めまい・耳鳴り
最終更新: 2018.03.19

突発性難聴の原因、症状、治療

耳鳴りの原因のひとつが突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)です。50代から60代の人に多く、突然症状が始まります。突発性難聴の原因や症状、治療に使うステロイド薬などの特徴と注意点を説明します。

1. 突発性難聴とは?

突発性難聴は、突然片方の耳が聞こえづらくなる病気です。50代から60代に多いです。突発性難聴はひとつの病名です。突然聞こえにくくなる症状はほかの病気が原因のこともあります。

突発性難聴に対して薬の治療があり、大まかには3分の1ほどの人で聴力がほぼ元通りに回復します。3分の1は聴力が元よりは低い水準までですが回復します。その一方で、治療しても聴力が回復しない人もいます。難聴が残った場合に補聴器などを使っている人もいます。

突発性難聴は通常、良くなったり悪くなったりすることはなく、治療して聴力が回復すれば完治と言えます。もし突発性難聴の再発のように感じることがあれば、メニエール病などの原因も調べる必要があります。

2. 突発性難聴の症状は?

突発性難聴では以下の症状が出ることがあります。

  • 難聴
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 耳が詰まった感じ(耳閉感)

眠っているうちに突発性難聴が発生し、朝起きたら片方の耳が聞こえなくなっていることもありえます。

ただし、上の症状と一致すれば突発性難聴だとは限りません。似た症状はほかの病気で出ることも考えられるため、区別が必要です。たとえば難聴の症状は、突発性難聴以外にも以下の原因で起こることがあります。

このうち突然聞こえにくくなるものは以下です。

  • 急性中耳炎
    • 発熱や耳だれ()が出ることがあります。
  • 鼓膜損傷
    • 耳かき、耳をぶつけたなどで鼓膜が傷付きます。
  • 外耳道異物
    • 耳に物が詰まっています。耳垢が詰まっていることもあります。
  • 外耳道炎
    • 耳だれやかゆみが出ることがあります。
  • 外耳道損傷
    • 耳に傷がついています。
  • メニエール病
    • 激しいめまいの発作を繰り返します。
  • 外リンパ瘻
    • 鼻をかむなどで内耳に穴が開きます。
  • 流行性耳下腺炎
    • 耳の下が腫れる「おたふくかぜ」のあとで聞こえにくくなります。
  • ラムゼイ・ハント症候群
    • めまい、顔の半分が動かしにくい、耳の水ぶくれなどの症状があります。
  • 薬剤性難聴
    • 薬を飲んだり注射したあとで聞こえにくくなります。
  • 脳梗塞
    • 体を動かしにくい、感覚がおかしいなどの症状があります。

難聴の原因を見分けるには専門的な判断が必要です。上に挙げたような特徴は手がかりになる場合もありますが、自己診断しようとするよりも、耳鼻咽喉科などで診察を受け、気が付いた点があれば問診などの際に伝えることで、適切な治療を目指すための役に立てることができます。

「難聴」なのに耳鳴り?

突発性難聴で聞こえにくくなるのと同時に耳鳴りも聞こえることがあります。

難聴なのになぜ耳鳴りがするのか不思議に思えるかもしれません。実は一般的に難聴と耳鳴りは同時に起こりやすいのです。たとえばメニエール病では難聴と同時に低音の耳鳴りが聞こえる人がいます。

耳鳴りは正常な人に聞こえることもよくありますが、突発性難聴のような病気が隠れている場合もあります。耳鳴りの原因を耳鼻科で調べると難聴が見つかることはよくあります。

3. 突発性難聴の原因は?

画像:耳の断面図。音は外耳・中耳を通って内耳で神経の信号に変換され、蝸牛神経を通って脳に送られる。

突発性難聴の原因は不明です。いくつかの要素が原因に関係すると考えられています。

  • ウイルスの感染
  • 炎症
  • 血流障害
  • 免疫の異常

突発性難聴にかかりやすい人は、年齢が50代から60代の人です。もともと健康な人にでも突然発生します。

4. 突発性難聴の治療薬:ステロイド薬

突発性難聴の治療には、炎症や異常な免疫を抑えるステロイドの飲み薬または点滴が中心になります。

入院して、安静を保って点滴治療をすることが望ましいですが、外来でも突発性難聴の治療は可能です。

ステロイドとは?

