れじおねらはいえん
レジオネラ肺炎
非定型肺炎のと呼ばれる特殊な肺炎の一種。温泉などの水の中で繁殖したレジオネラ菌を吸い込むことで起こり、重症化しやすい
7人の医師がチェック 117回の改訂 最終更新: 2022.02.05

レジオネラ肺炎の基礎知識

POINT レジオネラ肺炎とは

レジオネラ肺炎は非定型肺炎、細菌性肺炎の一種です。温泉や循環式浴槽などに使われる水の中でレジオネラ菌が繁殖し、それを吸い込むことで感染するため、ときに集団感染を起こすことがあります。発熱・頭痛・筋肉痛が現れてから、咳・胸痛・頭痛・けいれん・腹痛・下痢などが現れます。重症になることが少なくなく、重症の場合は、意識障害・けいれん・幻覚などが現れることもあります。 レジオネラ肺炎の検査としては、肺炎の存在を胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査で確認してから、尿検査や痰の塗抹・培養検査を行ってレジオネラ菌の存在を確認します。治療には抗菌薬(ニューキノロン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬など)を用いますが、重症化して人工呼吸器治療が必要なほどになることもありますので、症状が強い場合には躊躇わずに呼吸器内科や感染症内科を受診するようにしてください。

レジオネラ肺炎について

  • レジオネラ属の細菌が原因となる肺炎の一種
    • レジオネラ属の細菌は自然界に広く生息している
      • 循環式浴槽や温泉施設、空調装置などに使われる水の中で繁殖する
      • レジオネラが繁殖している機械から出る細かい水滴を吸い込むと感染する
      • 集団感染することがある
    • 人から人へは感染しない
  • レジオネラ肺炎は細菌性肺炎の中でも特に重症になりやすい
    • 肺炎に至らないポンティアック熱もレジオネラが原因だが、ポンティアック熱はかぜのような症状だけで自然に治る
    • レジオネラは心臓に感染して心筋炎などを起こす場合もある
  • 人工透析をしている人、アルコール依存のある人、喫煙者、肺気腫COPD)のある人、高齢者は感染しやすい

レジオネラ肺炎の症状

  • 感染したあと2日から10日ほどは潜伏期間となり症状が出ない
  • 初期症状
    • 全身のだるさ
    • 頭痛
    • 食欲不振
    • 筋肉痛
  • 肺炎の症状
      • 初期は痰が少ない
      • 鼻水などのかぜ症状は出にくい
    • 高熱(40℃を超える場合も多い)
    • 寒気
    • 胸痛
    • 息切れ
    • 胸水
  • 中枢神経症状
    • 頭痛
    • 意識障害:うとうとしがちになったり、ぼーっとする
    • 幻覚
    • けいれん
    • 中枢神経症状は他の細菌性肺炎ではあまり見られず、肺炎の中ではレジオネラ肺炎に特徴的な症状
  • 胃腸の症状
    • 腹痛、嘔吐
    • 下痢
  • 低ナトリウム血症が起こることがある
    • 頭痛
    • 食欲不振
    • 意識もうろう

レジオネラ肺炎の検査・診断

  • 画像検査:肺の中にレジオネラ肺炎を疑う影があるかを調べる
    • 胸部レントゲンX線写真)検査
    • 胸部CT検査
  • 尿検査:肺炎の原因がレジオネラ菌であることを確かめる
    • 尿検査ではレジオネラ属の中でも一部の種しか見つけられないため、陽性であれば信頼度は高いが陰性であってもレジオネラ肺炎の可能性は否定出来ない
  • 細菌検査:のどや痰、血液から菌の有無と種類を調べる
    • 採取した検体を使い、顕微鏡で調べたり細菌培養を行う
    • レジオネラ科の細菌を培養するには特別な培地(BCYEα寒天培地)を使って3日以上かける必要がある
    • 培養結果にもとづいて、抗菌薬の種類選択に役立てる
  • 診断そのものに時間がかかったり困難だったりすることも多いため、強く疑われる場合にはレジオネラ肺炎であることが確定する前に抗菌薬治療を始めることが多い
    • 治療開始が遅れると病状が進行して治療しにくくなるため
    • その一方で、初期にはレジオネラ肺炎を疑わせる徴候が乏しいことがしばしばある
    • 抗菌薬への反応を見ながら、レジオネラ肺炎だったとしても大丈夫なように治療を続ける

