はいけっしょうせいしょっく
敗血症性ショック
感染症の結果として起こる全身の炎症状態が原因で、血圧の低下を伴う重篤な状態のこと
9人の医師がチェック 150回の改訂 最終更新: 2021.11.23

敗血症性ショックの基礎知識

POINT 敗血症性ショックとは

医学的に「ショック」とは、全身の血流の循環が急にうまくいかなくなり、大事な臓器や細胞に必要な酸素を十分に届けられなくなり、その結果として生じる様々な異常を伴った状態を指します。ショックの場合、ほとんどのケースで血圧は低下します。また、敗血症とは、本来無菌であるはずの血液中に菌がいること(菌血症)によって全身に強い炎症が起きている状態を指します。敗血症が重症になって、容易に血圧が上がってこないような状態を敗血症性ショックと呼びます。敗血症性ショックの症状としては、熱が出る、脈や呼吸が荒くなる、意識がぼんやりする、などが見られます。診断は病歴聴取に加えて、体温測定、脈拍や血圧や呼吸数の確認、採血検査などで行います。生命の危険がある状態であることは間違いないため、治療は直ちに入院して行なう必要があります。抗菌薬や水分の点滴が治療の中心となりますが、人工呼吸器などが必要になるケースも少なくないので、集中治療室での治療もしばしば検討されます。通常はいきなり敗血症になることはなく、例えば肺炎が悪化して敗血症性ショックに進んでしまう、のように敗血症性ショックには肺炎のような原因があることが多いです。原因が分かっている場合にはその病気の専門科や救急科、不明な場合には救急科で治療を行なうことが一般的です。集中治療も必要に応じてできる総合病院を受診するのが望ましいです。

敗血症性ショックについて

  • 感染症による全身の炎症が原因で血圧が低下し、脳や腎臓など全身の重要な臓器に酸素が行き渡らなくなる重篤な状態のこと
    • 体内の病原体が増えて血液中や全身に広がると、血液中の水分が血管の外に漏れ出すなどして血圧が低下する
    • 様々な種類の感染症も原因となる
  • 敗血症性ショックを起こしやすい人
    • 新生児
    • 高齢者
    • 妊婦
    • 免疫力が低下した人
      • 免疫抑制療法を行っている
      • がんHIV感染症、免疫の病気がある
    • 人工の医療機器が体内と外部をつないでいる状態
      • 静脈カテーテル
      • 尿道カテーテル
      • 人工呼吸器
  • 重症化して播種性血管内凝固DIC)や多臓器不全(MOF)が起これば、治療による回復の可能性が低く致命的となる

敗血症性ショックの症状

  • 全身の炎症による症状
    • 発熱(むしろ低体温になるケースもある)
    • 脈が早くなる
    • 呼吸が荒くなる
  • ショック症状
    • 血圧が低下する
    • 尿が出なくなる
    • 注意力の低下や意識状態の変化
    • 手足が冷たくなる

敗血症性ショックの検査・診断

  • 感染症の有無や原因の特定
    • 細菌検査:血液、尿、痰などを調べて菌の有無や原因菌の特定を行う
    • 血液検査:炎症反応や臓器障害の状態を調べる
    • 画像検査:CTなどの画像検査を行い、感染が生じている臓器の状態を調べる
  • 心臓の検査:心臓の機能の低下によりショックが起こることがあるため検査がしばしば必要になる
    • 心臓超音波心エコー)検査
    • 心電図

敗血症性ショックの治療法

  • 救命のための処置と感染の治療(抗菌薬の投与)をなるべく早く行うことが重要
  • 救命のための処置
    • 大量の輸液:血管中の水分量を増加させて、血圧を上昇させる
    • 血圧を上昇させるため、血管を収縮させる薬物(ノルエピネフリンやバソプレシン)を使用する
    • 上記治療を行っても血圧が上がらない場合は、ステロイド(ハイドロコルチゾン)の使用が検討される
    • 酸素療法:体の酸素不足を補う
    • 人工呼吸器:呼吸を補助する
    • アフェレーシス(血漿の中から特定の物質を取り除く治療):炎症の調整因子であるサイトカインを取り除く
  • 原因となった感染症に対する治療
    • なるべく早い段階から、幅広い菌に効く抗菌薬を用いる
    • 入院中でカテーテルを使用しているなど、感染の原因になり得るものを取り除いたり交換したりする
    • 肺やおなかの中に感染の原因となるが溜まっている場合は、膿を取り除く処置を行う
  • 死亡率は元となる感染症や報告によって様々だが、全体で20-40%と高い
    • 良い治療結果を得るためには早期(疑われてから6時間以内)に積極的な治療が開始することが重要とされる

敗血症性ショックの経過と病院探しのポイント

敗血症性ショックが心配な方

敗血症とは、何らかの感染症が悪化して全身に菌が広がってしまった状態を指します。敗血症性ショックは、そのさらに重症の状態です。元の感染症は肺炎だったり、膀胱炎だったり様々です。敗血症性ショックを主に診療する診療科は、あえて挙げるとすれば救急科なのですが、肺炎であれば呼吸器内科、膀胱炎であれば腎臓内科など、それぞれの科で行われることも多いです。

敗血症性ショックに陥っている状態であれば、意識がもうろうとしたり、ぐったりして自力で病院を受診するのが難しい状態だと考えられます。このような場合には救急車で受診することになるでしょう。救急隊は、近さや病院の専門性を考慮した上で、救命救急センターのような高度医療機関など、適切な病院を判断し案内してくれます。

ICU (intensive care unit), HCU (high care unit) と呼ばれるような集中治療室に入院となるケースが多いです。敗血症性ショックの診断のために行われる検査は、血液検査、尿検査、レントゲン、CT、MRIなど、元となる感染症によって様々です。

敗血症性ショックは、2000年頃まで死亡率40-50%と言われていました。近年は治療の知見がたまってきて死亡率は劇的に(半分近く)低下しましたが、それでも命に関わることが多い重症の状態です。原則として、ある程度の医師数がいる総合病院での治療が望ましいと言えます。ICUがあるような病院であればより適切ですが、治療に一刻を争う病状でもありますので、遠くの専門病院を受診するよりは、とりあえず近くの病院で初期治療を行うことが重要です。救急車もそのような判断基準で搬送先を選定します。通常の病気であれば、1日や2日の治療の遅れが命に関わることはありませんが、敗血症性ショックは、数時間単位での差がその後を左右します。

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