医療用で使われているステロイド薬の多くは私たちの体内の副腎(ふくじん)という臓器から分泌されるコルチゾールというホルモンを元に造られたものです。突発性難聴に対して使われるステロイド薬としてプレドニン®プレドニゾロンなどがあります。

ステロイドの効果は?

炎症を和らげる作用など多くの有用な作用を持ち、アレルギー性疾患、自己免疫疾患など多くの病気や症状に対して使われています。突発性難聴の治療でも、ステロイド薬は主に内耳や神経の炎症を抑え、耳鳴りなどの症状を改善する目的で使われます。

ステロイド薬の使い方の注意点は?

ステロイド薬は、一般的には漸減(ぜんげん)またはテーパリングといって、最初にある程度の量のステロイド薬を使用し一般的には1-2週間程度かけて徐々に薬の量を減らしていく治療方法がとられます。漸減しながら使っているときは用量を守ることがとても大切になります。正しく漸減しないと、大きな副作用が出ることがあります。

突発性難聴でステロイド薬の副作用は出る?

ステロイド薬は高い有効性をもつ一方で、感染症高血糖などの副作用にも注意しなくてはいけません(コラム「ステロイド内服薬の副作用とは」で詳しく解説しています)。

ステロイド薬に注意すべき点は多いのですが、自己判断で中止したり量を変えて飲んだりすることは非常に危険です。これは他の病気であっても同様です。かえって病気が悪化したり、症状がぶり返したり、治りが遅くなったりする場合もあります。

突発性難聴の治療でステロイド薬を出されたときは、使用期間や使用中の注意点、副作用が出たときの対処など、処方医や薬剤師からよく話を聞いておき、適切に使って治療していくことが大切です。

妊婦や授乳中の女性がステロイド薬を使っても大丈夫?

ステロイド薬は、妊娠中でも治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には処方されることがあります。一般的には、ステロイド薬だけでなくほかの薬を使う上でも妊娠に対する影響を考えることは必要なので、妊娠しているか、妊娠の計画があるかといった点はあらかじめ医師に伝えてください。

授乳中には母乳に移行する可能性があり、使用中は授乳を止めるよう言われます。

5. 突発性難聴の治療薬:ベタヒスチンメシル酸塩

ベタヒスチンメシル酸塩(商品名:メリスロン®など)は、抗めまい薬とも呼ばれる薬です。内耳や脳の血流を改善し、突発性難聴によるめまいに効果をあらわします。

ベタヒスチンメシル酸塩の副作用は?

ベタヒスチンメシル酸塩の副作用が出ることは非常にまれですが、吐き気などの消化器症状がありえます。胃潰瘍などを持病で持っている人は特に、突発性難聴でベタヒスチンメシル酸塩を使っていて吐き気が出たら医師や薬剤師に相談してください。

6. 突発性難聴の治療薬:ジフェニドール塩酸塩

ジフェニドール塩酸塩(商品名:セファドール®など)は、抗めまい薬とも呼ばれる薬です。前庭神経の血流を改善する作用、脳や神経の異常な信号を抑える作用により、突発性難聴のめまいや耳鳴りの症状に効果が期待できます。

ジフェニドール塩酸塩の副作用は?

