認知機能障害とうつ病、両方ある人のための問題適応療法

認知機能障害とうつ病、また身体能力などの障害は重なって起こることがあります。このような場合の治療の1つに、問題適応療法 (PATH) があります。問題解決療法という治療を応用して、介護者も協力したうえ、環境に適応し、問題を埋め合わせるというものです。アメリカの研究で、問題適応療法の効果が検証され、うつ病と各種の障害を減らす効果があったと報告されました。
◆うつ病と認知機能障害の両方がある人が対象
研究班は、「大うつ病と中等度認知症の水準までの認知機能障害がある中高齢(65歳以上)の患者74人」を対象とし、対象者をランダムに、PATHを受けるグループと、標準的なケアである認知機能障害に対する支持療法 (ST-CI) を受けるグループに振り分けました。
対象者は12週間在宅でどちらかの治療を受け、治療前後で、うつ病の重症度と、身体能力や認知機能の障害の程度を評価されました。
◆PATHのほうが効果大
治療後の結果は次のようなものでした。
12週間の治療期間のうちに、PATHを受けた人ではST-CIを受けた人に比べてうつ病のスコア(Cohenのd = 0.60、95%信頼区間0.13-1.06、治療×時間F(1,179) = 8.03、P = 0.005)と障害のスコア(Cohenのd = 0.67、 95%信頼区間0.20-1.14、治療×時間F(1,169) = 14.86、P = 0.001)の減少幅がより大きかった(プライマリアウトカム)。さらに、PATHを受けた人ではST-CIを受けた人よりもうつ病の寛解率が
有意 に(37.84%対13.51%、χ(2) = 5.74、P = .02、NNT = 4.11)大きかった(セカンダリアウトカム)。
つまり、PATHのほうがST-CIよりも大きくうつ病と各種の障害を改善したという結果でした。この結果から、研究班は「うつ病と認知機能障害があり、治療の選択肢がわずかしかない中高齢の成人の大きな集団に対して、問題適応療法が苦痛を減らせるかもしれない」と述べています。
認知機能障害のケアは複雑な問題で、人によってどんな治療が適しているかはさまざまですが、治療の選択肢が増えれば、よりよい未来につながるかもしれません。
執筆者
Problem adaptation therapy for older adults with major depression and cognitive impairment: a randomized clinical trial.
JAMA Psychiatry. 2015 Jan
[PMID: 25372657]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。