2015.05.05 | ニュース

ガイドライン推奨外でも、ガイドラインの治療法に負けない?

市中肺炎に対して3つの治療方法の効果を比較
from The New England journal of medicine
ガイドライン推奨外でも、ガイドラインの治療法に負けない?の写真
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市中肺炎は日常の社会生活で発症する肺炎のことです。市中肺炎に対して世界中で治療のガイドラインが定められているますが、必ずしも論文による根拠が十分でない場合もあります。今回の研究では、オランダの研究チームが市中肺炎を発症した患者を対象に、海外のガイドラインで推奨されている2つの治療方法と、推奨外の経験的治療との効果を比較し報告しました。

◆市中肺炎に対する3つの治療方法を比較

今回の研究では、オランダの研究チームが、市中肺炎発症し集中治療室(ICU)以外の病棟に入院した患者を対象に、90日総死亡率を指標にして、治療方法を比較しました。

比較された治療方法は以下の3つでした。

  • βラクタム系抗菌薬の単独治療
  • βラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用治療
  • フルオロキノロン系抗菌薬の単独治療​

これら3つの治療方法はいずれも臨床現場では効果があるとして行われている治療法(経験的治療)です。ただし、海外のガイドラインにおいて、これら3つの治療法のうち、βラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用治療とフルオロキノロン系抗菌薬の単独治療​の2つがガイドラインで推奨されています。しかしながら、マクロライド系抗菌薬とフルオロキノロン系抗菌薬の使用が増え、耐性菌の増加が懸念されています。

今回、研究チームは、これら3つの治療方法の効果について報告しました。

 

◆βラクタム系抗菌薬の単独治療は他の2つに対して非劣性

それぞれの治療方法による死亡率は、βラクタム系抗菌薬の単独、βラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用、フルオロキノロン系抗菌薬の単独の順に、9.0%、11.1%、8.8%でした。

筆者らは、「βラクタム系抗菌薬の単独治療は、他の2つ治療方法と比べても、非劣性である(劣らない)ことが示された」と報告しました。

 

診療ガイドラインで推奨される手段は、質の高い多くの研究を元にその有効性が検証され、さらにはコストやその副作用などを総合的に検討され作成されています。ただし、ガイドラインは完全でなく、定期的に最新の研究を考慮し改訂されていきます。

今回の研究によって、ガイドライン推奨外の経験的治療の効果が、ガイドラインで推奨されている他の2種類の治療方法に対して非劣性であると報告されました。また、βラクタム系抗菌薬の単独治療が非劣性を示したことから、治療にかかるコストや耐性菌の発生の抑制に、何かしらの貢献があるかもしれません。今後の追加の研究やガイドラインの変遷を、注意深く見て行きたいですね。

 

[訂正(2015年5月9日)]

以下の点を踏まえ、内容を一部加筆、修正致しました。

  • 「empirical treatment」という言葉を「医師の経験に基づいた治療」と紹介致しましたが、一般的に用いられている「経験的治療」という言葉に変更致しました。
  • 「noninferiority」という言葉を「ほぼ同等の効果をもつ」と紹介致しましたが、医学的に正確な「非劣性」という言葉に変更致しました。

執筆者

MT

参考文献

Antibiotic treatment strategies for community-acquired pneumonia in adults. 

N Engl J Med. 2015 Apr 2

[PMID: 25830421]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。