さいせいふりょうせいひんけつ
再生不良性貧血
骨髄で造血幹細胞が減少することにより、白血球、赤血球、血小板など血液成分が減少する病気
9人の医師がチェック 150回の改訂 最終更新: 2019.09.05

再生不良性貧血の基礎知識

POINT 再生不良性貧血とは

血液中には免疫を担当する白血球、酸素を運搬する赤血球、出血を止めてくれる血小板などの血液細胞が含まれています。これらの血液細胞はいずれも、骨髄にある造血幹細胞が成長して出来上がる細胞です。再生不良性貧血では、骨髄で造血幹細胞が持続的に減少することによって、白血球、赤血球、血小板が不足します。血液細胞が減少することによる症状として、白血球が減少して感染を起こしやすくなる(発熱)、赤血球が減少してめまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいなどの貧血症状がでる、血小板が減少して出血が止まりにくい、などが見られます。診断は採血検査、画像検査、骨髄検査などで行います。治療は免疫抑制療法、抗胸腺細胞グロブリン療法、骨髄移植などが行われます。治療をせずに様子見のみを行う場合もあります。再生不良性貧血が心配な方や治療したい方は血液内科や小児科を受診してください。

再生不良性貧血について

  • 血液細胞には大きく分けて以下の3種類がある
    • 白血球:主に病原体や異物と戦う役割
    • 赤血球:主に酸素を輸送する役割
    • 血小板:主に出血を止める役割
  • 血液細胞は骨髄にある造血幹細胞が成長して作られる
  • 再生不良性貧血(AA: aplastic anemia)は造血幹細胞が持続的に減少して、血液細胞が不足する病気
  • 生まれつきの病気である先天性再生不良性貧血と、成長してから発症する後天性再生不良性貧血がある
    • 先天性再生不良性貧血の原因としてファンコーニ(Fanconi)貧血や、先天性角化不全症と呼ばれる病気がある
    • 後天性再生不良性貧血の原因としては、以下に挙げるものや、原因不明のもの(特発性)がある
      • 薬剤性(クロラムフェニコール、金製剤、ベンゼンなど)
      • 感染性(肝炎など)
      • 放射線被曝
      • 妊娠 など
  • 日本で毎年1,000人ほどが診断されている
    • 比較的珍しい病気だが、日本では欧米に比べて数倍多い病気である
    • 男女とも同じくらいの頻度でかかる病気
    • 10-20歳代の若年者と70-80歳代の高齢者で多くみられる
    • 厚生労働省の指定難病であり、一定の基準を満たせば医療費の公費負担を受けられる場合がある

再生不良性貧血の症状

  • 血液細胞が減少することによる症状
    • 白血球の減少
      • 病原体への抵抗力が低くなり、感染を起こしやすくなる
    • 赤血球の減少
      • 貧血により、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすい、など
    • 血小板の減少
      • 血が止まりにくくなる
      • 歯茎からの出血や鼻血が止まらなかったり、すねなどに赤い点々(紫斑)が多発する
  • 他の血液疾患でよく見られるようなリンパ節の腫れ、肝臓や脾臓の腫れは通常見られない

再生不良性貧血の検査・診断

  • 他の血液疾患、特に骨髄異形成症候群発作性夜間ヘモグロビン尿症などとの区別が難しいこともあるので、他の病気を否定するための検査も合わせておこなっていく
  • 血液検査
    • 白血球赤血球血小板の減少(汎血球減少)が見られることが多いが、病初期では血小板減少しか見られない場合などもある
  • 骨髄検査
    • 腰骨や胸の骨から骨髄を採取して顕微鏡で確認する
    • 染色体検査なども必要に応じて行う
  • 画像検査
    • CT検査、MRI検査などで合併症の検索を行う
    • 胸椎、腰椎など背骨のMRI検査を行って、骨髄の様子を観察する

再生不良性貧血の治療法

  • 重症度(血球減少の程度)に合わせて治療法を選択する
  • 軽症の場合
    • あまり問題を起こさないようであれば無治療で様子見のみを行うこともある
  • 中等症から重症の場合に行われる主な治療法
    • 抗胸腺細胞グロブリン(ATG)療法
    • 免疫抑制療法
      • シクロスポリン(ネオーラル®など)などが用いられる
    • 骨髄移植:病気の造血細胞を他人の正常な造血細胞に置換する治療
      • 強力な治療であり、体力のある若い人には積極的に行うが、年をとると副作用が強く出てしまうために慎重に検討する必要が出てくる
    • 蛋白同化ホルモン療法(酢酸メテノロン:プリモボラン®)
    • ロミプロスチム(ロミプレート®)
    • 支持療法
      • 赤血球輸血
      • 血小板輸血
      • 白血球を増やす注射(G-CSF製剤)
      • 鉄キレート剤の内服
      • 抗菌薬の内服   など
  • 診断時には軽症でも数年間に中等症、重症に悪化することもあるので経過観察することが必須
  • 経過の中で骨髄異形成症候群白血病発作性夜間血色素尿症など他の病気に移行することがある
    • 免疫抑制療法により改善した患者の約5%で、骨髄異形成症候群急性骨髄性白血病などの悪性疾患に移行する
    • 治療がうまくいっても、定期的に血液検査を受け、異常がみられた場合には直ちに精密検査を受けることが勧められる

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