MEK阻害薬
がん細胞の増殖に関わるMEK(MEKタンパク質)の活性化を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬

MEK阻害薬の解説

MEK阻害薬の効果と作用機序

  • 細胞の異常増殖を引き起こすMEK(MEKタンパク質)の活性化を阻害することで、がん細胞の増殖を抑える薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞増殖のシグナル伝達における重要な因子(経路)であるBRAFに変異がおこるとMEK及びERKという経路が異常に活性化し、がん細胞の増殖が促進される
    • 悪性黒色腫などのがんではBRAFに変異がみられることがある
    • 本剤はMEKへの阻害作用により抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤は通常、BRAF阻害薬などと併用される

MEK阻害薬の薬理作用

がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。

RAS/RAF/MEK/ERK(MAPK)経路は正常細胞及び種々のがん細胞の分化や増殖などにおいて重要なシグナル伝達経路となり、細胞増殖因子が自身の受容体へ結合した後、RAS→RAF(BRAFなど)→MEK→ERKの順でシグナルが伝達され、細胞の増殖・生存などが引き起こされると考えられている。MAPK経路は、正常細胞においては制御されているが、RASやRAFなどに遺伝子変異を有する場合には、この経路が常に活性化されることで細胞の異常増殖などが引き起こされる。悪性黒色腫などの一部のがんではRAFのタイプのうち、BRAFの遺伝子に変異が高頻度でみられ、この変異型BRAFはRASの活性化の有無に関わらずMEK(Mitogen-activated Extracellular signal-regulated Kinase:マイトジェン活性化細胞外シグナル関連キナーゼ)及びERKを活性化すると考えられている。

本剤はMAPK経路におけるMEK(MEKタンパク質)などの活性化を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす。なお、本剤は通常、BRAF阻害薬(変異型BRAFを阻害する薬)などとの併用を前提とした薬剤になっている。

MEK阻害薬の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 下痢、吐き気、腹痛、便秘口内炎などがあらわれる場合がある
  • 皮膚症状
  • 全身症状
    • 発熱、疲労、無力症などがあらわれる場合がある
  • 循環器症状
    • 血圧変動(急激な血圧上昇など)、心機能障害(心不全など)、動悸などがあらわれる場合がある
    • 動くと息が苦しい、足がむくむ、疲れやすいなどの症状がみられる場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 眼症状
    • 網膜障害、ぶどう膜炎霧視などがあらわれる場合がある
    • 視力低下、近くのものにピントが合いにくい、色が分かりにくくなる、暗くなると見えにくくなる、視野が狭くなる、視野の中に見えない部分がある、光りが見える、ものが歪んで見えるなどがみられ、これらの症状が続いたり急激に悪化する場合には放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 肝機能障害
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気、痒みなどがみられ、症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する

MEK阻害薬の一般的な商品とその特徴

メキニスト

  • トラメチニブ製剤
    • 悪性黒色腫のほか、肺がん(非小細胞肺がん)などに使用される場合もある
    • 通常、ダブラフェニブ(BRAF阻害薬)と併用する
  • 食事の影響に関して
    • 本剤を食後に服用した場合、薬剤成分の血中濃度などが低下する可能性がある
    • 本剤は通常、空腹時に服用する(食事の影響を避けるため、通常、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けること)
  • 保管に関して
    • 本剤は通常、ボトルに入れた状態で光を避け冷所(2〜8℃)で保管する

メクトビ

  • ビニメチニブ製剤
  • 本剤と併用する薬剤
    • 悪性黒色腫の治療において:通常、エンコラフェニブ(BRAF阻害薬)と併用する
    • 大腸がんの治療において:通常、エンコラフェニブ及びセツキシマブと併用する