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フォトフリン静注用75mg
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効果・効能

手術等の他の根治的治療が不可能な場合、あるいは、肺又は子宮頚部の機能温存が必要な患者に他の治療法が使用できない場合で、かつ、内視鏡的に病巣全容が観察でき、レーザー光照射が可能な次記疾患:早期肺癌(病期0期又は病期1期肺癌)、表在型食道癌、表在型早期胃癌、子宮頚部初期癌及び子宮頚部異形成。

用法・用量

ポルフィマーナトリウムとして2mg/kgを1回静脈内注射する。静脈内注射48~72時間後レーザー光を病巣部位に照射する。

(注射液の調製法)

1バイアルあたり日本薬局方5%ブドウ糖注射液30mLを加えて溶解し、ポルフィマーナトリウムとして2.5mg/mLの溶液を調製する。

(レーザー光照射に際しての注意)

レーザー光照射に際しては、エキシマ・ダイ・レーザー(型名PDT EDL-1 浜松ホトニクス社製)の取扱説明書を参照する。通常、適応されるレーザー光照射は次のように行われる。

  1. 早期肺癌(病期0期又は病期1期肺癌):ファイバーの太さ400μm、先端出力2~4mJ/パルス、パルス周波数30~40Hz、照射エネルギー密度100~500J/c㎡。

  2. 表在型食道癌:ファイバーの太さ400μm、先端出力4mJ/パルス、パルス周波数40Hz、照射エネルギー密度60~150J/c㎡。

  3. 表在型早期胃癌:ファイバーの太さ400μm、先端出力4mJ/パルス、パルス周波数30~40Hz、照射エネルギー密度60~200J/c㎡。

  4. 子宮頚部初期癌及び異形成

    1. コルポスコープによる照射:ファイバーの太さ400、800μm、先端出力4~8mJ/パルス、パルス周波数40Hz、照射エネルギー密度100J/c㎡。
    2. 頚管プローブによる照射:ファイバーの太さ400、800μm、先端出力4~8mJ/パルス、パルス周波数40Hz、照射エネルギー密度100J/c㎡。

      照射時間の計算式:照射時間(秒)=[照射エネルギー密度(J/c㎡)×照射面積(c㎡)]÷[先端出力(mJ/パルス)×パルス周波数(Hz)×1/1000]。

(光線力学的治療に際しての留意点)

  1. 全般的留意事項。

    1. 本療法は局所的な治療法であり、レーザー光照射部位以外には効果がない。
    2. レーザー光照射時の留意事項。
      1. 腫瘍の浸潤範囲に留意し、腫瘍周辺部まで十分にレーザー光を照射する。
      2. 諸臓器の呼吸性移動、心拍動、蠕動又は攣縮等により、レーザー光の照射が不十分になることがある。
    3. 本療法施行後は、定期的に内視鏡検査、細胞診、組織診等を行い、病巣の経過を観察する。
  2. 本療法を行うにあたっては、次の点を考慮する。

    1. 早期肺癌(病期0期又は病期1期肺癌):本療法が適応となるのは、長径1cm以下で内視鏡的に末梢辺縁が確認でき、生検標本で浸潤が気管支軟骨層までにとどまる腫瘍である。長径が1cmより大きい腫瘍、内視鏡的に末梢辺縁が確認できない腫瘍で外科的切除など根治的治療が可能な場合はこれらの治療を優先する。
    2. 表在型食道癌
      1. 内視鏡的粘膜切除など根治的治療が可能な患者は、これらの治療法を優先する。
      2. 本療法が適応となるのは、横への広がりが1/3~1/2周程度で2×2cm以内の内視鏡的に一視野でとらえられる範囲内にあり、かつ粘膜切除が不可能な上皮内(ep)から粘膜下層(sm)までの腫瘍で、画像診断上リンパ節転移がないもの。
    3. 表在型早期胃癌
      1. 内視鏡的粘膜切除など根治的治療が可能な患者は、これらの治療法を優先する。
      2. 本療法が適応となるのは次の腫瘍で、画像診断上リンパ節転移がなく、粘膜切除が不可能なものである:潰瘍を伴わない長径1~3cm程度の粘膜下層(sm)までの腫瘍、潰瘍を伴う長径2cm程度以下の粘膜下層(sm)までの腫瘍。
    4. 子宮頚部初期癌及び異形成:妊孕性温存を希望する患者を適応とするが、外科的切除が可能な患者に行う場合には、腫瘍残存・再発の可能性があること(使用経験では再発はない)、光線過敏症を防ぐための注意を説明した上で本療法施行の可否を判断する。

