2015.05.16 | ニュース

インスリンを飲んで糖尿病を治す?

ドイツでの小児患者を対象にした解析
from JAMA
インスリンを飲んで糖尿病を治す?の写真
(C) sergei voropaev - Fotolia.com

1型糖尿病は膵臓のβ細胞が破壊されインスリン分泌が出来なくなる病気です。2型糖尿病と違って生活習慣が原因ではなく、幼少期から症状が現れることもあります。原因は完全には分かっていませんが、遺伝や自己免疫との関連が指摘されています。 著者らは、遺伝的に1型糖尿病のリスクがある小児に高濃度のインスリンを飲ませる事で、1型糖尿病発症の予防に有効である可能性を示しました。

◆遺伝的に糖尿病リスクがある小児にインスリンを経口投与

著者らは、遺伝的に1型糖尿病になりやすいと思われる要因を持っていた2歳から7歳の子ども25人を対象に、以下の試験を行いました。


小児を無作為に経口インスリン投与(15人)と偽薬投与(10人)の2群に分け、1日1回3から18ヶ月間投与を行った。9人の小児については、投与開始6ヶ月後に2.5mg/日から7.5mg/日へインスリン投与量を増加させた群(3人)、2.5mg/日から22.5mg/日に増加させた群(3人)、7.5mg/日から67.5mg/日に増加させた群(3人)に分けた。6人の小児は22.5mg/日のままの群(3人)あるいは67.5mg/日のままの群(3人)にし、投与量を変えなかった。


インスリンの免疫反応として、血中抗インスリンIgGと唾液抗インスリンIgAの量、インスリンに応答するCD4陽性T細胞の増殖応答を測定した。


つまり糖尿病になりやすい家系の子供に量を変えてインスリンを飲ませ、免疫反応を起こさせる効果を調べました。


◆高濃度インスリン経口投与によって、インスリンへの自己免疫が低下するかもしれない


この研究から以下の結果が得られました。

血中抗インスリンIgGの増加、唾液IgAの増加、CD4陽性T細胞増殖応答のうちいずれかが、偽薬投与の小児において10人中2人(20%[95%信頼区間  0.1%-45%])、[...]67.5mg/日投与の小児で6人中5人(83.3% [95% 信頼区間, 53%-99.9%])に見られた(P=0.02)。インスリンに応答するT細胞は制御性T細胞様を示した。

低血糖、IgE応答、抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体または抗Insulinoma- associated antigen-2 (IA-2) 抗体の増加、糖尿病などの症状は見られなかった。有害事象は12人のインスリンを投与した小児(67回)、10人の偽薬を投与した小児(35回)に観察された。

「このパイロット研究で、1型糖尿病のリスクが高い小児には、偽薬と比較して67.5mg/日のインスリンを経口投与する事で低血糖になる事無く免疫応答を引き起こした」、と著者らは言っています。「これらの研究結果からインスリン経口投与がこのような小児に対して膵臓ランゲルハンス島の自己免疫と糖尿病の予防に効果があるか、フェイズ3試験を行う必要が支持される」とも述べています。


少し前でピーナツを幼少期に与えるとピーナツアレルギーの子が減るという内容の医学記事がありましたが、この結果も同じ理屈かもしれません。

http://medley.life/news/item/552df3266ef458564485ce8a

上記の結果で制御性T細胞が増えたとある点が重要で、このT細胞は免疫抑制の役割を果たします。つまり、体内にある抗原(例えばインスリン)を攻撃する免疫細胞が、制御性T細胞によって活動を抑えられているのです。自己免疫によって1型糖尿病が起こるときは、免疫のシステムが自分自身の体を攻撃してしまい、膵臓の細胞が破壊されると考えられますが、制御性T細胞の働きによってそれを予防できるかもしれない、ということが考えられます。


本当に有効であれば新たな治療法にもなり得るので、今後の研究の発展に期待しましょう。

執筆者

高田

参考文献

Effects of high-dose oral insulin on immune responses in children at high risk for type 1 diabetes: the Pre-POINT randomized clinical trial.

JAMA. 2015 Apr 21

[PMID: 25898052] http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2275446

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。