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イムシスト膀注用81mg
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効果・効能

表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌。

(効能又は効果に関連する使用上の注意)

  1. 本剤は癌の予防薬ではない。

  2. 本剤は結核予防ワクチンとしての効能はない。

  3. 浸潤性膀胱癌(組織学的深達度T2以上)は本剤の適応外であるので、投与前に浸潤性でないことを確認してから使用する。

  4. 本剤の用法用量における治療投与によって治癒した者に対する維持療法についての有効性・安全性は確立していない。

用法・用量

本品1バイアル(81mg)に添付溶解液3mLを加えて均一な懸濁液とし、これを日局生理食塩液40mLで更に希釈し、均一なBCG希釈液を調製する。

  1. 表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌:尿道カテーテルを膀胱に無菌条件下に挿入し、残尿を排出後にBCG希釈液を緩徐に注入し、可能な限り2時間膀胱内に保持するよう努める。

    これを週1回8週間繰り返す。

  2. 表在性膀胱癌:尿道カテーテルを膀胱に無菌条件下に挿入し、残尿を排出後にBCG希釈液を緩徐に注入し、可能な限り2時間膀胱内に保持するよう努める。これを経尿道的膀胱腫瘍切除術後、少なくとも14日間の間隔をあけて、週1回6週間繰り返し、更に本剤投与開始日から3、6、12、18カ月後にそれぞれ週1回3週間繰り返す。なお、患者の状態に応じて適宜休薬する。

(用法及び用量に関連する使用上の注意)

  1. 本剤を3mLの添付溶解液で懸濁し、細かく均一な懸濁液になるまで、バイアルを静かに10~20回振盪し、泡立っていると正確な用量の吸引ができなくなるため、泡立ちは避ける。菌が均一に分散するよう、本剤の懸濁は必ず添付溶解液で行う。バイアルから懸濁液の全量を注射筒に吸引し、日局生理食塩液40mLで更に希釈し、再度静かに振り混ぜ均一なBCG希釈液を調製する。これを1回投与量とする。

  2. 本剤は膀胱内注入にのみ使用し、経皮接種又はいかなる経路(皮内・皮下・筋肉内・静脈内等)にも投与しない。

  3. 他の疾患のため抗菌剤療法を行っている患者は、その療法が終わるまで本剤の投与を延期する。

  4. 投与時:本剤の投与に際しては、尿路粘膜を損傷しないように、また、尿路感染に十分注意する。

  5. 投与速度:本剤の注入は急速には行わず、ゆっくりと行う。

  6. 投与直後:薬剤を膀胱全体に接触させるため、最初の15分間は患者に伏臥させ、その後は起き上がってもよい。

  7. 排尿時:生菌製剤であり、尿の飛散を防ぐため、座位で行うことが望ましい。

  8. 排尿処理:本剤注入後の最初の排尿は、適当な容器(蓄尿容器等)に採り、BCG感染の恐れがないよう消毒した後、廃棄する。本剤注入後の最初の排尿の消毒の方法としては、排尿に半量の10%次亜塩素酸ナトリウム液(ハイポライト等)を加えて15分間置いておく方法などがある。

  9. BCGの排出を促進するため、投与後は適当な飲水等を指導することが望ましい。

副作用

総投与症例177例中175例(98.9%)に副作用又は臨床検査値異常が認められ、主なものは頻尿81.4%、排尿痛79.7%、血尿72.3%、発熱(≧37℃)59.3%、倦怠感39.5%、排尿困難33.3%、尿中白血球増加81.9%、尿中赤血球増加61.6%、潜血反応陽性62.7%、尿蛋白陽性38.4%であった(用法・用量追加承認時)。