ジフェニドール塩酸塩の副作用として、口が渇く食欲不振などのほか、非常にまれですが、排尿障害や眼圧の変化なども起こる可能性があります。緑内障前立腺肥大などの持病がある人はこれらの副作用により悪化する恐れがあるので、持病についてはあらかじめ伝えたうえ、万一使用中に症状の悪化などを感じた場合には医師や薬剤師に相談してください。

7. 突発性難聴の治療薬:アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)製剤

アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)製剤(商品名:アデホストリノシン®など)は、血管拡張により血流を改善し、脳や内耳の代謝を促進したり、神経伝達の効率を改善したりすることで、突発性難聴のめまいや耳鳴り・難聴を改善します。アデホスの注射剤(アデホス-Lコーワ注)などは耳鳴りと難聴に対して保険適用があります。

実際に多くの人が使っているのはアデホスコーワ顆粒などの顆粒剤です。

ATP製剤は全体に飲み合わせや安全性の問題がかなり少ないこともあり、耳鳴りやめまいの再発予防薬として長期的に飲む人も多い薬です。

8. 突発性難聴の治療薬:ニセルゴリンなど

脳の血液循環を改善する薬は、脳に栄養や酸素が送られやすくすることで、突発性難聴の症状を改善します。

ニセルゴリン(商品名:サアミオン®など)は脳循環の改善作用をあらわす薬です。

イフェンプロジル酒石酸塩(商品名:セロクラール®など)は血管を広げることで脳血流を増加させ循環を改善する他、血液が固まるのを抑える作用があります。

イブジラスト(商品名:ケタス®など)は血管を広げる作用、炎症を抑える作用、血液が固まるのを抑える作用、神経を保護する作用などがあり、脳の循環障害によるめまい、ふらつき、立ちくらみの改善が期待できます。

9. 突発性難聴の治療薬:ニコチン酸アミド・パパベリン塩酸塩配合錠

ストミンA®配合錠(商品名)には2種類の有効成分が配合されています。

ニコチン酸アミドは、内耳の細胞の機能を改善します。パパベリン塩酸塩は、内耳の血流を改善します。この2種類の作用により、内耳や神経に原因がある突発性難聴の耳鳴りに対して効果が期待できます。

ストミンA®配合錠で副作用が起こることはまれとされますが、眠気頭痛などの精神神経系症状や、便秘口の渇きなどの消化器症状には注意が必要です。

10. 突発性難聴に対するステロイド鼓室内注入療法とは?

ステロイド鼓室内注入療法は、鼓膜に小さい穴を開け、鼓膜の奥にある鼓室(こしつ)という空間にステロイド薬を注入する治療法です。

ダメージを受けている部分に近い場所から直接ステロイド薬を届かせることで、飲み薬や点滴で全身に行き渡らせるよりも効率的に治療する狙いがあります。

ステロイド鼓室内注入療法はもともとは子どもの中耳炎に対して行われていた治療法です。突発性難聴に対しては、標準的な治療であるステロイドの飲み薬や点滴で効果がみられない場合の選択肢として考えられます。

穴を開けた鼓膜は1ヶ月程度で自然に塞がります。

11. 突発性難聴に補聴器は有効か?

突発性難聴の治療後に軽度の聴力低下が残った場合、補聴器で改善できる可能性があります。

補聴器は原理から伝音性難聴に適しているとされます。突発性難聴感音性難聴なのでこの条件には合わないのですが、実際には感音難聴で補聴器を使っている人もいます。

人工内耳とは?

人工内耳は、手術で体に埋め込むことで高度の難聴を改善する装置です。体の外で音を集める部分と、埋め込んで脳に信号を送る部分からできています。有効性には個人差があります。また、聞こえるようになるまでにリハビリテーションが必要です。日本でも使われています。

12. 突発性難聴の薬はいつまで続ける?

突発性難聴を薬で治療すると、3分の1の人は聴力が元通りに回復します。治れば薬をやめることができます。

治療開始した人の約半数は10日以内に症状が改善し始めます。症状が始まって2ヶ月から3ヶ月の時点で聴力が固定し、それよりあとは治療を続けても変化が少なくなります。

聴力低下が残った場合の治療については研究も行われていますが、不明な点も多く残されています。

突発性難聴の回復の程度には個人差があり、治療してみなければ予測しきれない面もあります。実際の状況に応じて何ができるかを主治医とよく話し合ってください。