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最近の治療の動向は?新薬は?重症筋無力症の治療法(手術や抗コリンエステラーゼなど)を解説(3/3)

解説記事  最終更新: 2017年3月31日

前回のページまでで重症筋無力症の治療の概要と具体的な治療法としてステロイド治療および免疫抑制薬を紹介しました。ここでは重症筋無力症で行われる手術方法と抗コリンエステラーゼ薬治療、眼瞼下垂(が開きづらくなる)に対する治療方法を解説します。また近年の治療法の考え方や新薬など今後の治療法の展望についても紹介します。

重症筋無力症の胸腺摘除術

重症筋無力症胸腺腫という病気と深く関わりがあります。胸腺腫と関連する重症筋無力症は全体の15-25%を占めます。胸腺腫合併している場合は、重症筋無力症の治療に加えて胸腺腫に対する手術も必要になります。したがって、重症筋無力症と診断された患者さんには必ず胸部CT検査を行います。

胸腺腫を合併していることがわかった場合、治療法としては胸腺摘除術に加えて放射線療法化学療法などがあります。特に、発症年齢が若く、発症から手術までの期間が短く、抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の患者さんに対して手術をすると、治療効果が高くなることが知られています。

手術後も再発の有無を確認するために年に1回程度、胸部のCT検査を行います。

なお、胸腺腫を合併していない場合に胸腺を摘出するべきかどうかについては、昔から議論されてきたところではありますが未だに結論は出ていません。施設によって考え方は異なると思います。

 

重症筋無力症の抗コリンエステラーゼ薬

抗コリンエステラーゼ薬は重症筋無力症の症状を和らげる効果があり、上記の治療に追加して積極的に用いられます。飲み薬が治療に用いられ、よく使われるのはメスチノン®、マイテラーゼ®、ウブレチド®です。注射の薬は作用時間が短時間であり重症筋無力症の診断に用いられます(いわゆるテンシロンテスト)。

 

重症筋無力症の眼瞼下垂に対する治療法

重症筋無力症の症状の中で最も代表的なものは瞼が垂れ下がって目を開けづらくなる眼瞼下垂です。瞼が下がっていると見栄えが悪いだけでなく、物が見えづらかったり二重に見えたりするなど日常生活に支障をきたすことがあります。その場合、ガイドラインではナファゾリン(プリビナ®)点眼により症状を和らげる効果が期待できると記載されています。また、どんな治療をしてもなかなか治らない眼瞼下垂に対しては、眼瞼挙上術という手術を行うこともあります。この手術は眼科や形成外科で行われています。

 

重症筋無力症の最近の流れ

上で述べたように、重症筋無力症の治療の中心はステロイドで、しかも飲み薬としての投与を長期間行う必要があります。これまでは、プレドニゾロン(プレドニン®)を50-60 mg/日という非常に多くの量を飲み続けていただくということが行われていました。しかし、最近は考え方が変わってきています。

というのも、ステロイドには非常にたくさんの副作用があります。感染にかかりやすくなる(易感染性)のみならず、糖尿病骨粗しょう症胃潰瘍血栓症肥満(特に体感が太ることが多い)やムーンフェイスや動脈硬化、さらには白内障など、多岐にわたります。このため、高容量のステロイドを飲み続けると、症状を抑えることができても副作用に苦しみ、結局患者さんに満足してもらえないことがあります。また、ステロイドの副作用のためにステロイドを飲み続けられなくなるということも少なくないです。

そういった流れを受けて、重症筋無力症の治療に対する考え方が変わってきました。名づけて「早期協力治療戦略(early aggressive treatment strategy against myasthenia gravis)」と呼びます。ステロイドの飲み薬はできるだけ少量にして、その代わりに免疫抑制薬を併用し、その他ステロイドパルス、IVIG、血液浄化療法など、重症筋無力症の症状が急に悪くなってきた時に使える治療法を組み合わせます。他の治療法を積極的に併用してステロイドを減らしても、ステロイドのみたくさんの量投与する場合と比べて、重症筋無力症のコントロールがつく割合に違いはないと言われています。今後はこのように出来るだけステロイドを減らして患者さんが副作用に苦しまないようにしようという流れになっていくと思われます。

 

重症筋無力症の今後の治療法の展望

これまで、重症筋無力症の治療といえばステロイド+胸腺摘除術+抗コリンエステラーゼ薬、とされてきました。ステロイドに大きく依存する治療法であり、重症筋無力症のコントロールはついてもステロイドの副作用に苦しむ方が多かったです。そういった点を踏まえ、ステロイドを減らす流れになってきたと述べました。このように重症筋無力症の治療法は現在見直されている段階であり、今後も治療法については大きく変わってくる可能性があります。

また、いくつか新薬も検討されています。日本ではまだ重症筋無力症の治療に対しては未承認ですがだんだん使われてくるようになった薬の中に、リツキシマブというものがあります。元々はB細胞性リンパ腫の治療に用いられている薬ですが、リンパ腫と重症筋無力症が合併している患者さんにリツキシマブを投与したところ重症筋無力症も改善したということがあり重症筋無力症の治療薬として注目をあびるようになりました。リツキシマブを投与して数週間で重症筋無力症の症状が改善するという短期的効果が得られるとともに、半年から数年の経過で症状が改善する長期的効果も得られるとされています。他の治療法ではなかなかうまくいかない重症筋無力症に対して、有望な治療方法の一つとなるのではないかと期待されています。

免疫抑制薬も、現在は使える薬が限られていますが、その他にもいくつか有効性があるのではないかと言われている薬はあります。

このように重症筋無力症は今、治療法が大きく変わりつつあることがお分かりいただけたと思います。今後もさらなる発展が見込まれる分野です。この記事が、重症筋無力症で苦しまれている患者さんにとって病気を理解する助けとなれば幸いです。




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