処方薬
フォリスチム注150

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効果・効能

複数卵胞発育のための調節卵巣刺激。

用法・用量

フォリトロピンベータ(遺伝子組換え)として1日150又は225国際単位を4日間皮下又は筋肉内投与する。その後は卵胞の発育程度を観察しながら用量を調整し(75~375国際単位を6~12日間)、平均径16~20mmの卵胞3個以上を超音波断層法により確認した後、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤により排卵を誘起する。

(用法・用量に関連する使用上の注意)

本剤の使用に際しては十分な経過観察(超音波断層法による卵胞計測、血清エストラジオール検査等)が必要である。卵巣過剰刺激症候群を防止するため前記経過観察に加えて自覚症状や臨床所見についても観察を十分に行い、腹痛、呼吸困難、乏尿などの自覚症状並びにヘマトクリット値上昇、大量腹水、胸水貯留などの臨床所見を認める場合は、速やかに安静及び補液などの適切な処置を行い、必要により入院管理を行う(これまでの治療経験及び患者特性(年齢、多嚢胞性卵巣症候群等)を考慮して、卵巣の反応性が高く卵巣過剰刺激症候群の発現が懸念される場合の初期投与量は低用量とし、卵巣過剰刺激症候群発現の恐れがある場合には、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を中止する)。

副作用

臨床試験

外国臨床試験を含めた承認時までの臨床試験で調査症例1,044例中79例(7.6%)に99件の副作用がみられた。主な副作用は卵巣過剰刺激症候群47例(4.5%)、注射部疼痛8例(0.8%)、腹部膨満7例(0.7%)、腹痛5例(0.5%)等であった。また、国内臨床試験において、調査症例153例中21例(13.7%)に29件の副作用がみられた。主な副作用は卵巣過剰刺激症候群9例(5.9%)、腹部膨満4例(2.6%)、卵巣疾患3例(2.0%)、腹水3例(2.0%)等であった。

製造販売後調査

国内製造販売後調査(複数卵胞発育のための調節卵巣刺激並びに視床下部-下垂体機能障害に伴う無排卵及び希発排卵における排卵誘発の合計)で、本剤が投与された日本人1,993例中232例(11.6%)に252件の副作用がみられた。主な副作用は卵巣過剰刺激症候群178例(8.9%)及び流産32例(1.6%)等であった[再審査終了時]。

  1. 重大な副作用(外国臨床試験の結果を含む)

    1. 卵巣過剰刺激症候群(4.7%):本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、卵巣腫大、卵巣捻転、下腹部痛、下腹部緊迫感、腹水貯留・胸水貯留を伴う卵巣過剰刺激症候群が現れることがある。本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与し、重度卵巣過剰刺激症候群が発生した場合は本剤及びヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を中止し、患者を入院させて、安静にし、水分と電解質の管理を行い、必要に応じ鎮痛薬を投与する。重度卵巣過剰刺激症候群では、腹腔、胸腔、心嚢への体液損失に関連した血液濃縮を引き起こすことがあるので、次の項目を毎日1回以上検査する:(1)毎日1回以上水分の摂取量と排泄量、(2)毎日1回以上体重、(3)毎日1回以上ヘマトクリット値、(4)毎日1回以上血清及び尿中電解質、(5)毎日1回以上尿の比重、(6)毎日1回以上BUNとクレアチニン、(7)毎日1回以上総蛋白量及びアルブミン・グロブリン比、(8)毎日1回以上血液凝固能試験、(9)毎日1回以上心電図による高カリウム血症のモニタリング、(10)毎日1回以上腹囲。

      卵巣過剰刺激症候群は卵巣損傷のリスクを増大させるが、肺窮迫又は心タンポナーデなどの処置を必要としない限り、腹水、胸水及び心膜水を除去しない、骨盤検査は卵巣嚢胞を破裂させ、腹腔内出血に至ることがあるので、避ける(もし出血が発生し外科的処置が必要な場合は出血を管理し、可能な限り多くの卵巣組織を維持する)。排卵後に過度の卵巣腫大が認められた患者では、卵巣嚢胞破裂による腹腔内出血の危険性があるので、性交を禁止するよう指示する。

