せんもう
せん妄
意識障害の一種で、程度の差はあるが一時的な混乱状態におちいってしまった状態。高齢者に起こりやすい
16人の医師がチェック 188回の改訂 最終更新: 2021.04.21

せん妄の基礎知識

POINT せん妄とは

せん妄は意識障害の1つです。高齢者に多く見られる状態で、入院などの環境の変化が強く関連します。夜間せん妄や入院せん妄、術後せん妄、アルコールせん妄など原因に応じて分類されます。症状は見当織障害(時間や場所があやふやになう)や記憶障害、幻覚、妄想などさまざまな形で現れます。症状が似ていることがあるので高齢者では認知症と間違えられやすいですが、せん妄は一時的なもので治る点が異なります。診察や経過からせん妄と診断されることが多いですが、脳の病気や怪我が否定出来ない場合は頭部CT検査や頭部MRI検査が行われます。治療には抗精神薬(興奮を一時的に抑える薬)が中心になりますが、身体のストレスを取り除くことも重要です。せん妄によって暴れてしまうときには、自分や周りの人の安全を鑑みて身体が押さえつけられることもあります。予防には普段から慣れ親しんでいる環境を整えることなどが重要です。せん妄が疑われる場合は、似た症状が現れる病気との区別も必要なので内科や脳神経外科、精神科を受診してください。

せん妄について

  • 意識障害の一種
  • 直接的な脳の病気やケガなどの原因があるわけではないにもかかわらず、程度の差はあるが一時的な混乱、錯乱状態に陥ってしまう
  • 70歳以上の入院患者のうち15-50%の人に発生すると言われている
    • 特に高齢者で生じやすい
  • 主な原因
    • 加齢
    • 元々の脳機能の障害(脳卒中パーキンソン病、脳神経の変性
    • 尿路感染や排便や排尿の障害(便秘など)
    • 脳の機能に影響を及ぼす薬の服用(抗うつ薬や抗不安薬など)
    • がんの末期での症状
    • アルコール多飲
    • 睡眠障害
    • 不安
    • 環境の変化(施設など新しい環境へ移った場合など)
    • 人によっては原因を特定できない場合もある
  • 分類
    • 夜間せん妄
    • 入院せん妄
      • 特に集中治療室(ICU)への入室による感覚遮断(時間の感覚や刺激がない)
      • アラーム音や人の行き来などによる睡眠妨害
      • 薬剤の投薬
      • 以上が原因となることが多く、ICU精神病とも呼ばれる
    • 術後せん妄
      • 手術によるストレスや使用される薬剤などが原因で起こる
      • 高齢者に起こりやすい
    • アルコールせん妄
    • 薬剤性せん妄
      • 若年者では違法薬物の使用やアルコール中毒が主な原因
      • 高齢者は処方薬の使用などが原因である
      • 長期間服用していた薬剤(ベンゾジアゼピン系薬剤やバルビツール酸系薬剤など)の使用を急にやめることで起こる場合もある
    • 疾患せん妄
      • 利尿薬の使用、脱水、腎不全などにより、血液中の電解質のバランスがくずれるとせん妄が起こることがある
      • 甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症などにより、甲状腺の機能が異常に低下・上昇するとせん妄が起こることがある
    • 毒物せん妄
      • 消毒用アルコールやヘロインなどの毒物の摂取により、せん妄が起こる
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せん妄の症状

  • 主な症状
    • 注意力や思考力の低下
    • 見当識障害(時間や場所があやふやになる)
    • 覚醒(意識)レベルの変動
    • 記憶障害(最近のことが思い出せない)
    • 簡単な計算ができなくなる
    • 半分眠ったような、寝ぼけたような酩酊状態が続く
    • 異常なほどの覚醒状態にあっても、次の瞬間には酩酊状態になる
    • 幻視や幻覚(そこにないものが見える)、妄想(そこにいない人が訪ねてきたと言い張るなど)、偏執症
    • 思考の乱れ、あてもなく歩きまわる、支離滅裂な行動を取る
    • 激しい興奮や困惑状態、不安
    • 手の震えなどの神経症状(アルコールせん妄に多い)
    • 人格や気分の変化(内向的になる、もしくはイライラして興奮状態になる)
  • 重度のせん妄では、自分や他者が誰かわからなくなることもある
  • 夕方に悪化する傾向があり(日没現象)、睡眠中も落ち着きがなくなり、昼間眠って夜間起きるなどサイクルが逆転することもある
  • 高齢者では認知症と間違われやすい
    • せん妄に特徴的な症状
      • 認知症と比べて急激かつ突然に発症する
      • 意識レベルの変動がある
      • 認知症は持続性があるが、せん妄は一過性である
      • 患者自身にも症状による動揺が見られる
      • 幻視、興奮など様々な症状が認められ、それらが移り変わる
  • 急速に悪化したせん妄であれば、環境やストレスなどのせん妄の原因となっているものを排除すると、認知機能が元通りになることも多い
症状の詳細

せん妄の検査・診断

  • 基本的には、検査ではなく症状と経過のみから診断される
  • 画像検査:脳の損傷などのせん妄以外の脳の病気がないことを確かめるために行われる
    • 頭部CT検査
    • 頭部MRI検査
検査・診断の詳細

せん妄の治療法

  • 非薬物治療:予防の意味でも非常に重要
    • 普段慣れ親しんでいる環境に整える
    • 痛みや不安などのストレスを取り除く
  • 薬物治療
    • 興奮を一時的に抑える治療
      • 抗精神病薬  など
    • 漢方薬
      • 抑肝散
      • 抑肝散加陳皮半夏  など
  • 点滴を自分で抜いてしまったり、興奮して動いてベッドから落ちる危険があると判断された場合は、必要最小限かつ必要な期間に限り、体をベッドに帯のようなもので固定したり、手袋をはめて物をつかめないようにすることがある
    • 固定したり手袋をはめることでせん妄がさらに悪化する場合があるので、必要性とデメリットをしっかりと吟味する必要がある
治療法の詳細

せん妄のタグ

からだ

せん妄に関わるからだの部位