NTT東日本関東病院
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患者や開業医とのつながりは財産:ESDの先駆者が重んじるもの

患者や開業医とのつながりは財産:ESDの先駆者が重んじるもの

PR NTT東日本関東病院 消化器内科 内視鏡部部長 大圃研医師

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という治療をご存知だろうか。これは内視鏡で行うがんの治療の一つである。この治療は胃カメラでも大腸カメラでも行うことができるので、咽頭がん、食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がんなど口から肛門までのほとんどのがんが治療対象になる。とはいえ、腫瘍が進行していて大きすぎたり転移があったりすると治療するのは難しいため、その場合は手術や化学療法などで治療することになる。
実際にESDでは何をするのかというと、胃や腸にできたがんを内視鏡で見ながら必要な分だけ切り取るのだ。ESDとはいわば「がんの芽を摘み取る治療」なのである。
多くの人が開腹手術を受けなくて済むならばESDを受けたいと思うだろう。しかし、残念ながら現在の日本ではESDを行っている施設は限られている。そこには、ESDという治療が決して簡単な治療ではないため、医者ならだれでもできるわけではないという問題が横たわる。医師の力量という要素が大きく関与する治療なのである。
今回は、日本のみならず世界からもその力量が注目されている大圃研(おおはたけん)医師に話を聞く。

年650件超の飛び抜けた症例数「待っていてもらえれば必ずその日に診ます」

NTT東日本関東病院で行っているESDは、全臓器あわせて年間650件を超える。2015年の臓器別件数は、大腸292件、胃258件、食道107件。2016年は十二指腸の治療が急増し、総数700件を超えたという。「がん専門病院やもっと規模の大きな大学病院も及ばない、全国で突き抜けた数字だ」と多くの医師から驚きの声があがる症例数を実現するものとはなんだろうか。

まずは大圃医師の洗練された技術力がなせる圧倒的な治療スピードだ。例えば一般的に2時間程度かかる治療を大圃医師が施術した場合、1時間を超えることはめったにない。通常20〜30分かかる胃の簡単な治療であれば、もはや10分もかからないという。治療箇所の大きさや状態にもよるが、大圃医師は一般的な時間の3分の1で治療を終えることができる計算になる。「うちは圧倒的に早いですよ。学会で治療中のビデオを流すと、早送りしてるんじゃないのかって言われるくらい」と大圃医師は笑う。

そしてその技術力に「患者を先送りにしない」というポリシーが加わる。大圃医師は外来の予約を取っていない。予約制にした場合、限りある枠が埋まったらあとは先送りになってしまいかねないからだ。「患者さんはがんって言われたらすぐに診てほしいじゃないですか。僕は何時間でも外来をやるので、来てさえもらえれば、待ってさえいてくれれば、必ずその日に診ます」と精力的な姿勢を見せる。そんな大圃医師のもとには、またも驚愕の数字だが、毎週30人前後の初診患者が紹介状を持って訪れる。「もっと来てもらっても構いません。その代わり待つので、一回どっかに遊びに行ってから外来に帰ってきてくださいね(笑)」と陽気に話す大圃医師の眼差しは真剣だ。診察以降の治療までの待ち時間の短さも特徴で、検査から治療まであっという間に進んでいく。「月曜日に来た患者さんがどうしても来週に受けたいと言えば、できれば来週やっちゃいます。治療日は全国のどの病院よりも早く組み込んでいると思います」。

こうした高い技術力と精力的な受け入れ方針によって、なんと多いときには一日10件のESDを行うこともある。病棟から内視鏡室へ次から次へと患者を移動させ、順番にどんどん治療をしていく。この治療体制は、大圃医師が率いる一つのチームによってすべて回されている。

