2015.05.25 | ニュース

末期の大腸がんでは手術が少ないほうが生存率が高い?

ステージ4の大腸がん患者を対象とした後向きコホート研究
from JAMA surgery
末期の大腸がんでは手術が少ないほうが生存率が高い?の写真
(C) Monkey Business - Fotolia.com

大腸がんは早期発見が難しく、進行すると、肝臓や肺といった、大腸から離れた部位に転移することがあります。治療として、元の大腸がんを取り除く「原発腫瘍切除手術」がありますが、この手術が適切でない場合もあるのではないかという観点から行われたアメリカの研究で、過去20年余のうちに原発腫瘍切除手術は減ったが生存率は改善していた、というデータが示されました。

◆後向きコホート研究を通じて、ステージ4の大腸がん患者のデータを比較

著者は次の方法で、転移がある「ステージ4」という段階の大腸がん患者のデータの比較検討を行いました。

アメリカ国立がん研究所に登録されてある大腸がん患者の監視、疫学、最終結果データに基づいた後向きコホート研究を実施。ステージ4の結腸がんまたは直腸がんと診断された患者64,157名を対象に、人口統計学的および臨床的要因について比較検討した。

 1988年1月1日から2010年12月31日までに大腸がんと診断され、原発腫瘍切除手術を受けた患者と受けなかった患者約64000名を対象に比較検討しました。

◆原発腫瘍切除手術の実施率が年々減少

原発腫瘍切除手術の年間実施率は以下のとおりです。

1988年から2010年までの間において、原発腫瘍切除手術に対する年間実施率は74.5%から57.4%へと有意に減少した(P<0.001)。なお、1988年から2001年までの期間と、2001年から2010年までの期間とでは、その減少率に差があり、各々-0.41%、-2.39%であった(P<0.001)。

1988年から2010年までの期間において、原発腫瘍切除手術の実施件数は年々減少しており、特に2001年以降でその傾向が強く現れていました。
 
このように、原発腫瘍切除手術の実施率は年々減少傾向にあるのが分かります。

◆5年生存率が改善

ステージ4の大腸がん患者の生存率に関して以下の結果が得られました。

相対生存率の中央値については、1988年と2009年の間に、8.6%から17.8%まで伸びた(P<0.001)。その年次変化は1988年から2001年までで2.18%、1996年から2009年までは5.43%であった(P<0.001)。

生存率については、20年余で上昇しており、1996年以降に変化がより強く現れていました。
 
以上の結果から、原発腫瘍切除手術を受けたステージ4の大腸がん患者は年々減少傾向にあり、その間生存率については上昇傾向にあるのが分かります。
 
「原発腫瘍切除手術は今でも過剰に行われている可能性があり、治療の現状はエビデンスに基づいた治療ガイドラインから遅れている」と筆者は述べています。

しかし、生存率が高かったのは単に原発腫瘍切除手術を省いたからではなく、手術以外のケアが充実していたからではないかと捉えることもできます。末期の大腸がん患者にとって手術を省くことがより良い生存率につながるかどうかを検証するためには、原発腫瘍切除手術を実施するケースと実施しないケースを比較する研究が有益な情報を与えてくれるかもしれません。 


 

執筆者

大澤法子

参考文献

Time trend analysis of primary tumor resection for stage IV colorectal cancer: less surgery, improved survival.

JAMA Surgery. 2015 March

[PMID: 25588105] http://media.jamanetwork.com/news-item/patients-with-advanced-colon-cancer-having-less-surgery-better-survival/

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。