大学の研究班が外傷性脊髄中心症候群の手術を受けた人の経過を調べたところ、手術が遅いほうが死亡率が低かったという関連が見つかりました。

◆外傷性脊髄中心症候群とは

外傷によって、細長い脊髄の芯に当たる中心灰白質などがダメージを受けることにより、手足が動かなくなったり、感覚がなくなったりすることを言います。脊髄の中心部に、脊髄を取り巻いている脳脊髄液の溜まりができる、脊髄空洞症と呼ばれる状態にともなって起こることがあり、治療として手術で溜まった脳脊髄液を逃がすことがあります。慣習として、手術を遅らせて全身状態をよくする治療が行われることもあります。

 

◆手術結果のデータベースを解析

研究班は、外傷性脊髄中心症候群を含む患者の大規模データベースから、外傷性脊髄中心症候群に対して手術で治療された患者の情報を得ました。その情報を統計解析し、手術までの時間と、その結果に関連があるかどうかを調べました。

 

◆手術が遅いほうが死亡率が低い

解析から次の結果が得られました。

外傷性脊髄中心症候群の患者1,060人が採用基準を満たした。受傷前から存在していた合併症および外傷の重症度を調整して解析した結果、手術が遅いほど入院中の死亡のオッズが低かった(オッズ比0.81、P=0.04)。すなわち手術までの時間が24時間延びるごとに死亡オッズは19%減少した。手術までの時間は比較的軽度の有害事象のオッズ増加と関連していたが(オッズ比1.06、P<0.001)、深刻な有害事象との関連は有意ではなかった(P=0.09)。

手術が遅いほど、入院中に死亡することが少なくなっていました

研究班はこの関連について、「これらの外傷性脊髄中心症候群患者に対して、全身の健康状態を最適化するため、また可能性としては何らかの脊髄の回復を許すため、手術を待つことは利点があるということが示唆されている」と述べています。

 

手術が延びている間に何か結果を改善する要素があったようですが、具体的に何が行われていたのか、詳しく比較して違いが見つかれば、手術前の治療手順を見直す材料になるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Delayed surgery after acute traumatic central cord syndrome is associated with reduced mortality.

Spine (Phila Pa 1976). 2015 Mar 1

[PMID: 25757037]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る