大圃研医師の写真01

内視鏡治療は「負担が少ない=簡単で安全」ではない

ここまでたくさんの治療を短い時間でこなしていると聞くと、患者にとっては合併症のリスクが心配になる。大圃医師は「合併症が多いということは全くありません。ESDを数多くやっているほかの病院と差はないと思います」と答える。ESD特有の合併症には出血と穿孔(せんこう:術中や術後に治療器官の壁に穴が開くこと)がある。NTT東日本関東病院のESDでは、近年はどちらも1%を下回っている。もし術中に穿孔した場合でも、その場ですぐに閉じる処置を行うため、影響は術後の食事開始が遅れる程度で入院期間が延びることはないという。また、腫瘍を残すことなく取り除く完全切除率はなんと90%を超えている。ESDを行ったものの腫瘍が予想外に深く達していることが判明するなど、追加で手術が必要になるのは10%程度とのことだ。この背景には、ESDを行う前のがんの精確な進行度の診断がある。

大圃医師は「内視鏡治療は簡単だというイメージが広まりすぎている」と懸念する。「患者さんがよく思い違いされるのは、お腹を開く手術は大変なことだから何が起こっても仕方がない。でも、内視鏡は簡単にできるから何か起こると許せない、ということです」。もちろん患者の身体への負担が少ないことは内視鏡治療の大きなメリットであるが、それは必ずしも簡単で安全にできるという意味ではない。患者への負担が少ないということは、医師はそれだけ難易度の高い治療を行っているということなのだ。その分、何か起こったときの影響は大きくなる。「内視鏡治療はローリスク・ハイリターンではないんですよ。つまり負担の少ない診療だからリスクが少ないという話ではないんです。がんの治療ですから軽く考えてしまわないように患者さんに理解していただいています」。

患者一人ひとりをものすごく大事にする

日々多くの患者が紹介されてやってくる大圃医師だが、決してあぐらをかくことはない。「僕は一人ひとりの患者さんを大事にしたいんです」と強調する大圃医師は、患者に何があっても自分が全責任を取れるんだというつもりで、治療に関する下調べを徹底的に行う。各所から情報を取り寄せるなど、ともすれば面倒だと思うことも手を抜くことなく真剣にこなしていく。「この患者さんはどれだけの積み重ねがあって自分のもとに来ているのか。そこを想像しなきゃだめなんですよ」という言葉は熱気を帯びている。

チームを組んで動いていると、どうしても組織にありがちな他人任せで事務的な雰囲気が漂うことがあり、そのたびに大圃医師は危機感を覚える。特に患者との接し方について気になることがあれば、普段の気さくな人柄を一変させてスタッフに厳しく指導する。訴えるのは「僕たちは臨床医学サービス業なんだ」という自覚だ。例えば医師の説明がよくわからず困っている患者に対して、横柄な態度や冷たい物言いをすることを許さない。「僕らにとっては当たり前のことでも、初めて病院に来た人はわからないことだらけ。説明がわからない患者さんは何も悪くない。わかるような説明をしていない医師が悪いんです」。

医師はただ患者の病気そのものを治療するだけではなく、その病気を抱える患者はどういう人間であり、背景には何があるのかにまで気を配らなければならない。たとえ治療に直接関係がないとしても、患者との対話を工夫することは単なる無駄ではなく「必要な無駄」であると大圃医師は常にスタッフに言っている。

大圃研医師の写真02

「かかりつけの先生の患者」を預かることへの使命感に燃える

大圃医師のモチベーションのひとつは紹介状にある。「自分の名前の紹介状が来るっていうのはすごくうれしいんです。なんとかしようと燃えるんですよね」。ただ、自分のもとへ訪れる患者はあくまで紹介してくれた「かかりつけの先生(開業医)の患者」であるという考え方を貫く。その患者を預かっていることへの使命感は並大抵のものではない。かかりつけの医師がどういう気持ちで患者を送り出したのか、大圃医師は常に考えている。

