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治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」ソバ粉1:10
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治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」ソバ粉1:10の添付文書

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効果・効能

気管支喘息(減感作療法)。

(効能又は効果に関連する使用上の注意)

本剤の投与開始に際し、皮膚反応テスト[スクラッチテスト(プリックテスト)、皮内テスト]又は特異的IgE抗体検査を行い、原因アレルゲンによるアレルギー性気管支喘息の確定診断を行う。

用法・用量

皮膚反応で陽性の場合、1:10000液0.02mLを初回量として皮下に注射し、1週2回約50%ずつ増量し、0.5mLに至れば1:1000液0.05mLにかえ、同様に増量しながら注射を続け、次第に高濃度の液とし、1:10液0.5mLの維持量までに至らしめる。

但し、皮膚反応に応じ、初回の液の濃度及び量又は増量、投与間隔並びに維持量は適宜に定めうる。

(用法及び用量に関連する使用上の注意)

  1. 患者の状態によってアレルゲンに対する反応が変動することがあるので、投与量、濃度、増量、維持量等は個々の患者の症状を考慮して決定する。

  2. 増量を急速に行う場合は、患者の状態を勘案し入院又はそれに準じた管理下での投与を考慮する。

  3. 予期しない強い反応が起こる恐れがあるので、使用するエキスのロットが変わるときには前回投与量の25~50%を減ずることが推奨される。また、高濃度のアレルゲンエキスでは、同一ロットでもショック等の強い反応を誘発する恐れがあるので、患者の状態を十分に観察しながら濃度を上げる。

  4. 減感作療法の実施に際し、原因アレルゲンに陽性の患者に皮内反応テストを行い、皮内反応閾値を求める(その閾値及びその時々の患者の症状に応じ、初回投与濃度及び量、初回後の投与濃度又は量、投与回数、投与間隔並びに維持量は適宜定める)。

  5. 閾値の求め方:診断用アレルゲン皮内エキスに皮内反応用対照液(診断用アレルゲン皮内エキス対照液「トリイ」:0.5%フェノール含有生理食塩溶液)を加えて10倍ずつ希釈し、1:1万、1:10万、1:100万、要すれば更に1:1000万倍液を調製し、最も希釈された液から、0.02mLずつ皮内注射し、皮内反応判定基準にしたがい、反応を判定する。陽性反応を呈した最低濃度(最大希釈度)をもって、その患者のアレルゲンに対する過敏度(閾値)とする。

  6. 初回投与濃度:通常、1:10000液を初回に使用するが、患者の症状に応じ、又は特に過敏症の患者に対しては患者のアレルゲンに対する過敏度(閾値)を求め、初回投与濃度を決定することも必要である(治療エキスの初回投与濃度は、この閾値を更に10倍希釈した液を用いる)。この場合、治療エキスは治療用希釈液(治療用アレルゲンエキス希釈液「トリイ」)を用いて所定の濃度まで希釈する。

  7. 増量及び投与回数:各回の投与後の患者の状態について問診し、その結果に応じ次回投与量を増減する(例えば前回の注射により発作を起こし、又は過大な局所反応を生じた時は増量を見合わせる)。また増量期間中の投与間隔は通常1週2回であるが、間隔が長引いた場合には増量せずに減量した方がよい(減感作療法は過量投与よりも過少投与の方が失敗例が少ない)。

  8. 維持量:患者の臨床症状が著明に改善されたら、その濃度をもって維持量とし、投与を継続する。本剤の維持療法には1:100液又はそれ以上に希釈した液が広く使用されている。高濃度の液を使用する場合は反応が強く現れることがあるので、特に小児及び高齢者に対しては注意して投与する必要がある。特にソバ粉エキスについては、この点が認められる。症状の改善を認めて直ちに本剤による治療を中止すると再発することもあるので、療法の持続は是非行うべきである。なお、維持量に達した場合でも患者の要因によって発作を誘発することがあるので、患者の容態を十分に観察しながら投与する。

