めちしりんたいせいおうしょくぶどうきゅうきんかんせんしょう
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)
黄色ブドウ球菌の中でも通常の抗菌薬が効きにくい特徴(耐性)をもったものをMRSAといい、この細菌による感染症をMRSA感染症のこと
6人の医師がチェック 53回の改訂 最終更新: 2019.07.08

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)の基礎知識

POINT メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)とは

黄色ブドウ球菌の中でも、本来有効であるはずのメチシリンという抗菌薬が無効であるものをメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)といい、MRSAが感染を起こした状況のことをMRSA感染症といいます。黄色ブドウ球菌は蜂窩織炎・感染性心内膜炎・胃腸炎・髄膜炎・肺炎などを起こしますので、それぞれの病気で現れやすい症状が出ます。 感染してる部位の組織や分泌物を培養することで診断します。治療には特殊な抗菌薬を使用します。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症が心配な人や治療したい人は、感染症内科を受診して下さい。

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)について

  • MRSAという、通常の抗菌薬が効きにくい特徴(耐性)をもった細菌による感染症
    • 「MRSAによる感染症」というだけであり、MRSA感染症という一つの病態があるわけではない
  • 抵抗力が弱くなった患者に起こりやすい

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)の検査・診断

  • 症状や画像検査(レントゲンCT検査)、患者の痰や血液などの培養検査などを総合して診断する
    • 血液に感染(菌血症)を起こした場合は重症になるので、どの部位で感染が起こっていても血液培養は必ず確認する
  • 心臓エコー検査もとても重要である
    • 血液に感染(菌血症)を起こしている場合は、心臓に菌の塊(疣贅)を作ってしまうことがある

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)の治療法

  • その他の細菌が原因の感染症よりも治療に難渋することが多い
    • 血液に感染(菌血症)を起こしている場合は、心臓に菌の塊(疣贅)を作ってしまうことがあるので、治療の効果があるのか確認しながら治療することが重要
    • 感染性心内膜炎になっている場合は、治療期間が4週間以上と長期間になる
  • MRSA治療薬と呼ばれる、以下のような抗菌薬を用いて治療する(一部のみ列挙)
    • バンコマイシン
      • 過去の治療データが最も豊富であるため信頼性が高い
      • 血液中の薬物濃度を測定することで、効果と副作用のバランスを図ることができる
    • テイコプラニン
    • リネゾリド
      • VRSA(バンコマイシンに耐性をもつ黄色ブドウ球菌)にも有効であるためとても貴重である
      • 不必要な使用は控えるように学会声明が出されている
    • アルベカシン
    • リファンピシン
    • ST合剤

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)に関連する治療薬

グリコペプチド系抗菌薬

  • 細菌の細胞壁合成を阻害し細菌を殺すことで抗菌作用をあらわす薬
    • 細胞壁という防御壁をもつ種類の細菌は、細胞壁が作れないと生きることができない
    • 細胞壁を構成するタンパク質にペプチドグリカンというものがある
    • 本剤はペプチドグリカンが生成される前段階の物質に作用し細胞壁合成を阻害することで抗菌作用をあらわす
  • 本剤は特にMRSA感染症などに対して有用とされる抗菌薬
グリコペプチド系抗菌薬についてもっと詳しく

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)の経過と病院探しのポイント

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症(MRSA感染症)でお困りの方

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症MRSA感染症)は、MRSAと呼ばれる特殊な菌が原因で起きる様々な感染症の総称です。具体的には肺炎蜂窩織炎髄膜炎骨髄炎など様々な感染症でMRSAが原因となります。

MRSAとは、黄色ブドウ球菌と呼ばれる菌のうち一部の抗生物質(メチシリンとその類縁)が効かなくなったものを指します。(MRSAではない)黄色ブドウ球菌そのものは本来あまり病原性の高くない菌ですし、それはMRSAも同様です。

通常の人は黄色ブドウ球菌であろうとMRSAであろうと、病原性の低いこれらの菌によって体調を損なうことはまれです。しかし、もともと心臓や肺の病気を持っている方やご高齢の方などで特に、MRSA感染症が問題となります。一旦MRSAにかかると、効果がある抗生物質が限られてしまうためです。

以前はMRSAに効果的な抗生物質が少なかったため問題となりやすい感染症でしたが、現在では多くの種類の効果的な抗生物質が開発されています。内服薬もありますが点滴製剤が多く、皮膚のMRSA感染症を除けば入院の上で治療が行われることが多いです。

MRSA感染症で最も問題となるのは、MRSAが他の抗生物質に対しても耐性をもってしまうことです。抗生物質の内服を途中で止めたり、使用量や使用間隔などを正しくしないと徐々に効かない抗生物質の種類が増えていってしまいます。MRSAもそのようにして生まれた菌ですし、MRSAがそれ以上に耐性化しないよう、適切な治療が行われる必要があります。

さて、このような背景がありますので、病院を探す上で重要なのは抗生物質の適切な利用ができる病院であることです。そもそもクリニック(無床診療所)では入院治療が行えませんので、大半の場合は入院施設のある病院での治療となるでしょう。MRSAによる肺炎ならば呼吸器内科、MRSAによる蜂窩織炎ならば皮膚科、MRSAによる髄膜炎ならば神経内科など、入院先の診療科は病名によって異なります。

その一方で、MRSAが原因菌だと判明するのはおそらく病院が決まって入院した後のことでしょう。またMRSA感染症については、診断がつき次第その場で治療が開始されますし、治療の方法にもバリエーションが少ないため、どこでどのような治療を受けるか迷う余地は少ない病気かもしれません。MRSAは抗生物質が効きにくいため、治療が長引くことがあります。退院後も内服薬で治療を続けなければならないことがありますが、抗生物質の必要な期間や、なぜ長期間必要なのかなど、しっかりと説明を受けられる主治医を見つけ、ご自身で納得した上で治療を受けることが重要です。

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