副作用

各調査別の光線力学的治療の随伴症状及び臨床検査値の異常を含む副作用の発現頻度は次記のとおりである。

本剤の副作用集計対象となった165例中、93例(56.4%)に副作用が認められた。その主なものは、光線過敏症(20.6%)、色素沈着(6.1%)、発疹(5.5%)等であった。臨床検査値の変動は163例中、32例(19.6%)に認められた。その主なものはAST(GOT)上昇(9.2%)、ALT(GPT)上昇(10.4%)等であった。また、光線力学的治療の随伴症状として、臨床病期0期肺癌、臨床病期1期肺癌では咳嗽(40.5%)、喀痰(34.2%)、喀血(27.8%)、呼吸困難(8.9%)、咽頭痛(6.3%)等が、表在型食道癌では胸部痛(12.5%)等が、表在型早期胃癌では心窩部痛(21.4%)、悪心・嘔吐(7.1%)等が認められた(承認時の集計)。

本剤の副作用集計対象となった282例中、168例(59.6%)に光線力学的治療の随伴症状及び臨床検査値の変動を含む副作用が認められた。その主なものは、光線過敏症(33.3%)、白血球増多(15.3%)、血清総蛋白減少(9.6%)、発熱(6.4%)、ALT(GPT)上昇(6.0%)、CRP上昇(6.0%)等であった(使用成績調査の集計)。

次のような副作用が現れた場合には、症状に応じて適切な処置を行う。

  1. 皮膚:(5%以上)光線過敏症、皮膚色素沈着。

  2. 過敏症:(5%以上)発疹、(0.1~5%未満)発赤、紅斑、顔面浮腫、顔面潮紅。

  3. 肝臓:(5%以上)AST上昇(GOT上昇)、ALT上昇(GPT上昇)、Al-P上昇等の肝機能検査値異常。

  4. 呼吸器:(5%以上)咳嗽、喀痰、血痰、(0.1~5%未満)呼吸困難、咽頭痛、無気肺。

  5. 消化器:(0.1~5%未満)心窩部痛、食欲不振、悪心、嘔吐。

  6. 血液:(5%以上)白血球増多、貧血。

  7. その他:(5%以上)血清総蛋白低下、発熱、(0.1~5%未満)CRP上昇、潜血反応陽性、胸部痛、(頻度不明)治療部位出血・治療部位疼痛、膣分泌物増加。

使用上の注意

(禁忌)

  1. 本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者。

  2. ポルフィリン症の患者[症状を増悪させる恐れがある]。

  3. 肺癌において腫瘍が気管支軟骨層より外側に浸潤している患者[レーザー光が十分到達しない可能性がある。また、肺癌において腫瘍が気管支壁外に浸潤している患者では気管支穿孔の危険性がある]。

  4. 肺癌において太い気管の広範な病巣又は肺癌において気管狭窄を来している患者[呼吸困難、窒息を起こす危険性がある]。

  5. 食道癌において全周囲性の腫瘍のある患者[食道狭窄を来す危険性がある]。

  6. 次の部位に腫瘍のある患者。

    1. 早期肺癌における亜区域支より末梢側に腫瘍のある患者[一般にレーザー光照射が困難とされている]。
    2. 表在型食道癌における食道入口部に腫瘍、表在型食道癌における食道・胃接合部に腫瘍のある患者[一般にレーザー光照射が困難とされている]。
    3. 表在型早期胃癌における食道・胃接合部に腫瘍、表在型早期胃癌における幽門輪に腫瘍のある患者[一般にレーザー光照射が困難とされている]。
    4. 子宮頚部初期癌で開口摂子を用いても扁平円柱上皮境界の上限を確認できない及び子宮頚部異形成で開口摂子を用いても扁平円柱上皮境界の上限を確認できないもの(扁平円柱上皮境界:2ndS-CJunction)[一般にレーザー光照射が困難とされている]。

(慎重投与)

  1. 光線過敏症を起こすことがある医薬品を併用している患者(患者を薄暗い室内で過ごさせるなど十分な管理を行う)。

  2. 高齢者。

(重要な基本的注意)

  1. 本療法は対象部位にレーザー光を的確に照射する必要があるので、内視鏡技術に熟達した医師が実施する。なお、対象症例は転移がなく、他の治療法よりも光線力学的療法が有用と判断される症例に行う。

