きゅうせいりんぱせいはっけつびょう
急性リンパ性白血病(ALL)
骨髄で異常な血液細胞が急激に増殖する病気。「血液細胞のがん」にあたる
10人の医師がチェック 126回の改訂 最終更新: 2018.02.08

急性リンパ性白血病(ALL)の基礎知識

POINT 急性リンパ性白血病(ALL)とは

白血病は、骨髄にある造血幹細胞から血液細胞(白血球、赤血球、血小板)へと成熟する過程にある細胞が癌化する病気です。白血病はまず、癌化した細胞がもし成熟したら何になっていたか?によって分類されます。成熟したらリンパ球(白血球の一種)になるだろう細胞が癌化したものをリンパ性白血病と呼びます。また、成熟したらリンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になるだろう細胞が癌化した場合を骨髄性白血病と呼びます。さらに、急激に発症した白血病を急性白血病、ゆっくり進むものを慢性白血病と呼びます。これらを組み合わせて、白血病は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病の4つに大きく分けられます。急性リンパ性白血病は数日から数週単位で急激に病状が進行します。急性リンパ性白血病の症状としては、正常な血液細胞が作られなくなることによる症状として、感染を起こしやすくなる、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、出血が止まりにくい、などが見られます。白血病細胞が臓器に浸潤する症状として、お腹が張る、歯茎が腫れて痛い、腰や関節が痛い、頭痛や吐き気、リンパ節の腫れなどが見られます。診断は採血検査、骨髄検査、画像検査、染色体検査、遺伝子検査などを用いて行います。治療は抗がん剤が中心となります。骨髄移植が行われる場合もあります。急性リンパ性白血病が心配な方や治療したい方は血液内科や小児科を受診してください。

急性リンパ性白血病(ALL)について

  • 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
    • 白血球:主に病原体や異物と戦う役割
      • リンパ球は白血球の一種であり、主にウイルスなどを攻撃する機能を持つ
    • 赤血球:主に酸素を輸送する役割
    • 血小板:主に出血を止める役割
  • 血液細胞は骨髄にある造血幹細胞が成長して作られる
    • 造血幹細胞から血液細胞へと成熟する過程で、細胞が化することを白血病という
    • 白血病になると、癌化した細胞(白血病細胞)が骨髄を占拠し、正常な血液細胞は減少する
    • リンパ球になる過程で癌化した場合はリンパ性白血病、リンパ球以外の血液細胞になる過程で癌化した場合を骨髄性白血病という
  • 白血病は大きく分けて以下の4種類に分けられる
  • 急性リンパ性白血病ALL)は数日から数週間単位で急激に症状が進んでいくことが多い
  • 大人の白血病のうち、ALLは2割ほどを占める
  • 日本では毎年1,000-2,000人ほどが新規に急性リンパ性白血病と診断されている
    • 男女どちらにも起きる病気だが、男性の方がやや多い傾向がある
    • ALLは子ども(2-5歳)にも起きることがあり、小児悪性腫瘍の中で最多(年間500人が発症)である
  • 白血病は遺伝子や染色体が傷つくことで発症すると考えられている
    • 遺伝子や染色体の異常が原因ではあるが、ほとんど全ての白血病は子どもなどの血縁者に遺伝しない
    • ALLではフィラデルフィア(Ph)染色体が検出されるかどうかで治療法や治療成績が大きく変わる
      • Ph染色体の陽性率は小児では5%程度、成人では30%程度
      • Ph染色体陽性の場合の方が治療成績が悪い

急性リンパ性白血病(ALL)の症状

  • 正常な血液細胞が減少することによる症状(骨髄白血病細胞が占拠して、正常な血液細胞は減少する)
    • 白血球の減少
      • 病原体への抵抗力が低くなり、感染を起こしやすくなる
    • 赤血球の減少
      • 貧血により、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、など
    • 血小板の減少
      • 血が止まりにくくなる
      • 歯茎からの出血が止まらなかったり、すねなどに赤い点々(紫斑)が多発する
  • 全身的な症状
    • 食欲が出ない
    • 発熱
    • 頭痛、嘔吐、精神的な異常(白血病細胞が脳に浸潤することによる症状)
  • 最初は「かぜをひいたような症状」(だるさ、発熱、頭痛など)のこともあるが、かぜと違って数週間経っても治らず、採血すると白血病が見つかることもある

