NTT東日本関東病院
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限界にとらわれない治療―ラジオ波焼灼術のパイオニアに聞く

限界にとらわれない治療―ラジオ波焼灼術のパイオニアに聞く

PR NTT東日本関東病院 消化器内科 主任医長 寺谷卓馬医師

肝臓がんは、がん死亡者数中の第5位で、およそ年間3万人弱が亡くなる病気である。現在行われている治療法は多岐にわたり、手術や肝動脈塞栓術や全身化学療法、ラジオ波焼灼術(RFA)などが挙げられる。

そのなかでもRFAは、手術でお腹を切らなくてよい治療であるにもかかわらず治療成績が良いことが特徴だ。この治療では、エコー検査で安全性を確認しながら肝臓の腫瘍の部分に電極針を穿刺して、高周波を流すことで腫瘍を死滅させる。しかし、誰もがRFAを受けられるわけではない。腫瘍の大きさや数によって治療の可否が決められているのである。

今回は、RFAの第一人者である寺谷卓馬医師に話を聞いた。彼の言う「固定概念に縛られても誰も得をしない。救える患者はもっといるんだ」という思いに迫る。

スピード感のある治療を実現する恵まれた設備環境

NTT東日本関東病院の消化器内科が手がける肝臓がんへのRFAは年間400件前後。過去10年間の患者数はのべ3500例を超える。そのうち肝細胞がんが約2600例と4分の3を占め、残りの4分の1が転移性肝がんで、数名が肝内胆管がんである。転移性肝がんの転移元(原発巣)で最も多いのは大腸がんで、胃がん、乳がん、膵がん、肺がんなど幅広い。

RFAのメリットは手術よりも患者にかかる負担が小さいということだ。肝臓がんは再発率が高く、複数回の治療に備えて肝機能を温存しておくことが求められる。そのため、身体への影響がより少ない治療法が望ましいというのは言うまでもない。こうした背景もあり、患者への身体的・精神的な負担を小さくしてくれるRFAは、注目を集める治療法なのである。

治療にかかる時間が手術と比べて短いのも大きな特徴だ。寺谷医師によると、腫瘍を焼く時間は2分で終わるものから10分かかるものまで、大きさによって変わってくるという。全体ではおよそ1時間が目安で、多くの時間が必要な場合は2回以上に分けて行うことになる。「一発で全部やる必要がないのは手術とは違いますね」。入院期間はRFAを2回実施するケースで10日間程度とのこと。

「治療を行うべきかどうかをできるだけ早く判断している。焼灼すると決めたらできればその日に入院。翌日にRFAをやって、さらに翌日にCTを撮って評価。そして退院」と寺谷医師がテンポよく話すように、同病院では患者を待たせない迅速な治療が行われている。

一般的に、CT・MRI検査を伴う入院では2週間から1カ月程度の予約待ちをしなければならないことが多い。一方、同病院ではCT機器6台、MRI機器4台を備えており、放射線部の強力なサポートのもとですぐに検査を受けることができる。さらに、より明瞭で高画質で撮影できる、64列マルチスライスCTや3.0テスラMRIによって精度の高い検査が可能となっている。「CTは全部2mmスライスだし、MRIの解像度もかなりよくてね。外来の方もCTやMRIが必要ならバンバンやりますよ」と精度とスピード感をあわせ持つ医療体制が治療を後押しする。

寺谷卓馬医師の写真01

限界にとらわれない治療方針「長く生きられると思えばやります」

“No Limit”― 寺谷医師が身につけるスクラブの右胸に縫い付けられた青い文字が目に留まる。これは「限界はない」という寺谷医師の患者と治療に対するモットーだ。この積極的な姿勢が多くの患者に希望を与えている。

肝臓がんに対してRFAを行うかどうかの判断基準のひとつに「3cm以下の腫瘍が3個以内」あるいは「5cm以下の腫瘍が1個」という数字がある。それぞれ腫瘍の大きさと数を指しており、原則的にその範囲内に限ってRFAが行われる。そのため、この基準を超えた重い症状を抱える患者の多くにはRFAは行えないのが現状だ。