  1. 重大な副作用

    1. BCG感染(頻度不明):播種性BCG感染、局所性BCG感染及び異所性BCG感染が報告されている(BCG感染が疑われる場合は、本剤の投与を中止し、感染症の診断を行うとともに、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール等の抗結核剤療法を行い、また、必要に応じてステロイド剤を併用する)、なお、本剤はほとんどの抗結核剤に対して感受性を有しているが、ピラジナミドには感受性がない。
      1. 播種性BCG感染(頻度不明):カテーテル挿入等により外傷を生じた後のBCG投与により、播種性BCG感染に起因したと考えられる敗血症(低血圧、播種性血管内凝固、呼吸不全による敗血症ショック)での死亡例、肺炎、肝炎が報告されている(インフルエンザ様症状を伴い48時間以上持続する発熱、39℃以上の高熱、反復投与により悪化する全身症状又は持続的な肝機能検査値異常は播種性BCG感染を示唆するものである)。
      2. 局所性BCG感染(頻度不明):局所症状として2~3日以上持続する精巣上体炎、精巣炎、前立腺炎は局所性BCG感染による可能性がある。
      3. 異所性BCG感染(頻度不明):動脈瘤での異所性BCG感染又は動脈移植片での異所性BCG感染等の異所性BCG感染が報告されている。
    2. 間質性肺炎(1%):発熱、胸部X線異常、低酸素血症及び肝機能検査異常を伴う間質性肺炎が認められているので、このような症状が現れた場合には、本剤の投与を直ちに中止し、播種性BCG感染の診断を行い、速やかにステロイド剤の投与等、適切な処置を行うとともに抗結核剤療法を行う。
    3. 全身性過敏症反応(頻度不明):呼吸困難、チアノーゼ、低血圧を伴うアナフィラキシーショック又は咳嗽及び皮疹を伴ったアナフィラキシー様症状が報告されているので、このような症状が現れた場合は、本剤の投与を中止し、播種性BCG感染の診断を行うとともに、直ちに抗ヒスタミン剤又はステロイド剤の投与と抗結核剤療法を行う。
    4. 萎縮膀胱(頻度不明):萎縮膀胱が現れることがあるので、頻尿や膀胱刺激症状、膀胱容量等の観察を十分に行い、萎縮膀胱が疑われる場合には本剤の投与を中止し、抗菌性抗生物質の投与と抗結核剤療法を行い、また、必要に応じてステロイド剤の投与を行う。
    5. ライター症候群(頻度不明):関節炎、眼症状(結膜炎、虹彩炎、角膜炎、ぶどう膜炎、網膜炎等)、尿道炎を伴ったライター症候群が認められているので、このような症状が現れた場合には、本剤の投与を中止し、抗ヒスタミン剤又は非ステロイド性消炎鎮痛剤を投与し、また、必要に応じてステロイド剤の投与、抗結核剤療法を行う。
    6. 腎不全(頻度不明):腎不全が現れることがあるので、定期的に腎機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には本剤の投与を中止し、播種性BCG感染の診断を行い、速やかに適切な処置を行うとともに、抗結核剤療法を行う。
  2. その他の副作用

    1. 泌尿器:(10%以上)頻尿、排尿痛、血尿、排尿困難、尿中白血球増加、尿中赤血球増加、潜血反応陽性、尿蛋白陽性、(10%未満)残尿感、排尿不快感、尿道痛、混濁尿、切迫尿失禁、尿糖陽性、(頻度不明)膀胱炎、膀胱タンポナーデ、尿閉[排尿痛等膀胱刺激症状に対しては、ジクロフェナクナトリウム、アセトアミノフェン、インドメタシン等の消炎鎮痛剤により対症的に処置を行う]。
    2. 消化器:(10%以上)食欲不振、(10%未満)下腹部痛、下痢、下腹部圧迫感。
    3. 筋・骨格系:(10%未満)関節痛、筋肉痛、下肢浮腫、(頻度不明)関節炎[関節痛等については、抗ヒスタミン剤や消炎鎮痛剤で対処できる場合もあるが、播種性BCG感染を示すことも考えられ、症状の改善が見られない場合は本剤の投与を速やかに中止し、抗結核剤療法及びその他適切な処置を行う]。
    4. 呼吸器:(10%未満)低酸素血症。
    5. 皮膚・付属器:(10%未満)皮膚そう痒感、(頻度不明)発疹、蕁麻疹。
    6. 血液:(10%以上)白血球増多、(10%未満)好酸球増多、単球増多、好中球減少又は好中球増多、リンパ球増多又はリンパ球減少、白血球減少、ヘモグロビン減少、ヘマトクリット値減少、赤血球減少。
    7. 肝臓:(10%以上)ALT上昇(GPT上昇)、(10%未満)γ-GTP上昇、AST上昇(GOT上昇)、Al-P上昇、LDH上昇[肝機能異常に対しては、定期的に検査を行い、播種性BCG感染あるいはアレルギー性肝炎が疑われる場合は本剤の投与を中止し、抗結核剤療法を行うなど適切な処置を行う]。
    8. 腎臓:(10%未満)BUN上昇、血中クレアチニン上昇[腎機能異常に対しては、定期的に検査を行い、播種性BCG感染あるいは腎膿瘍が疑われる場合は本剤の投与を中止し、抗結核剤療法を行うなど適切な処置を行う]。
    9. その他:(10%以上)発熱、倦怠感、(10%未満)頭痛、悪寒、血清蛋白低下、熱感、発汗、(頻度不明)精巣上体炎、前立腺炎。

