たばこごいん
たばこ誤飲
たばこを誤って飲み込んでしまうこと。ニコチン中毒の原因となることがある
12人の医師がチェック 109回の改訂 最終更新: 2018.03.01

たばこ誤飲の基礎知識

POINT たばこ誤飲とは

たばこ、あるいはタバコが浸かっている液体を飲み込んでしまうことです。ニコチン中毒の原因となる場合があります。子どもの誤飲事故の中ではたばこ誤飲が最多と言われています。通常は誤飲してもタバコを吐き出すので、重い症状をきたすことは多くありません。ただし、タバコが浸かっている液体を飲み込んでしまうと、ニコチンが速やかに吸収され、急激(誤飲後15分以内)に吐き気、下痢、めまい、蒼白くなる、不機嫌になるなどの症状が見られ、重篤な場合には意識が無くなる、呼吸が荒くなる、不整脈が出現する、などが見られる場合があります。治療としては、まずは誤飲したものを吐かせますが、吐いたものが肺の方に入ってしまうと肺炎を起こすので、数回試してみても吐かない場合にはムリに吐かせることは諦めましょう。医療機関での治療としては、ニコチンを解毒する薬は存在しないので、慎重に様子をみることとなります。数時間様子をみても目立った症状がなければ問題ありません。重症で呼吸が止まりそうになっている場合などは人工呼吸器を使用するなど、症状に合わせた治療を行います。たばこを誤飲してしまって医療機関を受診する場合には、小児科か救急科を受診してください。

たばこ誤飲について

  • たばこを誤って飲み込んだ状態
    • 小児の誤飲事故の中で最多
    • 特に6-11か月で多い
    • 年間約6000件の問い合わせがある
    • 厚生労働省が公表しているデータ(平成20-24年)では、タバコを誤飲して死亡したという報告はない
  • たばこに含まれるニコチンにより中毒症状が現れることがある
  • たばこに含まれるニコチンの致死量
    • 成人で2-3本分、乳幼児で約1本分
    • たばこのパッケージに記載されているニコチン量は、火をつけたたばこから出る煙の中に含まれている量であり、実際の含有量よりも少ない
  • ニコチンは体内で吸収されるのに時間がかかる
    • ニコチンにより嘔吐が起きるため、重篤な症状が出る前に吐き出されてしまうことも多い
    • タバコのまま誤飲した場合は30分から数時間、タバコが浸された液体を誤飲した場合は15分以内くらいで症状が出現する
  • たばこを液体に浸すとニコチンが溶け出す
    • たばこが浸された液体を誤飲すると、吸収が早くなり中毒症状を来す可能性が高くなる ※漂白剤や洗剤の誤飲の場合は牛乳や水分の経口摂取が有効だが、たばこ誤飲では避ける

たばこ誤飲の症状

  • 中毒症状は約14%でみられる
    • 実際には誤飲する量自体が少なく、ニコチンにより嘔吐が誘発されることなどから、中毒症状を来す割合は高くない
  • 誤飲10-60分以内に嘔吐から始まり、約4時間以内に様々な症状が出現する
    • 吐き気、嘔吐
    • 唾液が増える
    • 腹痛
    • 下痢
    • 興奮
    • 手足が震える
    • 冷や汗
    • めまい
    • 視力障害
    • 呼吸が荒くなる
  • 誤飲から4時間経過した時点で症状がなければ、安全と考えて良い
  • 重症では呼吸困難やけいれんなどがみられるが、重症化することはきわめてまれ

たばこ誤飲の検査・診断

  • 保護者の目撃情報や口の中のたばこなど状況から判断する
  • 通常の医療機関では検査で診断することはない
  • 可能性が少しでもある場合は、誤飲したと仮定して必要な対処を行う

たばこ誤飲の治療法

  • ニコチンに対する拮抗薬や解熱薬はない
  • たばこ誤飲に気づいたら、可能な限り吐かせる
  • 胃洗浄の必要性については議論が分かれる
    • 生命に関わるような症状が出ている場合や飲み込んでから1時間以内など、一定の条件を満たした場合にのみ行うことが多い
    • 治療によるメリットとデメリット(電解質異常誤嚥性肺炎などの副作用)のバランスから総合的に必要性が判断される
  • 活性炭の経口摂取が有効と言われている
  • 重症の場合は生命維持のための対症療法が行われる
  • 「乳幼児は手に持ったものを口にするもの」と考えて、保護者が予防対策をとることが最も重要
    • 乳幼児の手の届くところにたばこや吸い殻を置かない
    • 特にジュースの空き缶などに水を入れて灰皿代わりにするのは避ける

たばこ誤飲の経過と病院探しのポイント

たばこ誤飲が心配な方

誤ってたばこを飲み込んでしまうと、ニコチンによる中毒症状が認められることがあります。理論上、相当な量を飲み込んだ場合に致死量に至る可能性はありますが、日本では死亡例はありません。たばこ誤飲の症状として、口内の痛み、発汗、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、めまい、けいれんなどがありますが、たばこを誤飲した後でも症状がでない場合が半分程度あります。

最も多い症状は嘔吐ですが、それによって胃の中にあるたばこ成分が外部へ吐き出されます。たばこそのものを飲み込んだ場合にはこのような経過で軽症で済む場合が多いのですが、例えば中身の残った空き缶に吸い殻を入れていて、誤ってその液体飲み込んでしまった場合などには注意が必要です。液状のニコチンの方が体内への吸収が早くなるため、速やかな医療機関の受診が勧められます。ただしその場合であっても特別な治療は必要ない場合が大半です。

ご自身またはご家族がたばこを誤飲してしまった時、最初に受診するのは救急科や小児科などのクリニックが適しています。症状が無いまたは軽度の場合は、総合病院ではなく、クリニックで対応可能なことがほとんどです。お子さんが通院している小児科があれば、まず相談してみるのもいいでしょう。

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たばこ誤飲でお困りの方

たばこ誤飲では、誤飲から2-4時間経過後も吐き気やけいれんなどの症状が特に現れない場合は、特に治療の必要はありません。そもそも飲み込んだ量が少なかったり、ニコチンの作用によって嘔吐が生じ、既に大部分を吐き出したりしてしまっていて、大事には至らないことが多いです。しかし、症状があるかの診察等も含めて念のため、受診することがすすめられます。

たばこ誤飲による症状が認められ、重症化する可能性が考えられる場合などは、活性炭という物質を飲んだり、鼻からチューブを入れて胃の中に水を出し入れし胃を洗浄する治療を行うことがあります。このような治療は総合病院の救急科で行いますので、症状が心配であれば、こちらの受診がすすめられます。

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