「治療することで長く生きられると思えばやります」と、そこに助け舟を出すのが寺谷医師である。判断基準は余命が伸びるかどうかで、寺谷医師が総合的に判断する。「制限しなくていいんだって確信することがあったんですよね」。この限界にとらわれない治療方針が確かなものになったエピソードを振り返る。

ちょうど10年前、転移性肝がんで13個の結節(こぶ状の腫瘍)を抱える患者がやってきた。そのころから3cm3個以上でもRFAをやっていた寺谷医師だが、この数ではさすがに迷ったという。「13個焼灼して、3か月後にCT撮って100個になっていたら、まったく意味のない行為になるかもしれない」と患者に伝えると、「化学療法はもういやなんだ。やってほしい」という切実な声が返ってきた。それなら焼灼してみようと治療を行い、3か月後にCTを撮ったところ、なんと4個に減っていたのだ。その患者はこれまで24回のRFAを受け、10年が経った現在も元気に暮らしているという。

この経験から「知ったかぶりもいいところだ」と衝撃を受けた寺谷医師。その当時、すでに15年以上も医師を続けていたが、“わかっているふり”をしている自分に気づいたという。「何もしなかったら100個になっていたのかもしれないけど、真面目に13個を焼灼したら4個になった。もしあのとき13個を焼灼してなかったら、結果としていい方向になる患者が一人でも出るんだというのが全然わからなかった。反省しましたよ。自動的に区切っちゃだめなんだなって」。その強烈な経験が限界をもうけない治療方針につながっているというわけだ。

もちろん、すべての患者にRFAを行うわけではない。例えば、あまりにも腫瘍の数が多く、サイズも大きく、進行も早い場合、RFAでいくら腫瘍を減らそうとしてもこれは追いつかない。「こういうときはやらないほうがいい。余命が伸びるとは思えないから」。あくまでRFAによって患者が長く生きられるかどうかという判断基準を常に強調している。

RFAは手軽というわけではない ネットで広まるイメージに懸念

刺して焼くだけで切らない。局所麻酔で痛みもない。短時間で終わる。だから手軽だろう― そんなイメージをRFAに対して持っている人が多くいるかもしれない。「ネットでRFAは簡単で安全と言われ過ぎているのではないか」と寺谷医師はインターネット上で広まる過度なイメージについて指摘する。「手術と比べて簡便なのはメリットだけど、だからといって危険がないわけではないんです」。

NTT東日本関東病院の消化器内科では、より重い症状を抱えた肝臓がん患者を受け入れているため、後遺症を残したり命を落としたりする可能性も高くなる。治療を受ける患者も合併症のリスクについて知っておかなければならない。同院でのRFAによる合併症が起こる率はおよそ2.9%(2006年4月〜2014年12月)。胸腔内や腹腔内で出血したり、肝梗塞や肝膿瘍になったりする例が見られる。理由にかかわらず治療から1カ月以内に亡くなる術死は0.3%。「患者さんには必ず言っています。300人に1人、RFAで亡くなります、と。当然ですが、それを話してからじゃないとやりません」。

あくまでも治療を受けるかどうかを決めるのは患者本人である。寺谷医師は、自身の判断で余命が伸びると思えばRFAをやりましょうと提案をするが、同時に3cm3個以内、5cm1個以内という一般的な治療基準を超えていることも伝える。「本人の強い希望なしにはできない。家族の希望じゃなくて本人が希望しているかどうか。それをちゃんと確認しています」。