使用上の注意

(警告)

  1. 本剤は弱毒化した牛型結核菌生菌であり、感染の可能性がある。米国で実施された本剤の膀胱内投与による臨床試験で、播種性BCG感染による死亡例が報告されており、したがって、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、生検、又はカテーテル挿入により外傷を生じた場合は回復状況を観察し、少なくとも14日間の間隔をあけて投与する。また、本剤の投与は緊急時に十分措置できる医療施設及び膀胱癌の治療に十分な経験を持つ医師のもと、本剤の投与が適切と判断される患者にのみ使用する。

  2. 海外市販後報告及び類薬でアナフィラキシーショック又はアナフィラキシー様症状に起因したと考えられる死亡例が報告されているので、このような症状が現れた場合は本剤の投与を中止し、直ちに抗ヒスタミン剤又はステロイド剤の投与とともに抗結核剤による治療を行う。

  3. 本剤は生菌製剤であり、海外において、院内感染が報告されているため、十分注意し適切に取扱う。

(禁忌)

  1. AIDS、白血病、悪性リンパ腫等併発疾患又は抗癌療法(例えば細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤、放射線療法)により、免疫抑制状態にある患者、先天性免疫不全又は後天性免疫不全の患者[免疫応答の低下により本剤の効果を減弱させる可能性があり、更に播種性BCG感染を招く恐れがある]。

  2. HIVキャリア及び免疫抑制量のステロイド剤投与中又は他の免疫抑制剤投与中の患者[免疫応答の低下により本剤の効果を減弱させる可能性があり、更に播種性BCG感染を招く恐れがある]。

  3. 活動性の結核症が明らかな患者[重篤な副作用又は病状の悪化を招く恐れがある]。

  4. 原因が特定されていない熱性疾患、細菌性尿路感染症、肉眼的血尿のある患者[重篤な副作用又は前記症状の悪化を招く恐れがある]。

  5. BCG全身性過敏症反応の既往がある患者[重篤な副作用を招く恐れがある]。

  6. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人。

(慎重投与)

  1. 結核既往歴のある患者又はツベルクリン反応強陽性の患者[本剤に対する応答が激しく現れる恐れがある]。

  2. 薬剤アレルギーを起こしたことのある患者。

  3. 膀胱容量の少ない患者[強度膀胱炎症状、萎縮膀胱が現れる恐れがある]。

  4. 動脈瘤等の血管手術既往歴のある患者[海外においてBCG注入後に動脈瘤や手術既往部位、人工器官(動脈移植片、心臓装置、人工関節等)での異所性BCG感染が報告されている]。

  5. 膀胱尿管逆流現象(VUR)を有する患者[全身性副作用や上行性の播種性感染のリスクが高まる恐れがある]。

(重要な基本的注意)

  1. 本剤の使用に際しては、患者又はそれに代わる適切な者に、症状、使用方法及び投与期間、予想される副作用の内容並びに問題のある副作用発生時の担当医師への報告の必要性等についてよく説明し、理解を得た後に使用する。