  2. 治療にあたっては、リンパ節転移のないことを確認する。リンパ節転移が疑われる場合には、他の療法を併せて行うか、又は他の療法に変更する。

  3. レーザー光照射部位の穿孔を避け、かつ腫瘍浸潤の深さがレーザー光が十分到達する深さであることを確認するため、肺癌では気管支軟骨層までに、食道癌、胃癌では粘膜下層までに腫瘍がとどまっていることをCT、超音波、生検等により確認する。

  4. 食道静脈瘤のある患者に光線力学的治療を施行する場合は、静脈瘤の部位に直接レーザー光を照射しないよう注意する(静脈瘤の部位に照射すると出血を来すことがある)。

  5. 本剤投与後の直射日光及び電気スタンド等の集中光による光線過敏症を防ぐため、本剤投与後少なくとも1カ月間は直射日光及び集中光を避けさせ、薄暗い室内(100~300ルクス)で過ごさせる。なお、100及び300ルクスの明るさの目安は、約10畳程度の暗室で、20ワットの白色蛍光灯1本を照射したとき、光源からの距離が約160及び95cmの明るさがそれぞれ約100及び300ルクスである。

  6. 本剤投与1カ月経過後に指、手掌背部を直射日光で5分間曝露させたとき、紅斑、水疱等の光線過敏反応を示した場合には、更に2週間直射日光及び集中光を避けさせ、異常がみられなくなるまで同様の試験を繰り返す。

  7. 他の腫瘍などの治療のために再度本剤を投与する場合には、休薬期間を十分におき、光線過敏症が起こらないことを確認してから実施する。

  8. レーザー光照射後は発熱、CRP上昇、白血球増多等の炎症所見、治療部位出血・治療部位疼痛、また、疾患により次のような随伴症状が現れることがあるので、このような場合には適切な処置を行う。

    1. 早期肺癌:レーザー光照射後、咳嗽、喀痰、血痰、呼吸困難、無気肺、咽頭痛、悪心、嘔吐、食欲不振等。
    2. 表在型食道癌:レーザー光照射後、貧血、胸部痛等。
    3. 表在型早期胃癌:レーザー光照射後、悪心、嘔吐、食欲不振、心窩部痛、貧血等。
    4. 子宮頚部初期癌及び子宮頚部異形成:レーザー光照射後、膣分泌物増加。

(相互作用)

併用注意:

  1. 光線過敏症を起こすことがある薬剤(テトラサイクリン系薬剤、スルホンアミド系薬剤、フェノチアジン系薬剤、スルホニルウレア系血糖降下剤、チアジド系利尿剤、ニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン、スパルフロキサシン等)、非ステロイド性消炎鎮痛剤(ピロキシカム、ケトプロフェン外用剤等)、フルオロウラシル系抗悪性腫瘍剤、メトトレキサート、グリセオフルビン、メトキサレン、その他の光線過敏症を起こすことがある医薬品)[光線過敏症を起こす恐れがあるので、本剤の投与時及びその前後に併用薬剤を投与する場合には、光線過敏症の発現に特に注意し、直射日光、集中光を避けさせる(本剤は光感受性を高める作用があるので、光線過敏症を起こすことがある薬剤との併用により光感受性が増強される恐れがある)]。

  2. 光線過敏症を起こすことがある食品(クロレラ加工品等)[光線過敏症を起こす恐れがあるので、本剤の投与時及びその前後に併用の食品を摂取する場合には、光線過敏症の発現に特に注意し、直射日光、集中光を避けさせる(本剤は光感受性を高める作用があるので、光線過敏症を起こすことがある食品の摂取により光感受性が増強される恐れがある)]。

(高齢者への投与)

高齢者では肝機能が低下していることが多いので、本剤投与後は定期的に肝機能検査を行い患者の状態に注意する。

(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)

  1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない]。

  2. 授乳中の婦人に投与することを避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止させる[動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されている]。

(小児等への投与)

小児に対する安全性は確立していない(小児に対する使用経験はない)。

(適用上の注意)

  1. 調製方法

    1. 本剤は5%ブドウ糖液に溶解する。
    2. 他剤(5%ブドウ糖注射液を除く)との混注は避ける。
    3. 本剤は防腐剤を含まないので、溶解後は6時間以内に使用する。
  2. 投与経路:本剤は静脈内注射のみに使用する。

(保管上の注意)

冷所。