正常妊娠
多くの人が妊娠に気づくのが妊娠2ヶ月(妊娠4週0日から妊娠7週6日まで)です。妊娠したかもと気づくと、今までしてきた生活や体の症状、これから何をしたらよいかなど気になることも多いとおもいます。また、妊娠前にしておくことが勧められることもあります。そのような疑問に回答します。
最終更新: 2017.10.04

妊娠かも、病院ではどんな検査がある?

妊娠検査薬で陽性を確認して初めて病院にかかる時、病院ではどんな検査を受けるのか不安に思う方もいると思います。ここでは、妊娠したかもと感じて初めて病院に行った際に受ける検査を解説します。

妊娠初期から妊娠後期までの詳しい検査については「妊娠中の通院では何をする?」を参考にしてください。

1. 問診とは?何を聞かれる?

問診というのは医師が妊娠を正確に判断するために、患者さんから話を聞いて手がかりを得ることをいいます。問診表といって、医師との話の前に診断をスムーズにするために予め質問事項の回答を記入してもらうこともあります。

施設により異なる部分はありますが、妊娠かもしれないと思い最初に病院にかかった際には、以下のようなことを聞かれることが多いです。

  • 本人の基礎情報について
    • 年齢
    • 身長
    • 妊娠前の体重
    • 飲酒や喫煙の有無
    • アレルギーの有無
    • 婚姻の有無
  • 両親や兄弟姉妹の中に高血圧や糖尿病静脈血塞栓症、その他の遺伝疾患の人はいるか
  • 本人の既往歴(過去にかかった病気)について
    • 治療中または治療後の病気があるか
    • 内服している薬はあるか
    • 過去に手術をした経験はあるか
    • 婦人科の病気にかかったことはあるか
    • 子宮頸がん検診や乳がん検診を受けたことはあるか
    • 特定の感染症にかかったことがあるか
    • どのワクチンを接種しているか
  • 本人の妊娠歴について
    • 過去の妊娠や分娩の有無、その経過
    • 過去に分娩した赤ちゃんの様子
    • 不妊治療の有無

妊娠しているかどうか検査してほしいだけなのにと感じる方や、過去に妊娠や人工妊娠中絶の経験があるかどうかなど他者に知られたくない情報もあるかもしれません。しかし、医師が正確に情報を把握することは、正常な妊娠かどうか、また妊娠に伴うリスクがないかどうかを判断する上で重要です。医療者には個人情報の保護の義務がありますので診療以外での個人情報の使用はしないのが原則です。医療者を信用して正確な情報を伝えてください。

2. 超音波検査で妊娠はわかる?

超音波検査には、内診台の上に上がって膣の中に機械をあてる経膣超音波検査と、お腹の上から機械をあてる経腹超音波検査の2種類があります。そのうち、妊娠をしているかどうかを確認するために行う超音波検査は経腟超音波検査です。

経腟超音波検査では、子宮内で妊娠が成立しているかどうかや胎児の大きさ、胎児心拍、子宮や卵巣の異常などを確認します。妊娠をしているかどうかを確認するための超音波検査には以下のようなものがあります。

  • 胎嚢の確認
    • 胎嚢(たいのう)が子宮内にあるかどうかを確認します。胎嚢というのは赤ちゃんが入っている袋状のものです。妊娠4-5週までの間に胎嚢が確認されるのが正常です。
  • 胎児心拍の確認
    • 遅くても6週末ごろまでには胎児心拍が確認できます。
  • 子宮や卵巣などの異常の有無
    • 妊娠に合併した腫瘤(子宮筋腫や卵巣腫瘤)、子宮の形態異常などの診断を行います。

超音波検査でみえなくても妊娠していることがある?

妊娠に気付くのは自宅での尿のhCG検査(妊娠検査薬)によることが多いです。hCG検査の方はその妊娠検査薬の種類にもよりますが、早い場合は妊娠4週で妊娠反応陽性を確認することができます。

超音波検査では胎囊(たいのう)があるか、胎囊の中に胎芽(あかちゃん)や心拍が確認できるかによって正常妊娠を判断しています。通常、胎囊が見えるのは妊娠4週から妊娠5週ごろ、心拍が確認されるのは妊娠5週から妊娠6週ごろであるため、最初の病院にかかった時期では正常な妊娠を判断できないことがあります。最初の検査で胎嚢が確認されなくても以後に胎嚢が確認されて正常妊娠とわかる場合もあります。超音波検査で確認ができなかった場合には日にちをあけて再度検査を行い、妊娠の確認を行っていきます。

検査で妊娠週数がわかるのはなぜ?

妊娠週数は、基本的には最終月経の開始日を0日目として計算し決定します。月経周期が不規則な方の場合で排卵日がはっきりとしている場合には、排卵日を妊娠2週0日目として計算することもあります。この方法については「出産予定日の計算方法は?ずれることはある?」で説明しています。

妊娠週数は妊娠が判明した時点では、月経開始日や排卵日を参考にして決定しますが、その情報が不確かなこともあります。そのため、実際には妊娠初期の妊婦健診で超音波検査(エコー検査)を実施し胎児の大きさを元に妊娠週数を確認、もしくは修正します。大体妊娠7週から10週までに超音波検査を行い妊娠週数を確認もしくは修正します。

妊娠週数を推定するには胎児の頭からお尻までの長さ(頭殿長)を使います。頭殿長(とうでんちょう)は英語のCrown-Rump Lengthを略してCRLとも言います。頭殿長を日本超音波学会による基準値と照らしあわせ、現在の妊娠週数を決定し、出産予定日を予測します。双胎(ふたご)の場合にも、同様に超音波検査を行い大きい方の計測値を用いて出産予定日の予測を行います。最終月経より計算される妊娠週数と超音波による妊娠週数に7日以上誤差があった場合は妊娠週数を超音波検査に合わせて修正します。

ルテイン嚢胞とは?

妊娠初期の経腟超音波検査では、卵巣の異常の有無を確認しています。検査で「卵巣が腫れています」と言われるととても不安になるかもしれませんが、中には病的ではない無害なものもあります。

たとえばルテイン嚢胞(のうほう)は妊娠中に現れることがありますが、普通は無害です。ルテイン嚢胞は卵巣にできた袋のようなもので、中には水のような液体が入っています。ルテイン嚢胞は妊娠8週から妊娠10週をピークに分泌されるhCGというホルモンによって卵巣が過剰に刺激されることが原因でつくられます。たいていは妊娠14週から妊娠16週になるとhCGの分泌量が減ることによって自然に縮小します。このためルテイン嚢胞が見つかっても経過観察されることが多いです。ただし自然に縮小がみられない場合には、ごくまれですが妊娠中の茎捻転(けいねんてん)や破裂、分娩時の胎児の通過障害を起こす可能性があり、妊娠中期頃に手術を行うこともあります。

ほかの病気の可能性がある場合にはさらに検査を続けるなどして診断し、必要なら治療します。