すいぞうがん
膵臓がん
膵臓にできるがんの総称。早期で発見するのが難しく、経過が最も悪いがんの一つ
15人の医師がチェック 206回の改訂 最終更新: 2023.05.30

膵臓がんの基礎知識

POINT 膵臓がんとは

膵臓にできたがんのことを指します。膵臓がんの発生には家族歴、喫煙、慢性膵炎、糖尿病、肥満が関係していると考えられています。初期段階では特に症状がないことが多いですが、進行すると腹痛・背部痛・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる変化)・食欲低下・体重減少などが現れます。診断のために症状や身体診察に加えて、血液検査・超音波検査・CT検査・内視鏡検査などが行われます。治療法には手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療があり、病状や身体の状態を鑑みて適切な治療が行われます。膵臓がんが心配な人は消化器内科や消化器外科を受診してください。

膵臓がんについて

  • 膵臓にできるがん
  • 膵液(消化液)を運ぶ膵管にがんができることが多い(約90%)
    • 以下の細胞から発生することもある
      • インスリンを作るランゲルハンス島(膵島)細胞
      • 膵液を作る細胞
  • 原因は明らかではないが、家族歴・喫煙・慢性膵炎糖尿病肥満と関係があると言われている
  • 膵臓がんと1年間で新たに診断される人数は、男性では10万人あたり35.0人、女性では10万人あたり32.0人
    • 50歳ごろから増え、高齢になるほど発生する人が多くなる
    • 男性にやや多い
    • 近年増加傾向にあり、毎年3万人以上が膵臓がんで亡くなっている
  • 早期発見が難しく、診断された時には既に進行がんであることが多い
    • 消化器の臓器にできるがんの中で、最も経過が悪いとされている
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膵臓がんの症状

  • 早期の段階では「なんとなくみぞおちあたりの具合が悪い」程度の症状で目立たないため、自覚されないことが多い
  • 比較的自覚できる症状
    • 腹痛
    • 黄疸(おうだん):白目や皮膚が黄色くなる
    • 体重減少
    • 食欲不振
    • みぞおちや背中の痛み
症状の詳細

膵臓がんの検査・診断

  • 早期発見につながる検査
    • 血液検査:膵臓機能を調べる
    • 腹部超音波検査腫瘍の有無を調べる
  • 腫瘍を詳しく調べるための検査
    • 腹部CT検査MRI検査(MRCP)
      • 腫瘍の大きさや位置を調べる
    • 超音波内視鏡検査EUS
      • 胃カメラの先端にエコーがある特殊な内視鏡を用いて膵臓を調べる
    • 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)
      • 超音波内視鏡検査時に腫瘍に針を刺して組織を吸引する
    • 内視鏡的逆行性胆管膵管造影ERCP
      • 十二指腸乳頭から胆管や膵管を辿って、胆のうや膵臓の状況を調べる
      • 膵管にある膵液の中に悪性細胞が混じっていないかを調べる
    • PET検査
      • 膵がん転移がないか全身(脳以外)を調べる
検査・診断の詳細

膵臓がんの治療法

  • 可能であれば手術(膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除など)
    • 発見されたときにはすでに進行していることが多く、手術で切除できるケースは多くない
    • 手術を行った場合も、一般的には手術の後に化学療法を組み合わせる
  • 手術が難しい場合は抗がん剤治療(化学療法)を行う
    • 放射線治療を組み合わせる場合もある
  • 手術を行った場合の5年生存率の平均は10-20%程度
    • 早期で見つかったとしても5年生存率は40%と経過が良くない
  • がん発見時にはすでに進行していることが多いため、好発年齢(60歳以上)を過ぎたら定期的に検診を受け、出来るだけ早期の発見を目指すことが勧められる
治療法の詳細

膵臓がんに関連する治療薬

代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)

  • DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞増殖に必要なDNAの成分にピリミジン塩基と呼ばれる物質がある
    • 本剤はピリミジン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でピリミジン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
  • フルオロウラシルやシタラビンを元にして造られ体内で代謝を受けてこれらの薬剤へ変換される製剤(プロドラッグ製剤)がある
代謝拮抗薬(ピリミジン拮抗薬)についてもっと詳しく

レボホリナートカルシウム

  • 抗がん薬であるフルオロウラシルのDNA合成阻害作用を増強し、抗腫瘍効果を高める薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 消化器がんなどで使用されるフルオロウラシルはチミジル酸合成酵素(TS)という酵素と結合することでTSを阻害しDNA合成を阻害することで、抗腫瘍効果をあらわす
    • 本剤は体内でフルオロウラシルの代謝活性物質と一緒にTSと強固な複合体を形成し、フルオロウラシルの抗腫瘍効果を増強する
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