レジオネラ肺炎の治療法

  • マクロライド系またはニューキノロン系の抗菌薬抗生物質、抗生剤)で治療する
    • テトラサイクリン系抗菌薬も有効である
    • 細菌性肺炎でよく使われるペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬は効かない
  • 適切な治療がなされない場合の致死率は60%から70%と報告されているが、適切な抗菌薬治療がなされれば致死率は10%未満に下がる
    • ただしこのような数値はあくまでも軽症と重症を合わせた統計的なものであり、実際は背景や重症度によってかなり差が大きいので注意が必要
  • 重篤化した場合はARDSDIC、多臓器不全などを合併する
    • 人工呼吸器治療や抗凝固療法、人工透析など様々な治療や処置が必要となる

レジオネラ肺炎に関連する治療薬

マクロライド系抗菌薬

  • 細菌のタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑えることで抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の生命維持や増殖にはタンパク質合成が必要となる
    • タンパク質合成はリボソームという器官で行われる
    • 本剤は細菌のリボソームでのタンパク質合成を阻害し細菌の増殖を抑える
  • マイコプラズマやクラミジアなどの菌に対しても高い抗菌作用をあらわす
  • 服用する際、比較的苦味を強く感じる場合がある
マクロライド系抗菌薬についてもっと詳しく

ニューキノロン系抗菌薬

  • 細菌の増殖に必要な酵素を阻害して殺菌的に抗菌作用をあらわす薬
    • 細菌の増殖にはタンパク質合成が必要でそれには遺伝情報をもつDNAという物質が不可欠となる
    • DNAの複製にはいくつかの酵素の働きが必要となる
    • 本剤はDNA複製に必要な酵素を阻害し抗菌作用をあらわす
  • 尿路感染症、腸管感染症、呼吸器感染症など幅広い感染症で有効とされる(薬剤によって抗菌作用の範囲は異なる)
ニューキノロン系抗菌薬についてもっと詳しく

レジオネラ肺炎の経過と病院探しのポイント

レジオネラ肺炎が心配な方

レジオネラ肺炎では、発熱や咳といった症状が出ます。他の肺炎では出づらい症状の一つとして、嘔吐や下痢が出る方もいます。肺炎の中でも重症化しやすいタイプのもので、入院の上で治療を行います。

また、レジオネラ菌は水中で繁殖しやすいという特徴をもち、循環式浴槽をもつ公衆浴場や温泉施設が感染源になりやすい病気です。潜伏期間は2日から10日ほどと幅がありますが、上記のような経過と症状に心当たりがある場合には、まずかかりつけのクリニックや病院を受診することをお勧めします。いつも診てくれている医師がいるのであればそちらが良いでしょう。症状だけからは風邪なのか肺炎なのか他の病気なのかを判断することは困難です。胸の聴診やレントゲンを用いて肺炎の診断を行った上で、もし肺炎であったとしたら、通院で治療するか入院が必要かを判断することとなります。普段からかかっている病院がない場合には、内科のクリニック、または呼吸器内科のクリニックが良いでしょう。肺炎と診断がついたとしても、レジオネラが原因と診断が確定するのはその更に後となります。

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レジオネラ肺炎でお困りの方

レジオネラ肺炎は、感染症とは言っても人から人へ伝染するようなものではありません。マイコプラズマ肺炎など別の種類の肺炎にはそのようなものもありますが、レジオネラ肺炎とは種類の異なるものです。

レジオネラ肺炎については診断がつき次第その場で治療が開始されますし、治療の方法にもバリエーションが少ないため、どこでどのような治療を受けるか迷う余地は少ない病気かもしれません。重症化した場合には集中治療室(ICU)での入院や、人工呼吸器による治療が必要となります。

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