じょうがくどうがん
上顎洞がん
鼻の横から頰へ広がる、骨の中の空洞(上顎洞)に発生するがん
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最終更新: 2021.03.26
上顎洞がんの基礎知識
POINT 上顎洞がんとは
鼻、眼、ほお骨、上の歯茎に囲まれた、上顎洞という副鼻腔にできるがんです。がんが小さいうちは慢性副鼻腔炎と同じような症状が片側に起こり、鼻水や鼻づまり、頰の違和感などを感じます。がんが大きくなると鼻血、涙目、ほお骨や歯茎の腫れやしびれなどの症状が起こります。検査では鼻の中に細いカメラを入れて腫瘍を観察します。 がんが疑われた場合には、がんの広がりや離れた臓器への転移を調べるために、副鼻腔CT検査やMRI検査、超音波検査、PET-CT検査などを行います。診断を確定するために組織の検査を行います。鼻の中もしくは歯茎から腫瘍の一部を切り取って調べます。治療は手術、抗がん剤による化学療法、放射線療法を組み合わせて行います。上顎洞がんでは片側のみの鼻水や鼻づまりに加えて、鼻血や頰の痺れが起こります。そのような症状が長引く場合には、耳鼻咽喉科に相談してみてください。
上顎洞がんについて
上顎洞がんの症状
- 初期の症状は慢性副鼻腔炎と似ているが、進行して上顎洞の周りに広がると様々な症状が現れる
- 症状は片側に起こることが多い
がん がある側のみに症状が出る
- 初期の症状
- 鼻づまり
- 鼻水
- 頰の軽い違和感
- がんが上顎洞から周りに広がった時の症状
- 上(眼の方向)へ広がった場合
- 眼の突出
- ものが二重に見える
- 涙が出やすい
- 目やにが出る
- 下(歯の方向)へ広がった場合
- 歯茎の腫れ
- 歯の痛み
- 上顎の腫れ
- 鼻の内側(顔の中心方向)へ広がった場合
- 鼻づまり
- 鼻水:
膿 のような鼻水や、血が混じる鼻水 - 涙が出やすい
- 鼻の奥(のどの方向)へ広がった場合
- 口が開きにくい
- 頭痛
- 頰の方(顔の表面の方向)へ広がった場合
- 頰の腫れ
- 頰の痺れ
- 頰の痛み
- 上(眼の方向)へ広がった場合
- がんが首の
リンパ節 へ広がると、首にしこり(腫瘤)を触れるようになる
上顎洞がんの検査・診断
- 鼻腔ファイバースコピー検査:
がん の存在を目視する- 鼻の中を細い
カメラ (内視鏡 )を使って観察する - がんが上顎洞から鼻の中へ広がっている場合には、がんを観察される
- 鼻の中を細い
- 画像検査:がんの位置や大きさを調べる
- 頭部〜頸部
CT 検査- がんが上顎洞の骨を壊しながら広がっている様子を観察できる
造影 剤を使用すると、がんの広がりやリンパ節 の転移 をより詳しく調べることができる
- 副鼻腔
MRI 検査- がんの周りへの広がりをより詳細に観察できる
頸部超音波検査 - 首のリンパ節への転移があるかどうかを調べる
- 頭部〜頸部
- 病理検査
- がんの確定診断のために、がんの一部を切り取って顕微鏡で詳しくみる
組織診 を行う - 内視鏡でがんが鼻の中に広がっているのが確認された場合には、鼻から組織を一部切り取る
- がんが鼻から見えない場合には、歯茎を一部切って、上顎洞のがんを一部切り取る
- がんの確定診断のために、がんの一部を切り取って顕微鏡で詳しくみる
上顎洞がんの治療法
- 治療は以下の3つを組み合わせて行う
- 手術
抗がん剤 による化学療法 放射線療法
- 治療効果に加えて、治療後の後遺症や整容面にも配慮して治療方法を選択する
- 手術
- 手術のみで取りきれる大きさの場合は手術のみを行う
- 手術のみで取りきれない場合には、
がん を手術でできるだけ取り除いた後に化学療法や放射線治療 が追加される- 手術でできる限りがんを取り除くことで、手術後の放射線治療の効果が高くなる
- 手術後には鼻と上顎の境がなくなることがあり、他の部位から筋肉を移植したり、大きな入れ歯をはめる必要がある
- 起こりうる後遺症
- 食べ物が噛みづらい
- 飲み込みづらい
- 眼球の陥没
- 眼球突出 など
- 化学療法
- 抗がん剤を用いてがん細胞を死滅させることが目的
- 抗がん剤は、上顎洞がんに栄養となる血液を送っている血管に直接注射を行う場合と、点滴で行う場合がある
- 放射線療法
- がん細胞を放射線によって死滅させることが目的
- 目に放射線があたることで、視力低下が起こりうる
- 三者併用療法(手術+化学療法と放射線治療の併用療法)
- 手術+化学療法+放射線治療を組み合わせる治療を三者併用療法と呼ぶ
- 手術のみで取りきれない場合に三者併用療法を行う
- 手術
- 上顎洞がん全体の
5年生存率 は、病期 や治療法の選択により違いがあるが、おおよそ50-70%とされている