例えば、胃がんの患者が紹介状を持ってやってきたとする。診てみると、どうやら手術が必要かもしれない。一方、患者は内視鏡治療を受けるつもりで来ている。このときどうすればよいか。一般的には、患者に「内視鏡治療はできませんね」と伝え、かかりつけの医師には報告書に「外科医に回しました」と書いて対応する。大圃医師はこれは80点で可もなく不可もないという。ただ、「内視鏡で取れるからと勧められて来たのに、無理ですよって機械的に答えちゃったら、紹介した先生の考えを無視することになるじゃないですか」と指摘する。この場合、大圃医師はまず紹介元のかかりつけの医師に電話で意向を確認する。「大圃先生の判断に任せます」と返ってくることも多いが、「内視鏡でいけるのではないか」と言われればその意見を尊重する。超音波検査(US)など別の客観的なデータも添えた上で、再びどうすべきか電話で相談する。このように、大圃医師は必ず紹介してくれた医師の意見も取り入れて対応するようにしているのだ。医療に絶対的な正解はないという慎重な判断のもとで、患者をよく知るかかりつけの医師とコミュニケーションをとって最適な治療を提案しようとする姿勢がうかがえる。また、患者さんとかかりつけの医師の関係性をないがしろにしない姿勢が、退院した患者の生活に重要になっていくことまでにらんでいるのである。

こうした姿勢の根底には、子ども時代の経験がある。大圃医師は、茨城県で祖父から続く医師一家に生まれ、地域に根ざした医療とともに育ち、患者とかかりつけ医の親密な信頼関係を肌で感じてきた。大圃医師は自らを「開業医の気持ちがわかる若い医師」だと言う。「開業医のみなさんが応援してくださるのはそういう背景があるんじゃないでしょうか」。

大圃医師の財産は「積み上げた開業医とのつながり」

「無名の僕に大切な患者さんを紹介し続けてくださった開業医のみなさんのおかげで今の自分があるんです」。大圃医師は開業医の先生への感謝の気持ちを語る。今も昔も開業医の面々が紹介してくれた一人の患者は、大圃医師にとってはとても大きな一人だ。かつて、まわりの病院に内視鏡治療の大物医師がたくさんいるなかで自分に任せてくれた開業医の先生の思いに応えるために、大圃医師は必死でやっていた。合併症はどうしても一定確率で起きてしまうのだが、合併症が起きたときは、必要な対応をしたあとに白衣のまま紹介元の医師のもとへ内視鏡写真を抱えて報告に行くこともあり、そのたびに「積極的に治療をしていれば、だれが治療しても一定の確率で起きる事だから当然、気にすることはない。これからもうちの患者さんをどんどん頼むから頑張れ。」と励まされた。患者が増えれば治療の技術も上がり、発言力をともなう実績にもなる。「僕が今、多少なりとも名前が知られるようになったのは、ほかでもなく開業医の先生たちが応援して患者さんを任せてくれた賜物。積み上げてきたつながりは僕の財産なんです」としみじみと振り返った。

これまで大圃医師が、患者に尽くし、かかりつけの医師と密な関係を築くことで蒔いてきた種は、あらゆるところで芽吹き、根を張りめぐらせている。「親戚の人が先生の治療を受けたことがある」「職場の人がよかったって言っていた」というような、思いがけないつながりが重なり、新たな患者がやってくることも珍しくなくなったという。「どこで誰に見られているかわからないから、僕は絶対に手を抜きません」とその思いは一層強くなっている。

患者を増やすにはどうすればいいのか。大圃医師の話を聞いていると自ずと見えてくる。圧倒的な技術力や症例数だけでなくそれにプラスする何かの存在だ。「ほかの人と同じことをやっても同じにしかならないでしょう。ほか以上のことをやるんです、当たり前でしょう。」と話す大圃医師は、紹介されていくる患者が少ない日にはとても敏感になる。どうして今日は少ないのか?なんだか最近減っていないか?「多かったら多かったで大変大変って騒ぐくせに、減ったら減ったでもっと機嫌が悪くなる。僕はやっかいな人ですね(笑)」。大圃医師の話はいつも大きな笑顔で終わる。

