2015.05.20 | ニュース

治療後に6か月も血液サラサラの薬を飲まなくてもよい!?

ステント治療後のクロピドグレルの投与期間(6週間 vs 6か月)で無作為比較試験
from Journal of the American College of Cardiology
治療後に6か月も血液サラサラの薬を飲まなくてもよい!?の写真
(C) psdesign1 - Fotolia.com

心筋梗塞などに対する治療として、薬物溶出性ステントという器具を血管に入れる方法があります。これはステントで狭くなった血管を広げる治療ですが、治療後に血管が再び血栓で狭くなってしまうことがあります。これを予防する為に、2つの抗血小板薬と1つの抗凝固薬、合計3剤の血液を固まりにくくする薬による3剤併用療法がありますが、その期間は6週間でも6か月でも、悪い結果になる率が変わらないという報告が出ました。

 

◆抗凝固薬1剤と抗血小板薬2剤を飲む期間による違いを比較

この研究は、ヨーロッパで行われた研究で、614名のもともと抗凝固薬を1剤飲んでいる患者に対し、ステント治療後の抗血小板薬2剤のうち、クロピドグレルの投与期間で以下のように比較しました。

 

2008年9月から2013年12月において、ヨーロッパの3か所の施設で薬物溶出性ステント治療を受けた患者614人を対象とし、抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレルを6週間続ける群(307例)と抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレルを6か月続ける群(307例)に無作為割り付けし、9か月間での死亡、心筋梗塞、明らかなステント血栓閉塞、脳卒中、TIMI出血基準の大出血の発生頻度を比較解析した。

このように、抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレルの3剤併用療法を6週間続ける場合と、6か月続ける場合で、死亡などの悪い結果が起こる率に違いがあるかどうかを調べました。

一般に、このように血液を固まりにくくする治療を行うと、血管の流れが悪くなること(虚血合併症)は少なくなり、反対に脳や胃腸などで出血すること(出血性合併症)は多くなると予想されます。

この研究では虚血性合併症、出血性合併症、またそれらの合計がどちらの群で多いかを比較しました。

 


◆すべての項目で違いがなかった

結果としては以下のようになりました。

 

9か月間での死亡、心筋梗塞、明らかなステント血栓閉塞、脳卒中、大出血は6週間の群で30例(9.8%)、6か月の群で27例(8.8%)に起こり、ハザード比は1.14(95%信頼区間 [0.68, 1.91] p= 0.63)だった。

 

このように、クロピドグレルを6週間使う群と、6か月使う群で主な結果に違いがありませんでした。また、悪い結果をより細かく、虚血性合併症と出血性合併症に分けて比較しても、2つの群に違いはありませんでした。


抗凝固薬、抗血小板薬については、長年議論が続いており、虚血性合併症と出血性合併症のバランスを取ることが非常に難しいと言われています。今回の研究では、6週間でも6か月でも差がないのであれば、医療費や患者さんの負担を考えれば当然6週間の方が良いと思われるかもしれません。しかし、出血性リスクをより恐れるのか(過去に胃潰瘍脳出血が起こったことがある人など)、虚血性リスクをより恐れるのか(過去に脳梗塞が起こったことがある人、未治療の狭まった血管がある人など)というのは、それぞれの患者さんや主治医の判断によって異なりますので、一概に「6週間でよい」と結論を付けることはできません。また、今回の研究ではワーファリンとアスピリンとクロピドグレルという組み合わせが選択されましたが、現在他にも様々な薬が処方されています。こういった研究がさらに進んで、より安全にバランスよく、心筋梗塞の治療や、抗凝固薬、抗血小板薬の使用ができるようになってほしいものです。

執筆者

石田 渉

参考文献

Duration of Triple Therapy in Patients Requiring Oral Anticoagulation After Drug-Eluting Stent Implantation The ISAR-TRIPLE Trial

J Am Coll Cardiol. 2015 Apr 28

[PMID: 25908066] http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25908066

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。