副作用

  1. 重大な副作用

    ショック、アナフィラキシー(頻度不明):ショック、アナフィラキシーが起こることがあるので、観察を十分に行い、血圧低下、呼吸困難、全身潮紅、顔面浮腫・咽頭浮腫等の血管浮腫、蕁麻疹、喘息等の異常が認められたときには、投与を中止し、直ちに適切な処置を行う(また、ショック、アナフィラキシーを早期に認識しうる症状として次のようなものがある;口腔内異常感、皮膚そう痒感、蕁麻疹、紅斑・皮膚発赤、胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、視覚異常、視野狭窄、鼻閉塞感、くしゃみ、嗄声、咽喉頭そう痒感・咽喉頭異常感、胸部絞扼感、息苦しさ、呼吸困難、咳嗽、喘鳴、チアノーゼ、頭痛、耳鳴、不快感、悪寒、四肢のしびれや顔のしびれ、顔面潮紅、発汗、眩暈感、振戦、蒼白、動悸、頻脈、不整脈、血圧低下、不安、恐怖感、意識混濁等)。

  2. その他の副作用:次のような症状が現れた場合には、症状に応じて減量又は投与を中止する等、適切な処置を行う。

    1. 過敏症:(頻度不明)喘息発作の誘発、眼瞼浮腫又は口唇浮腫、発疹、そう痒等。
    2. 注射部位:(頻度不明)硬結、疼痛、しびれ、腫脹等。
    3. その他:(頻度不明)色素沈着、頭痛、脱力感、不快感、倦怠感、発熱、リンパ腺腫脹等。

使用上の注意

(警告)

本剤は、緊急時に十分に対応できる医療機関において、減感作療法に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用する。

(禁忌)

重症気管支喘息患者[本剤の投与により喘息発作の誘発、症状の悪化、又は全身性アレルギー反応が起こることがある]。

(慎重投与)

  1. 本剤の投与、又はアレルゲンエキスによる診断・治療によりショック、アナフィラキシー等のアレルギー症状を発現したことのある患者[本剤の投与によりアレルギー反応に基づく副作用を起こす恐れがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、少量から投与を開始する]。

  2. 悪性腫瘍、又は免疫系に影響を及ぼす全身性疾患(例えば自己免疫疾患、免疫複合体疾患、又は免疫不全症等)の患者[本剤投与時の有用性は確立していないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する]。

(重要な基本的注意)

  1. 本剤は患者の原因アレルゲンを含む液であり、その原因アレルゲンを徐々に増量しながら投与していくことにより、投与した原因アレルゲンに対する過敏反応を減弱させる薬剤であるため、本剤の投与により、アレルギー反応に基づく副作用、特にショック、アナフィラキシー、及び喘息増悪等を起こす恐れがあるので、十分に注意する。

  2. 患者の状態によって、ショック、アナフィラキシー等の強い反応を誘発する恐れがあるので、常に、ショック、アナフィラキシーの発現時に救急処置のとれる準備をしておく。

  3. ショック、アナフィラキシー等の発現を予測するため、投与前後に十分な問診を行い、ショック、アナフィラキシーを早期に認識しうる症状の発現に注意し、そのような症状が現れた場合は、患者の状態を十分に観察し、適切な処置を行う。

  4. 投与後少なくとも30分間は患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行う。また、投与後数時間又は1~2日間に強い反応が現れることがあるので、その旨を患者に伝えショック、アナフィラキシーを早期に認識しうる症状が現れた場合には速やかに医師に連絡する等の対応を説明した上、適切な処置がとれる準備をしておく。

