2015.04.22 | ニュース

ウイルス感染による糖尿病発症の原因遺伝子を特定

Tyk2遺伝子が鍵、マウスの実験で判明
from Nature communications
ウイルス感染による糖尿病発症の原因遺伝子を特定の写真
(C) Tatiana Shepeleva - Fotolia.com

糖尿病のうち、すい臓の細胞が壊れてインスリン(血糖値を下げるホルモン)が作られなくなる1型糖尿病は、ウイルス感染が原因で起こることがあります。そのしくみの一部を、九州大学ほかの研究班が解明しました。

◆特定のマウスにだけ糖尿病を起こすウイルス

実験用のマウスのうち、あるタイプのものだけが脳心筋炎ウイルスに感染したときに糖尿病になることがわかっていましたが、発症に関わる遺伝子は特定できていませんでした。

研究班はそのタイプのマウスの遺伝子を詳しく調べました。

 

◆Tyk2に異常を発見

その結果、脳心筋炎ウイルスの感染から糖尿病を起こすマウスでは、ウイルスに対する免疫反応に関わる、「Tyk2」という遺伝子が突然変異のため機能しなくなっているのを発見しました。

膵臓のホルモンを作る細胞は、Tyk2遺伝子に突然変異があると、免疫を促すインターフェロンを大量に与えられてもウイルスに抵抗できず、感染に弱いことがわかりました。

 

研究班は、ホルモンを作る細胞にだけTyk2遺伝子を導入すれば、感染によって糖尿病が起こるのを防げるのではないかとしています。この研究がウイルス感染の治療の未来を変えるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Reduced Tyk2 gene expression in β-cells due to natural mutation determines susceptibility to virus-induced diabetes.,

Nat Commun., 2015 Apr 7

[PMID: 25849081]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。