持続的な不眠症と死亡の関係
不眠症(睡眠障害の一種)になると、寝つきが悪い、眠りが浅い、早く起きてしまうなどの症状が起こり、結果的に日中活動時の倦怠感や眠気、体調不良を引き起こします。不眠症は死亡リスクと関係する、と言われてきましたが、長期に渡る不眠症と断続的な不眠とでの違いなど、まだまだ不明点が多くありました。今回の研究では、20年間に渡り不眠症者の死亡率を検証し、不眠症が死亡リスクの向上と関連するという結果が報告されました。
◆不眠症者を追跡調査
今回の研究では、アメリカの研究チームが20年間の研究期間で、1,409名の成人を対象に以下の方法で検証しました。
6年を超えて続くかどうかによって不眠症を「持続的」または「断続的」と定義し、そのどちらかが20年間のフォロー期間内の死亡と関連するかどうかを確かめるために、ある地域住民全体の追跡データを使った。
不眠症者を追跡調査し、その後20年間の血清C反応性タンパク質(
CRP :炎症 反応の指標)の変化が持続的不眠症のグループ、断続的不眠症のグループ、不眠症に一度もならなかったグループで違っているかどうかを検証した。
このように、不眠症者とそうではない人で、また不眠症の程度によって、死亡率やCRP(身体のどこかに炎症があると上がる血液中のタンパク質)の変化に差が認められるかを検証しました。
◆不眠症者と死亡率、CRPの変化に関連性あり
調査の結果、まず不眠症患者の数、全体の死亡数は以下の通りでした。
持続的な不眠症者は、1,409名の成人参加者中で128名(9%)、断続的な不眠症者は249名(18%)であった。
20年間の研究期間内における参加者の死亡数は318名であった(118名は心肺疾患による死亡)。
さらに、持続的な不眠症者と不眠症がない人を比較したところ、以下のような結果となりました。
持続的な不眠症者は、不眠症を患っていない人と比べて、死亡リスクが高かった(調整ハザード比1.58、95%信頼区間1.02-2.45)。
また、血清CRPは持続的な不眠症者でより高い水準にあり、かつ断続的な不眠症者よりも(P=0.04)、不眠症を患っていない人よりも(P=0.004)速く上昇した。
持続的な不眠症を患っている人では、死亡リスク、CRPともに高くなる結果でした。
筆者らは、CRPと死亡率の関連性、CRPの影響を除いた持続的な不眠症と死亡率の関連性も検証し、以下のように報告しています。
CRPの水準はそれ自体が死亡率の上昇と関連(調整ハザード比1.36、95%信頼区間1.01-1.82、P=0.04)していたが、CRPの水準を調整したとしても、持続的な不眠症と死亡率の関連に大きな変化は現れなかった。
以上の結果から、筆者らは、「不眠症が、心臓や肺の病気だけでなく全ての原因による死亡率の上昇や、炎症反応のより速い増強と関連していた」と述べています。
不眠症で悩んでいる日本人は、5人に1人の割合とも言われています。もちろん、どの程度の不眠なのかによって大きく状況は異なりますが、日々の生活において不眠で苦しんでいる方は、きちんと医療機関に受診するのがよいのかもしれません。
執筆者
Persistent insomnia is associated with mortality risk.
Am J Med. 2015 Mar
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。