  2. 本剤の投与に先立つ尿道カテーテルの挿入は尿路系に損傷を与えないよう、十分に注意して行う。もし、誤って損傷が生じた場合、本剤の注入は、少なくとも14日間の間隔をあけて行う。肉眼的血尿が認められる場合も投与を延期し、回復を確認してから投与する。また、尿路感染に十分注意する。

  3. 本剤の使用によりツベルクリン反応陽転又はツベルクリン反応増強されることがある。ツベルクリン反応は結核症の診断補助となるため、本剤の使用開始に先立ちツベルクリン反応試験を実施しておくことが望ましい。

  4. 毎回の注入前後に副作用症状の有無と程度を確認する。

  5. 患者に対して、発熱(体温とその持続時間)、悪寒、倦怠感、インフルエンザ様症状や関節痛、咳嗽、皮疹などに注意し、もしこれらの症状及び重篤な泌尿器の副作用(強度の排尿痛、頻尿、排尿困難)が現れた場合には直ちに医師に報告するよう指導する。

  6. 本剤の繰り返し投与により、頻尿増強、排尿痛増強などの膀胱刺激症状増強や発熱増強などの全身症状が増強することがあるので、特にTURBT後の補助療法において本剤を長期間投与する際は十分注意し、また、これらの症状が認められた場合は必要に応じて休薬するなど適切な処置を行う。

(相互作用)

  1. 併用禁忌:免疫抑制剤、免疫抑制量のステロイド剤、抗癌療法(細胞傷害性の抗悪性腫瘍剤、放射線照射等)[播種性BCG感染を招く恐れがあり、また、本剤の効果が減弱することがある(免疫抑制的治療によりBCG生菌に対する患者の免疫機能が低下し、播種性BCG感染の危険性が高まる恐れがあり、また、免疫応答の低下により効果を減弱させる可能性がある)]。

  2. 併用注意:抗菌性抗生物質製剤[本剤の効果が減弱する恐れがある(BCG菌に対し抗菌作用を示す薬剤の併用は、BCGによる免疫作用が発現する以前にBCG菌が排除される可能性がある)]。

(高齢者への投与)

高齢者での副作用については、特に高率に発現する傾向はみられていない。

(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)

  1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しない。また、妊娠する可能性のある女性には本剤による治療中は避妊させる[本剤の動物における生殖試験は実施されておらず、妊娠の継続にも問題があり、胎児への影響も不明である]。

  2. 授乳中の婦人には投与することは避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させる[本剤が乳汁中に排泄されるかは不明であるが、多くの薬剤がヒトの乳汁中に排泄され、また本剤は乳児に重大な有害反応を起こす可能性がある]。

(小児等への投与)

小児等に対する安全性は確立していない[使用経験がない]。

(適用上の注意)

  1. 海外において医療従事者の針刺し事故等によるBCG感染が報告されている。また、BCGと同じ安全キャビネット内で調製された抗悪性腫瘍注射剤の全身化学療法を受けた免疫抑制状態の患者に対し、院内感染が起こった事例が報告されている。

  2. 本剤は生菌製剤であるので無菌的技法で使用すべきであり、本剤の取扱い時にはゴム手袋及びマスクをつける。

  3. 調製時に誤って手指等の外傷に本剤が接触したときは、受傷後直ちに血液を押し出し、大量の水で洗浄し、接触部を直ちにアルコール又は0.2~1%次亜塩素酸ナトリウム液等で消毒する。万一、BCG感染を示すような所見が認められた場合は、抗結核剤療法を行うなど適切な処置を行う。

  4. 本剤と接触したすべての容器、器具等は高圧蒸気滅菌又は、煮沸消毒か適切な消毒液等に浸し、消毒した後廃棄する。

  5. バイアルからゴム栓を外さない。

  6. 希釈した溶液は速やかに使用する(なお、調製後保存する必要がある場合は、冷暗所(2~8℃)に遮光保存し、懸濁から2時間以内に投与する)。

(保管上の注意)

2~8℃に遮光して保存。