      卵巣過剰刺激症候群の管理は、急性期、慢性期、回復期に分けられる。

      (卵巣過剰刺激症候群急性期)血管内容積が間質腔へ流出することによって起こる血液濃縮を防ぎ、血栓塞栓障害や腎臓損傷のリスクを最小限に抑え、血管内容積の減少を許容可能な範囲に維持した上で、電解質を正常化させる(欠損した血管内容積を完全に補正することにより、間質腔の体液貯留が許容不可能なまで増加することがある)、一定量の補液、電解質、ヒト血清アルブミンの点滴及び水分の摂取量と排泄量の厳密なモニタリングにより管理し、高カリウム血症に関するモニタリングも行う。

      (卵巣過剰刺激症候群慢性期)急性期の患者を安定化させた後、カリウム、ナトリウム、水分を厳しく制限し、間質腔の過剰な体液の蓄積を抑える。

      (卵巣過剰刺激症候群回復期)間質腔の体液が血管内へ戻ることにより、ヘマトクリット値低下や水分摂取に伴わない尿排泄量増加が観察される。腎臓において間質腔の体液排泄能力が低下すると、末梢浮腫又は肺浮腫が発生することもある(回復期では、肺の浮腫に対処するために必要であれば利尿薬を使用してもよい(なお、利尿薬は血管内容積の減少を促進することがあるので、回復期以外は使用を避ける))。

    2. 血栓塞栓症(頻度不明):血栓塞栓症が起こることがある。

    3. 流産(0.3%)、子宮外妊娠(0.1%)、多胎妊娠(29.0%)。

    4. アレルギー反応(頻度不明)。

  2. その他の副作用(外国臨床試験の結果を含む)

    1. 精神神経系:(0.5~1%未満)頭痛。
    2. 消化管:(頻度不明)腹部不快感、便秘、下痢、(0.5%未満)下腹部痛、嘔気、腹痛。
    3. 女性生殖器:(頻度不明)卵巣嚢胞、骨盤痛、乳房圧痛、乳房痛、子宮肥大、不正子宮出血、膣出血、(0.5~1%未満)腹痛(産婦人科系)、(0.5%未満)卵巣捻転、卵巣腫大。
    4. 投与部位:(頻度不明)挫傷、発赤、腫脹、かゆみ、(0.5~1%未満)注射部疼痛。
    5. その他:(0.5%未満)腹部腫脹、腹部膨満。

使用上の注意

(警告)

本剤の投与に引き続き、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、血栓塞栓症等を伴う重篤な卵巣過剰刺激症候群が現れることがある。

(禁忌)

  1. エストロゲン依存性悪性腫瘍(例えば、乳癌、子宮内膜癌)及びその疑いのある患者、卵巣腫瘍、下垂体腫瘍又は視床下部腫瘍のある患者[腫瘍の悪化あるいは顕性化を促す恐れがある]。

  2. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦。

  3. 診断の確定していない不正出血のある患者[悪性腫瘍の疑いがある]。

  4. 本剤の成分に対し過敏症のある患者。

  5. 多嚢胞性卵巣症候群に起因しない卵巣嚢胞又は多嚢胞性卵巣症候群に起因しない卵巣腫大のある患者[卵胞刺激作用によりその症状を悪化させることがある]。

(慎重投与)

  1. 子宮筋腫のある患者[子宮筋腫の発育を促進する恐れがある]。

  2. 子宮内膜症のある患者[症状が増悪する恐れがある]。

  3. 未治療の子宮内膜増殖症のある患者[子宮内膜増殖症は細胞異型を伴う場合があるため]。

  4. 乳癌の既往歴のある患者[乳癌が再発する恐れがある]。

  5. 乳癌家族素因が強い患者、乳房結節のある患者、乳腺症の患者又は乳房レントゲン像に異常がみられた患者[症状が増悪する恐れがある]。

(重要な基本的注意)