粛々に愚直に― 内視鏡診療のメッカを目指す

粛々に愚直に― 大圃医師のスタンスはいつもこうだ。一攫千金は狙わない。目の前のことをコツコツと地道にやる。「目先のことばかりと言われるかもしれないけど、僕は目の前のことを一生懸命にやるのが大事なんだと信じている」と話す大圃医師が目指すのはNTT東日本関東病院を内視鏡診療のメッカにすること。技術力や症例数ではすでに達成しているようにも思えるが、それだけでなく、教育機関として、学術機関として、どの分野をとっても日本で一番の施設となるのが目標だ。そのために、まずは門下生の育成に力を入れている。学びたい人を集めて、たくさんの医師を育てる。教え子が巣立っていくことで、いち病院を越えて輪が広がっていく。それは結果として、一人でも多くの患者さんを救う内視鏡診療の普及にもつながるのだ。

最後に大圃医師は患者に向けて「技術に自信があるのは当然です。なによりもここの病院に来てよかった、大圃先生に治療してもらってよかった、そう思ってもらえる診療をしたい。必ず患者さんに喜んで帰ってもらえるようにしますよ」とメッセージを送る。「開業医のみなさんにはぜひ僕に大切な患者さんを任せてください。患者さんはぜひ僕の治療を受けたいと希望してください。我々の行う治療の数に限度はありませんので必ず診ます」。

患者を集めるには技術を超えたプラスαの工夫が必要― 大圃医師はそう言った。だが、彼のもとに人々を惹き寄せているものは、周りへの感謝を忘れず決してかっこつけない人間味にあふれた生き方なのではないだろうか。力量が第一人者になろうともぶれないスタンスは、患者にも医者にも「彼にお願いしてよかった」と思わせるに十分である。

大圃研医師の写真03

聞き手のひとこと

小生は常々「医学は科学であるが、人間学でもある」と思っている。どんなに科学的知識が深くても、相手の気持がわからない医師であれば患者さんは満足しない。最近では、EBM(Evidence based Medicine:科学的根拠に基づいた医療)を重要視するのが主流であるが、NBM(Narrative based Medicine:医師患者間の対話から最適の医療を探す方法)やVBM(Value based Medicine:患者の価値判断を基軸にする医療)も大切にされ始めている。医療に絶対解はないので、EBM、NBM、VBMのいずれが正しいのかを判断することは難しい。しかし、絶対解はなかろうと、人間関係や会話の中に最適解が見え隠れしていることはしばしばなのである。人間関係を大切にする大圃医師の言葉から最適解を逃さない姿勢が見えてくる。

「医師一人の力など小さなものでしかない」と大圃医師は言う。ことESDの圧倒的技術者が言うのだからなおさら言葉は重い。彼の言うとおり、和を貴ぶことで1+1が2以上の力を発揮するということを忘れてはいけない。患者を中心に多くの登場人物がいることをないがしろにない姿勢が、たくさんの患者や連携医師を集めているのであろう。
医師としてはもちろん人間としても非常に有意義で考えさせられるインタビューであった。

聞き手:MEDLEY医師 園田唯

NTT東日本関東病院の基本情報・アクセス

施設名

NTT東日本関東病院

エヌティティヒガシニホンカントウビョウイン

住所 〒 141-8625 東京都 品川区東五反田5-9-22
電話番号 03-3448-6111
アクセス 山手線 五反田下車 徒歩7分 東急池上線 五反田下車 徒歩10分 浅草線 五反田下車 徒歩5分
駐車場 無料 - 台 / 有料 150 台
病床数 合計: 628 ( 一般: 578 / 療養: - / 精神: 50 / 感染症: - / 結核: -)
Webサイト http://www.ntt-east.co.jp/kmc/

この情報は、厚労省および都道府県が公開する情報に基づいています。最新の情報についてはNTT東日本関東病院へ直接お問い合わせください。

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