急性リンパ性白血病(ALL)の検査・診断

  • 血液検査
    • 血液細胞の数や、異常な血液細胞の有無を確認する
    • 全身の臓器の機能を調べる
    • 治療をしていくうえで問題になるウイルス感染の有無を調べる
  • 骨髄検査
    • 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
    • 骨髄を顕微鏡で確認したり、染色体検査や遺伝子検査を行う
  • 画像検査
    • レントゲンX線)検査やCT検査で、合併症の有無を調べる
  • 腰椎穿刺
    • 背中の下の方を針で刺して、脊髄の周りを流れる液体(髄液)を採取する
    • 急性リンパ性白血病では脳に白血病細胞が出てきやすいため、よく行われる検査
  • 白血病のタイプによっては、特に出血しやすいタイプであったり、特定の薬が効きやすいタイプであったりということがあるため、骨髄検査(遺伝子検査、染色体検査)は診断をつけて、治療法を選択するうえで非常に重要な検査

急性リンパ性白血病(ALL)の治療法

  • 診断時には通常、体内に1兆個ほどの白血病細胞が存在する。これをまずは10億個以下ほどに減らすことが治療の初期目標となる
    • 白血病細胞が10億個以下ほどになると、顕微鏡で白血病細胞が見えないほどの量になる
    • 顕微鏡で白血病細胞が見えないほどまで減ることを「寛解(かんかい)」とよぶ
    • 寛解を目指すための初期治療を寛解導入療法といい、強力な抗がん剤を使用する
    • 高齢者や、もともと全身の状態が悪い方の場合には寛解導入療法を施行できないこともある
    • 抗がん剤の効きが悪く、寛解導入療法で寛解が得られない場合もある
    • 寛解が得られた場合には残存した白血病細胞をさらに減らすために「地固め療法」と呼ばれる抗がん剤治療を行うことが多い
    • 化学療法後に、ドナーがいれば造血幹細胞移植を行う場合もある
    • 寛解後に再発するケースも多く、再発した場合には予後が良くない場合が多い
  • 急性リンパ性白血病はフィラデルフィア(Ph)染色体が検出されるかどうかで治療方針が大きく異なる
  • Ph染色体陰性の場合の治療法
    • まず5剤ほどの抗がん剤を併用した強力な化学療法を行うことが一般的(寛解導入療法)
    • ある程度白血病細胞の量が減ってきたら、地固め療法や造血幹細胞移植を検討する
    • 急性リンパ性白血病では脳や脊髄への白血病細胞浸潤が起きやすいので、脳脊髄への放射線治療や抗がん剤直接投与も行うことが多い
    • 寛解導入療法が成功する確率、および5年生存率は、それぞれ成人で80-90%程度および50%程度、小児で90%程度および70%程度と報告されている
  • Ph染色体陽性の場合の治療法
    • まずイマチニブによる寛解導入療法を行う
    • その後、イマチニブと複数の抗がん剤を併用した地固め療法を行う
    • 寛解が得られた場合には造血幹細胞移植を検討する
    • 初回で寛解が得られた場合、造血幹細胞移植により3年生存率は60%ほど期待できる

急性リンパ性白血病(ALL)に関連する治療薬

代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)

  • DNAの構成成分に類似した化学構造をもち、細胞増殖に必要なDNA合成を阻害して抗腫瘍効果をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序に増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 細胞増殖に必要なDNAの成分にプリン塩基と呼ばれる物質がある
    • 本剤はプリン塩基と同じ様な構造をもち、DNA合成の過程でプリン塩基の代わりに取り込まれることなどにより抗腫瘍効果をあらわす
  • 本剤は薬剤毎それぞれの作用により抗腫瘍効果をあらわす
代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)についてもっと詳しく

分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔Bcr-Abl〕)

  • 白血病細胞の増殖に必要な異常なタンパク質による働きを選択的に阻害し抗腫瘍作用をあらわす薬
    • がん細胞は無秩序な増殖を繰り返したり転移を行うことで、正常な細胞を障害し組織を壊す
    • 慢性骨髄性白血病では変異した染色体から異常なタンパク質が作られ無秩序な細胞増殖を引き起こす因子となるBcr-Ablチロシンキナーゼという酵素が産生される
    • 本剤はBcr-Ablチロシンキナーゼに結合しその活性を阻害することで、がん細胞の増殖抑制作用をあらわす
  • 本剤はがん細胞の増殖などに関わる特定の分子の情報伝達を阻害することで抗腫瘍効果をあらわす分子標的薬となる
  • 本剤の中には消化管間質腫瘍(GIST)に対して抗腫瘍効果をあらわす薬剤もある
分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬〔Bcr-Abl〕)についてもっと詳しく

急性リンパ性白血病(ALL)が含まれる病気

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