おうねつ
黄熱
黄熱病ウイルスを持った蚊に刺されることで起こる感染症。主に中南米、アフリカで流行している
3人の医師がチェック 51回の改訂 最終更新: 2018.02.28

黄熱の基礎知識

POINT 黄熱とは

黄熱病ウイルスを持った蚊に刺されることで感染する病気です。日本国内で発症することはなく、アフリカや中南米で流行しています。軽症の場合の症状は発熱・頭痛・嘔吐などですが、重症の場合は発熱・頭痛・めまい・黄疸・出血・せん妄などになります。 血液中の黄熱病ウイルスに対する抗体やウイルスの遺伝子を確認して診断します。治療には特効薬はありませんが、症状が強い場合は症状を和らげる治療(対症療法)を行います。黄熱が心配な人や治療したい人は、感染症内科を受診して下さい。

黄熱について

  • 黄熱病ウイルスを持った蚊に刺されることで起こる感染症。主に中南米、アフリカで流行している
    • 黄熱病ウイルスは日本脳炎と同じフラビウイスル属のウイルス
    • 黄熱病ウイルスをヒトに移すのはネッタイシマカ
  • 1年あたり約20万人程度がアフリカ地域、アメリカ地域で感染している
    • アフリカ地域:アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、カメルーン、ガーナなど
    • アメリカ地域:アルゼンチン、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、ペルー、パラグアイなど
    • アジアと太平洋地域には存在しない
  • 一度黄熱にかかり、回復すると、生涯にわたり黄熱に再びかかることはない(終生免疫
  • 予防接種で予防することができる
  • 野口英世が黄熱の研究を行っている最中に、黄熱にかかって病に倒れたことが有名である

黄熱の症状

  • 症状が出ない無症候性の場合から、死亡に至る場合まである
  • 潜伏期間は通常3-6日
  • 軽症黄熱
    • 発熱と頭痛が突然起こる
    • 他に、頭痛、発熱、悪心、嘔吐、結膜充血、蛋白尿
    • 1-3日で回復する
  • 重症黄熱
    • 感染期、寛解期、中毒期の3段階に分けられる
    • 急な発熱、頭痛、めまい、高熱で発症する
    • 黄疸
    • 出血:鼻出血、歯肉出血、下血など
    • 嘔吐
    • 眼の充血
    • せん妄

黄熱の検査・診断

  • 白血球の減少の有無を血液検査で確認する
    • 白血球の中でも特に好中球が減少する
  • 肝臓の機能を血液検査で確認する
    • ビリルビンの上昇
    • ASTやALTの上昇
  • 出血しやすくなっていないかを身体診察で確認する
    • 皮膚のあざなど
  • 血液中の黄熱病ウイルスを検出する
  • 血液中の黄熱病ウイルスに対する抗体を検出する

黄熱の治療法

  • 特別な治療がなく、症状を軽減するための対症療法(症状を和らげる治療)が行われる
    • 生命維持のための補液
    • 発熱に対して解熱剤
    • 消化管出血に対して胃薬など
  • 予防法
    • 流行地に行く前に予防接種を受けることが望ましい
      • 黄熱病ワクチンを接種できる医療機関は限られており、接種する場合には事前に確認が必要である
      • 厚生労働省検疫所(FORTH)では黄熱ワクチンに関する情報を公開している
    • 流行地域で蚊に刺されないよう注意する
      • 防虫剤や長袖の服を着て露出を避けるなど

黄熱の経過と病院探しのポイント

黄熱が心配な方

黄熱はアフリカおよび南米で流行している感染症です。国内で感染することはありませんが、これらの流行地域から帰国後の方で頭痛発熱などの症状があれば可能性があります。

ご自身が黄熱でないかと心配になった時には、もしお近くに感染症科のある病院や、感染症専門医のいる病院があるのであれば、そのような病院を受診されるのが適切でしょう。黄熱そのものが国内では珍しいこともあり、慣れている医師でないと診断をつけることが困難です。受診の際には、いつからいつまでどこに旅行をしていたかを医師に伝えてください。

経過や症状からある程度疑うことはできても、特殊な検査を行わないと黄熱であるという診断はつけられません。ご自身が黄熱にかかっているかもしれないという心当たりがあれば、まずは受診前に病院に電話で相談なさることをお勧めします。病院によっては、そのような感染の疑いがあるという時点で、その施設では対応できないために他の大きな病院を紹介されるということがあります。

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黄熱でお困りの方

黄熱は国内では見られない疾患であり、正しく診断をつけることがまず困難を伴います。しかし、診断がついたとしても特効薬があるわけではなく、基本的には入院の上で対症療法が行われます。重症化した場合には、集中治療室で人工呼吸器や様々な点滴薬を使用しながら、できる限りの治療を行います。

医療機関によって治療可能な水準が異なるため、中小規模の病院であれば、診断が黄熱だと判明した時点で(またはその疑いが生じた時点で)総合病院へ転院の上で治療となることがあります。

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