寺谷卓馬医師の写真02

「まずは電話で聞きますよ」遠くに住む患者にも門戸を開く

「生まれは大阪の岸和田。関西なんです。だからはっきり言っちゃいますよ」と微笑みながら話す寺谷医師は、なんでも包み隠さずズバッと言い切るざっくばらんな人柄だ。なによりも患者と話すことを大切にしている。たとえ東京から遠く離れた地方に住む患者であっても、「まずは電話で話を聞きます」と受診の機会を提供することに努めている。面と向かわなくても、本人の話を聞き、CT画像を送ってもらえれば、症状の具合やRFAの必要性がある程度わかるというから驚きだ。電話での会話を通して、実際に東京にRFAを受けに来てもらうか、そのまま地元の病院で治療を受け続けてもらうかなどを判断して勧める。「何週間も待ったり、わざわざ遠いところから来たりしたのに治療を受けられませんでした、というのは患者にとって負担でしかないと思います。電話相談はいっぱい来ますよ。名古屋や鳥取、熊本、沖縄からもありましたね」。

電話で相談ができるとわかれば、歓喜する患者は多くいるだろう。問い合わせが殺到したらどうするのか。寺谷医師は「実際にバンバン電話がかかってきて困ってから考えればいいんですよ」と精力的な答えを返してくれた。

さらに、治療をやむなく断った患者でも、聞き取った症状の記録やCT画像をすべて保存している。「ひょっとしたら症状が変わってやって来るかもしれませんからね」。話を聞けば聞くほど、寺谷医師が患者に開く門戸の広さが伝わってくる。

ほかの病院で断られて希望を失いかけている患者にとっては心強い最後の砦(とりで)のような存在であり、寺谷医師自身もそれを強く目指しているのだ。「今の時代の医療は情報戦だと思います。あきらめないで探してほしい。納得がいかないままの状態でいないでほしい」と心の底からの言葉で患者に訴える。

5年先、10年先の医療をいかに先取りできるか

限界にとらわれない寺谷医師は、5年先、10年先の医療をいかに先取りできるかという思考を保ち続けている。「何年か先だと思う医療を今この時間で目指していくことが正解。医者としてそういう価値観を持つことが患者のためだと思うんです」。医療を先取りする上でのキーワードは「非侵襲性」だ。患者への身体的・精神的負担が小さい治療ほど、非侵襲性が高いと言い表す。「いつかはRFAも古い治療になって、刺すことすらなくなる時代がくると思うんですよ」と寺谷医師が語気を強めるように、究極的には、電極針を刺して焼くというRFAの特性をも飛び越えて、体に何も刺さない治療法こそが将来に求められるのである。「誰かが決めた“限界”にとらわれてしまい、自分には先見の明がなかったなぁ、あのとき気づいていれば10年先の医療を患者にしてあげられたなぁ、という後悔はしたくないんです」。 「ラジオ波(RFA)でお腹を開けないで治ったんだよ」「ラジオ波で長く生きられたんだよ」「あぁ、本当によかったね」というやり取りを10年後に見てみたい。そんな思いで寺谷医師は、今日も多くの肝臓がん患者に希望の光をともし続けている。

寺谷卓馬医師の写真03

聞き手のひとこと

医療の現場にいると、ガイドラインという言葉が錦の御旗になることはしばしばある。その一方で、寺谷医師のように、純粋に患者を救うためならたとえガイドラインを超えてもなんとかしたいという思いを小生も感じたことはある。しかし、それを声高らかに言うことはできなかった。自信がないからだ。一人でも多くの患者を救いたいという思いから、リミットを外してチャレンジする寺谷医師の姿勢には、臨床医としての魂が揺さぶられる。そこには人間味あふれる医療が顔を覗かせるのである。

聞き手:MEDLEY医師 園田唯

NTT東日本関東病院の基本情報・アクセス

施設名

NTT東日本関東病院

エヌティティヒガシニホンカントウビョウイン

住所 〒 141-8625 東京都 品川区東五反田5-9-22
電話番号 03-3448-6111
アクセス 山手線 五反田下車 徒歩7分 東急池上線 五反田下車 徒歩10分 浅草線 五反田下車 徒歩5分
駐車場 無料 - 台 / 有料 150 台
病床数 合計: - ( 一般: 578 / 療養: - / 精神: - / 感染症: 628 / 結核: -)
Webサイト http://www.ntt-east.co.jp/kmc/

この情報は、厚労省および都道府県が公開する情報に基づいています。最新の情報についてはNTT東日本関東病院へ直接お問い合わせください。

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