2015.05.15 | ニュース

糖尿病患者1400人を20年間追いかけてみた

1型糖尿病による目の合併症を予防
from The New England journal of medicine
糖尿病患者1400人を20年間追いかけてみたの写真
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1型糖尿病に対して、血糖値を下げるインスリンの注射回数を増やすなどの強化療法が考えられ、1980年代に始まった試験(DCCT研究)で、従来の治療との比較がなされました。その結果、強化療法開始後6.5年で糖尿病性網膜症を改善する効果がすでに確かめられていましたが、研究チームは新たに、強化療法の開始から20年以上経って、糖尿病性網膜症の治療を含む眼科手術を減らす効果が見られたことを報告しました。

◆20年以上追跡された対象者集団

この研究の対象者は、以下のようにDCCT研究で1型糖尿病の強化療法を受けた人と従来の治療を受けた人から成る1,375人でした。

1983年から1989年の間に、DCCT研究では合計1,441人の1型糖尿病患者が、高血糖症状を防ぐ目的で、糖尿病の強化療法を受けるか、従来の治療を受けるかをランダムに割り付けられた。対象者は1993年まで治療を受け、追跡された。続いて、そのうち1,375人がEDIC研究という観察研究の対象として追跡された。

研究チームは、この対象者において、強化療法を受けたかどうかによって眼科手術の数に違いがあるかどうかを統計解析しました。

 

◆23年間の眼科手術が減っていた

解析の結果は以下のとおりでした。

中央値23年のフォロー期間に、強化療法に割り付けられた711人のうち63人(8.9%)が、合計130回の眼科手術を受けた。従来の治療に割り付けられた730人のうち98人(13.4%)が、合計189回の眼科手術を受けた(P<0.001)。

DCCT研究の開始時点の要因を調整したあと、強化療法に関連して、糖尿病関連眼科手術のリスクは全体で48%(95%信頼区間29-63、P<0.001)減少していた。

このように、強化療法を受けたグループのほうが眼科手術が少なかったという結果でした。眼科手術全体の傾向に加えて、白内障による水晶体摘出術を受けた割合、硝子体手術または網膜剥離手術を受けた割合も強化療法を受けたグループで少なくなっていました。

 

強化療法を受けるか受けないかが研究によりコントロールされていたのは1993年までです。そのあとさらに20年以上経ってから、過去の治療によって結果に違いが出たと報告されていることになります。強化療法には低血糖などの副作用もあり、必ずしもすべての1型糖尿病患者に勧められるものではないとされていますが、良い側面の報告がまた1つ加わったことになります。

 

結果が大事なのはもちろんですが、この報告に至るまでに500人以上の研究者が協力し、20年以上脈々と続けられてきた地道な情報収集にも頭が下がります。継続は力ですね。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Intensive diabetes therapy and ocular surgery in type 1 diabetes.

N Engl J Med. 2015 Apr 30

[PMID: 25923552]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。