がいしょうせいくもまくかしゅっけつ
外傷性くも膜下出血
頭部外傷(頭のケガ)が原因で、脳を包んでいる「くも膜」の内側に出血が広がった状態
13人の医師がチェック 155回の改訂 最終更新: 2020.07.18

外傷性くも膜下出血の基礎知識

POINT 外傷性くも膜下出血とは

交通事故やスポーツ、転落事故などで頭部を強くぶつけたことによって脳の血管がダメージを受け、脳を包んでいる「くも膜」という膜の内側で出血が広がっている状態を指します。一般的に有名な「くも膜下出血」はケガが原因ではなく、脳動脈瘤が破裂することによって起こり、外傷性くも膜下出血とは原因や治療法が大きく異なります。外傷性くも膜下出血の症状は、出血の程度や合併している脳挫傷(のうざしょう)の程度によって異なります。ほとんど症状が出ないケースもあります。症状が出る場合には頭痛や吐き気、意識がぼんやりする、痙攣する、手足が麻痺するなどが起こりえます。診断は頭部CT検査によって行なうことがほとんどです。治療としては脳のむくみを抑える点滴や、その他必要に応じて鎮痛薬や抗けいれん薬などを使用します。軽症であれば手術などの大掛かりな治療は行いません。頭蓋骨の中で圧が高くなりすぎて危険な場合には手術を行なうこともありますが、まれです。外傷性くも膜下出血が心配な方や治療したい方は脳神経外科や救急科を受診してください。

外傷性くも膜下出血について

  • 頭をぶつけたことが原因で、脳を包んでいる「くも膜」の内側に出血が広がった状態
    • スポーツや交通事故、高い所からの転落などによる、頭部外傷が原因で起こる
    • 一般的に有名な「くも膜下出血」の原因は脳動脈瘤の破裂で、脳卒中の一種である。「外傷性くも膜下出血」とは原因、治療法が異なる
    • 外傷性くも膜下出血では、脳挫傷合併していることがよくある

外傷性くも膜下出血の症状

  • けがをした直後から現れる症状
    • 頭痛
    • 嘔吐
    • 意識障害    など
  • 脳挫傷による症状
    • 麻痺(通常片側に出現する)
    • 感覚の障害(通常片側に出現する)
    • けいれん
    • 意識障害
    • 高次機能障害    など
  • 出血は少量であっても、脳の深部(脳幹)が損傷を受けると命に関わることがある

外傷性くも膜下出血の検査・診断

  • 頭部CT検査くも膜下出血の有無、骨折の有無、脳挫傷の有無などを詳しく調べる
    • 造影剤を使うと動脈の状態を詳しく検査できる(3D CT アンギオグラフィー)
  • 頭部MRI検査:状態が落ち着いているときに脳挫傷があるかどうかや、脳の動脈の状態(脳動脈瘤や脳血管奇形がないかなど)を調べる
    • まずは頭部CT検査で診断することが多い

外傷性くも膜下出血の治療法

  • 動脈瘤破裂によるくも膜下出血と異なり、基本的には手術は行われない
    • 血液は自然に吸収されるため、軽症の場合は特別な処置は不要
    • 症状に応じて酸素吸入、人工呼吸器の使用、鎮痛薬、鎮静薬、解熱薬、抗けいれん薬など、症状に合わせて対症療法が行われる
  • 出血量が多い場合や、合併する脳挫傷によって頭蓋骨の内側の圧が上昇している場合は、それに対する治療が行われる
    • 利尿薬(マンニトール、グリセオール)で頭蓋内圧を下げる
    • 出血の影響で脳脊髄液の流れが悪くなり、正常圧水頭症の原因となることがある
  • 経過は合併する脳損傷(脳挫傷びまん性軸索損傷)の有無と程度によって異なる
    • ほとんど後遺症の残らない場合や、職場復帰できるまでに回復する場合もあるが、重い後遺症が残ることもある
    • 後遺症の例:意識が回復しない、てんかん症候性てんかん)、手足の動かしづらさ、など

外傷性くも膜下出血の経過と病院探しのポイント

外傷性くも膜下出血が心配な方

外傷性くも膜下出血は、頭を強く打ったときに生じます。症状は頭痛や嘔吐、意識障害などがありますが、同じように頭部の打撲で発症する脳しんとう脳挫傷といった病態と症状から区別がつかず、頭部のCTを撮影しないと診断をつけることができません。

脳しんとう脳挫傷、(外傷性)くも膜下出血の原因がいずれであったとしても、頭を強く打ち付けて症状がある場合には脳外科、もしくは救急科の外来を受診しましょう。意識がなかったり、多少あってもぼんやりとして適切な会話、受け答えができないような場合には救急車を呼んで受診してください。

くも膜下出血の診断はCTで行います。国内の総合病院であればほとんどのところにCTの設備がありますので、診断のために特別な病院を選択しなければならない、ということはありません。

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外傷性くも膜下出血でお困りの方

外傷性くも膜下出血の場合は、軽症であれば上述の通り特別な治療(手術など)は不要です。特に症状がなくたまたま見つかっただけのくも膜下出血であれば、自然に血液が吸収されるのを待つだけで改善が見込めます。

一方で、くも膜下出血で後遺症が残ってしまった場合、長期間のリハビリテーションが必要となります。後遺症が大きく一人で日常生活を行うことができないような場合には、急性期病院から回復期病院(リハビリ病院、療養型病院)に転院して、リハビリに専念することになります。

急性期病院にも一般的にリハビリの施設はついていますが、回復期病院の方がリハビリに専念しやすい環境が整っています。一緒にリハビリを行うことになるのは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったスタッフです。患者さん一人あたりのスタッフ数や、リハビリ設備(リハビリ室や器具)の充実度といったところが病院を選ぶ上で参考になります。リハビリの回数が1日1回なのか、それとも午前と午後で2回あるのか、1日に受けられるリハビリの総時間、土日はどうかといった点は、回復期の病院を探す上でのポイントとなります。

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