  1. 本剤は、調節卵巣刺激法に十分な知識及び経験のある医師が使用する。

  2. 患者の選択:本剤の投与開始前に、患者の婦人科的及び内分泌学的検査(配偶者の受精能検査も含む)を十分に行う。また、妊娠初期の患者を除外するために慎重な検査を行う。

    1. 対象患者:本剤を用いた複数卵胞発育のための調節卵巣刺激は、これ以外の医療行為によっては妊娠成立の見込みがないと判断されるものを対象とする。卵管性不妊症で薬物療法及び卵管形成術で治癒不可能と思われる患者、乏精子症で他の方法では妊娠不可能と判断される場合、免疫性不妊症、原因不明不妊症などが対象となる。
    2. 対象外患者:妊娠不能な性器奇形、妊娠に不適切な子宮筋腫、原発性卵巣不全又は非性腺内分泌障害(甲状腺疾患、副腎疾患又は下垂体疾患等)が認められる場合は本治療の対象から除外する。
  3. 多胎妊娠:性腺刺激ホルモン製剤を用いた不妊治療では多胎妊娠の頻度が高くなる。多胎妊娠は単胎妊娠に比し、流・早産が多いこと、妊娠高血圧症候群等の合併症を起こしやすいこと、低出生体重児出生や奇形等のために周産期死亡率が高いこと等の異常が発生しやすいのでその旨をあらかじめ患者に説明する。日本産科婦人科学会の調査によると、平成24年度の新鮮胚を用いた体外受精・胚移植の治療成績では、妊娠数14,650例中、多胎妊娠総数は543例で、そのうち双胎が538例及び三胎が5例であり、四胎以上はなかった。

  4. 特に体外受精・胚移植などの生殖補助医療を受ける不妊女性では、子宮外妊娠の可能性が高くなるので、超音波断層法による子宮内妊娠の初期確認が重要である。

  5. 生殖補助医療を受ける女性の流産率は一般女性より高いのでその旨を患者に十分説明する。

  6. 生殖補助医療後の先天異常の発生率は、自然受胎後に比べわずかに高いとの報告がある。

  7. 卵巣過剰刺激

    1. 本剤の投与に引き続きヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤を投与した場合、卵巣過剰刺激症候群が現れることがあるので、次の点に留意し、異常が認められた場合には直ちに本剤及びヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を中止する(1).患者の自覚症状の有無:卵巣過剰刺激症候群発現初期の警告的な徴候として、重度骨盤痛、悪心及び嘔吐があり、また、卵巣過剰刺激症候群の症例において、腹痛、腹部膨満、悪心、嘔吐、下痢を含む胃腸症状、呼吸困難及び乏尿などの症状が報告されている、(2).急激な体重増加の有無(初期の警告的な徴候)、(3).卵巣腫大の有無:内診の他、超音波検査、血清エストラジオール値検査等を行う。

      (超音波検査)治療開始前及び治療中に定期的な超音波断層法による卵胞発育検査などを行う(卵胞数の過多又は卵巣過剰刺激は超音波検査で確認できる)。

      (血清エストラジオール値検査)エストラジオール値が急激に上昇(2倍以上の増加が2~3日間継続し、極めて高値に達する等)することがあるので注意する。

      1. 臨床所見:卵巣過剰刺激症候群の患者では血液量減少、血液濃縮、電解質平衡障害、腹水、腹腔内出血、胸水、水胸症、急性肺窮迫、血栓塞栓症が発現する可能性がある。卵巣過剰刺激症候群は妊娠すると、より起こりやすく、より重度に、より持続的になり、それゆえ、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与後少なくとも2週間は患者を観察する。卵巣過剰刺激症候群は本剤投与中止後に発現し、急速に進行して、治療後約7~10日目にピークになることが最も多い。通常、卵巣過剰刺激症候群は月経開始とともに自然に解消する。もしヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与前に卵巣過剰刺激症候群が発生する徴候があれば、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤投与を控える。本剤の投与期間中に卵巣が異常に腫大していることがわかった場合には、その治療周期でのヒト絨毛性性腺刺激ホルモン製剤の投与を控える。これにより卵巣過剰刺激症候群が発現する可能性が減少する。
    2. 患者に対しては、あらかじめ次の点を説明する。

