暑気あたりなどに効果のある漢方薬と、東洋医学からみた夏バテ
「夏バテ」は、夏から秋にかけて、食欲がない(食欲不振)、気力がわかない、疲れがとれないなどの状態が続く症状をさします。「夏バテ」という病名はありませんが、不定愁訴の一つとして考えることができます。
夏バテの原因は様々ですが、暑さをはじめとして、湿気、栄養不足などにより体力が弱ることが考えられます。
夏バテ対策としては生活環境を見なおすことなどが考えられます。例えば、休養を十分に取る、冷たい食べ物・飲み物だけでなくバランスを考えるなどがあります。しかし生活上の注意はなかなか実践できないことも多いのではないでしょうか。
いわゆる西洋薬で「夏バテ」を治せると言えるものはありませんが、ここでは夏バテに有用とされる漢方薬を紹介します。
東洋医学の考え方からみた夏バテ
漢方では体内の基本要素を、「気・血・水(津液)」として表現します。
- 気:身体の血や水を循環させる目に見えることがない「気」。気力・精神状態などと考えることもできる
- 血:一般的に言う血液、身体に栄養などを巡らせるもの
- 水(津液):血液以外の体液(リンパ液など)、
ホルモン や免疫 物質もこれに入る
夏バテは全体的に気力がなくなり、また発汗などが悪くなることで、身体に水が溜まってしまうことから、気虚(ききょ)や水毒(すいどく)として考えることができます。
- 気虚:気の流れが滞ること
- 水毒:体液(水)が体内に滞っている状態(水分の
代謝 異常)
夏バテに効果が期待できる漢方薬
気虚・水毒を改善して夏バテを和らげる漢方薬は以下のようなものがあります。
-
清暑益気湯(せいしょえっきとう):夏やせ、暑気あたりや暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠などの症状に使われる
-
補中益気湯(ほちゅうえっきとう:消化機能が衰え、四肢
倦怠感 が酷く、弱っている人に使われる -
六君子湯(りっくんしとう):胃腸が弱り食欲がなく、疲れやすく、貧血が起きやすく手足が冷えやすい症状に使われる
-
人参湯(にんじんとう):体質虚弱の人、また虚弱により体力低下している人の症状に使われる
- 真武湯(しんぶとう):新陳代謝が落ち、全体的に弱っている人の症状に使われる
併用に関する注意事項など
漢方薬にも副作用や「飲み合わせ」に関係する注意があります。上に挙げた漢方薬とほかの薬との併用に関する注意や、その他の注意事項を説明します。
清暑益気湯
カンゾウ含有・グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用に注意する必要があります。併用によって偽
補中益気湯
カンゾウ含有・グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用に注意する必要があります。併用によって偽アルドステロン症、ミオパチーなどが現れやすくなる懸念があります。
その他、本剤は重大な副作用として、非常にまれとされますが間質性肺炎がでる可能性もありますので、汎用される漢方薬ですが、万一息切れなどの症状を感じた場合には医師や薬剤師に相談してください。
六君子湯
カンゾウ含有・グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用に注意する必要があります。偽アルドステロン症・ミオパチーなどが現れやすくなる懸念があります。
また本剤は重大な副作用として、非常にまれとされますが、
人参湯
以下の人は服用はしてはならないとされています。
- アルドステロン症の患者
- ミオパチーのある患者
- 低カリウム血症のある患者
また、カンゾウ含有・グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用に注意する必要があります。偽アルドステロン症・ミオパチーなどが現れやすくなる懸念があります。
真武湯
以下の方は慎重に投与する必要があります。
- 体力の充実している人
- 暑がりで、のぼせが強く、赤ら顔の人
当てはまる人では、真武湯に含まれるブシの副作用(心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心など)も強く現れる可能性があります。妊婦もブシの副作用が強く現れる可能性がありますので服用しないことが望まれます。
まとめ
上で紹介した漢方薬の中には、カンゾウ(甘草)が構成生薬として配合されている処方が多めですので、併用する薬には気をつける必要があります。特に、以前より漢方薬や生薬製剤を服用されている方は、カンゾウなどが両処方に入っていないかなど、確認する必要があります。人参湯などは、アルドステロン症やミオパチーを持つ人には投与が禁忌となっていますので、必ずご確認ください。
夏バテに有用とされる漢方薬の多くは、胃腸などを整えて、気虚を取り除き、水毒を改善するものが多いです。しかし、漢方薬はあくまで胃腸の調子を整え、代謝を改善する手助けをするだけですので、夏バテになってしまった生活環境や食生活などを自身で見なおして対策をしていくことも大切です。