  5. 症状の改善を認めても、直ちに本剤による治療を中止すると症状が再発する可能性があるので、本療法の中止にあたっては症状の経過を十分に観察し慎重に行う。

  6. 他の減感作療法薬との併用によりアナフィラキシー等のアレルギー反応を含む副作用の発現が増加する恐れがあることから、併用する場合には十分注意する。

  7. 非選択的β遮断薬服用の患者への注意:本剤が投与されたときに、本剤による反応(アレルギー反応)が強く現れることがある(また、本剤によるアレルギー反応の処置のためにアドレナリンを投与したとき、アドレナリンの効果が通常の用量では十分発現しないことがある)。

  8. 三環系抗うつ薬服用及びモノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)服用の患者への注意:本剤によるアレルギー反応の処置のためにアドレナリンを投与したとき、アドレナリンの効果が増強されることがある。

  9. 全身性ステロイド薬投与の患者への注意:全身性ステロイド薬の投与により、免疫系が抑制され本剤の効果が得られない可能性がある。

  10. 重症心疾患、肺疾患及び高血圧症の患者への注意:本剤によるアレルギー反応の処置のためにアドレナリンを投与したとき、アドレナリンにより症状を悪化させる恐れがある。

(高齢者への投与)

一般に高齢者では免疫機能及び心肺機能等が低下しているため、副作用がより重篤となる恐れがあることから、投与の可否を慎重に判断する。

(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)

  1. 妊娠中の投与に関する安全性は確立していない、なお、アレルギー反応に伴って遊離されるヒスタミンが子宮筋収縮作用を有することが知られているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。また、閾値を求める場合でも、多量のヒスタミン遊離が考えられる広範な皮膚反応テストは避ける。

  2. 授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせる[授乳中の投与に関する安全性は確立していない]。

(過量投与)

  1. 徴候・症状:本剤の過量投与によりショック、アナフィラキシーを起こす恐れがある。

  2. 処置:過量投与時、ショック、アナフィラキシーを早期に認識しうる症状に注意し、適切な処置を行う。

(適用上の注意)

  1. 本剤の希釈

    1. 別途販売の治療用アレルゲンエキス希釈液「トリイ」を使用する。
    2. 希釈した液の安定性:希釈した液の安定性は確認されていないので、用時希釈して使用する。
  2. 閾値検査

    1. 皮内反応判定基準:診断用アレルゲン皮内エキスを診断用アレルゲン皮内エキス対照液「トリイ」にて希釈した液0.02mLを皮内に注射し、15~30分後に発赤径20mm以上又は膨疹径9mm以上を陽性と判定する。
    2. 正確な皮膚反応テストを行うため、皮膚反応テスト検査前日から抗ヒスタミン薬やメディエータ遊離抑制薬等の投与を中止する。また、皮膚反応テストを実施する約1週間前から投与を中止することが望ましい薬剤があるので注意する。
  3. 投与時

    1. 喘息を罹患する患者においては、本剤の投与開始前に喘息症状を評価し、薬物療法にて喘息症状をコントロールし、また、毎回、本剤の投与前に喘息症状の評価を行う。
    2. 喘息発作時、気管支喘息の症状が激しいときやアレルギー症状が激しいとき、急性感染症罹患時、体調が悪いときは投与を避ける。
    3. 投与後少なくとも30分間は患者を安静の状態に保たせ、十分な観察を行う。
    4. 本剤投与前、及び本剤投与後2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴等を避けるよう、また、投与後2時間以降にこれらを行う場合にもアナフィラキシー等の副作用の発現に注意するよう患者等に指導する[循環動態が亢進し、本剤の吸収が促進される等により、アナフィラキシー等の副作用が発現する恐れがある]。
  4. 投与部位

    1. 減感作療法のとき、皮内注射すると非特異的に局所の著しい刺激及び著しい腫脹が現れることがあるので、皮下に浅く注射する。
    2. 静脈内に投与しない(注射針を刺入したとき、内筒を引いて血液が逆流しないことを確かめる)。
    3. 注射部位はもまないで静かにおさえるようにする。

(保管上の注意)

2~8℃保存(凍結不可)。