      1. 卵巣過剰刺激症候群を引き起こすことがあり、急速に進行して入院加療などが必要な重篤な事象になることがある。
      2. 急激な体重の増加又は腹痛、腹部膨満、悪心、嘔吐などの自覚症状が認められた場合には直ちに医師等に相談する。
  8. 多剤療法を受けた不妊症患者で、卵巣その他生殖器官の良性及び悪性腫瘍の発現が報告されている。不妊症患者へのゴナドトロピン投与とこれら腫瘍の発現リスクとの因果関係は証明されていない。

  9. 個人及び家族の既往歴、重度肥満(肥満指数30kg/㎡を超える)又は血栓形成傾向などの一般的高リスクを有する女性では卵巣過剰刺激症候群が認められなくてもゴナドトロピン治療により静脈血栓塞栓症・動脈血栓塞栓症のリスクが高くなる恐れがあり、これらの女性では治療による有益性と危険性を考える(なお妊娠そのものにおいても血栓症のリスクは高くなる)。

  10. 本剤の製造工程において使用しているストレプトマイシン及びフラジオマイシンが微量に残存している可能性があるので、ストレプトマイシンに感受性及びフラジオマイシンに感受性を持つ患者に対し過敏症を引き起こす可能性があるので、投与を避ける。

  11. 在宅自己注射を行う場合は、患者に投与法及び安全な廃棄方法の指導を行う。

    1. 自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施したのち、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、医師の管理指導のもとで実施する。また、在宅自己注射を行う場合は、投与する際の操作方法を指導する。自己投与適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な場合には、直ちに自己投与を中止させるなど適切な処置を行う。
    2. 使用済みの注射針あるいは注射器を再使用しないように患者に注意を促す。
    3. 全ての器具の安全な廃棄方法について指導を徹底し、同時に、使用済みの針及び注射器を廃棄する容器を提供することが望ましい。

(相互作用)

併用注意:

  1. クロミフェンクエン酸塩[卵胞反応が増強することがある(視床下部レベルで内因性エストロゲンと競合的に受容体と結合し、GnRH及びLH、FSHの分泌を促進する)]。

  2. ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRH アゴニスト)[卵胞反応を減弱することがあるので、十分観察し本剤を増量するなど注意する(下垂体の脱感作により卵胞反応が減弱する)]。

  3. ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)[卵巣過剰刺激症候群が現れることがある(血管透過性が亢進される)]。

(妊婦・産婦・授乳婦等への投与)

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦には投与しない[妊婦及び授乳婦への投与に関する安全性は確立していない]。

(適用上の注意)

  1. 投与経路:本剤は皮下又は筋肉内注射にのみ使用する。

  2. 投与部位:繰り返し注射する場合は同一部位を避ける。

  3. 投与時:注射部位の疼痛及び漏出を予防するため、ゆっくり投与する。

  4. 使用時:バイアル開封後は速やかに使用し、残液は廃棄する。

  5. 筋肉内注射時:筋肉内注射にあたっては、組織・神経などへの影響を避けるため、次記の点に配慮する。

    1. 筋肉内注射時神経走行部位を避けるよう注意して注射する。
    2. 注射針を刺入したとき、激痛を訴えたり、血液の逆流をみた場合は、直ちに針を抜き部位をかえて注射する。

(その他の注意)

本剤による治療後、及び他のゴナドトロピン製剤投与後に卵巣捻転が発現したとの報告がある。卵巣過剰刺激症候群、卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣、妊娠、過去の腹部手術、また、卵巣捻転や卵巣嚢胞、多嚢胞性卵巣の既往は、卵巣捻転のリスクを高くする可能性がある。

(保管上の注意)

遮光、2~8℃で保存。