ふぁろーしちょうしょう
ファロー四徴症
肺動脈狭窄、心室中隔欠損、大動脈騎乗、右室肥大の四つを特徴とするチアノーゼを起こす先天性心疾患。本来は肺へ行くはずの静脈血が全身へ再び流れてしまうことで症状が起こる
11人の医師がチェック 157回の改訂 最終更新: 2019.10.03

ファロー四徴症の基礎知識

POINT ファロー四徴症とは

ファロー四徴症は生まれつきの心臓の病気です。肺への血流の一部が全身に流れてしまうことで、全身に酸素がうまく運搬できなくなります。主な症状は呼吸の乱れや息切れ、チアノーゼになります。 症状や身体診察に加えて、画像検査・心電図検査・心臓エコー検査などを診断します。また、精密検査が必要な場合は心臓カテーテル検査を行います。根治するための治療は手術になります。ファロー四徴症が心配な人や治療したい人は、小児科・循環器内科・心臓血管外科を受診して下さい。

ファロー四徴症について

  • チアノーゼを起こす先天性心疾患の1つ
    • 「四徴」とは下記の4つの特徴があることを意味する
      • 右室流出路狭窄:右室から肺動脈への通り道が狭くなる
      • 心室中隔欠損:右心室左心室の間の壁が上と下でずれてしまい、穴が残る
      • 大動脈騎乗:肺動脈が細いため、左心室の上にあるべき大動脈が右心室の方へ乗り出す
      • 右室肥大:狭い肺動脈へ血液を流そうとして、右心室の筋肉が肥大する
    • 全身の静脈からの血液が肺を通らずに、心室中隔欠損を介して再び全身に流れてしまいチアノーゼを起こす
  • 先天性心疾患の約5-10%を占める
  • 男女比は2:1で男児に多い
  • 手術をしなかった場合は生存率が高くない
    • 1歳までの生存率が75%
    • 3歳までの生存率が60%
    • 10歳までの生存率が30%
  • 心内修復術後の予後は良い
  • 22q11.2欠失症候群での合併が多い
  • 小児慢性特定疾患に指定されており、申請を行えば症状に応じて医療費の補助を受けることができる

ファロー四徴症の症状

  • 肺動脈の太さにより症状の程度や出現時期は異なる
    • 肺動脈の太さが比較的保たれていれば症状はほとんどないこともあるが、重症の場合は出生直後からチアノーゼを起こす
    • 成長とともにチアノーゼを起こしやすくなる
  • 生後3か月以降は無酸素発作を起こす危険性が上がる
    • 激しく泣いた時、いきんだ時、発熱時、脱水に至った時などに急激にチアノーゼが増強して、多呼吸を起こしたり不穏になる
    • 重症化するとけいれんや意識障害を起こし、死に至ることもある
    • 右室流出路狭窄が発作性に悪化して、肺に流れる血液がさらに減ることによる
  • 運動できる年齢になると、発作時に突然しゃがむ(そんきょの姿勢をとる)ようになる
    • しゃがむことで下半身に行く血液が減って、肺に行く血液が増える
  • チアノーゼが長期的に続くとばち指や多血がみられるようになることもある
    • 多血のために血栓ができやすくなり、脳梗塞を起こすこともある
  • 感染性心内膜炎脳膿瘍、低酸素性脳障害などを合併することがある

ファロー四徴症の検査・診断

  • 新生児・乳児期に心雑音を指摘されることが多い
    • 診断は通常、心臓超音波検査で行う
  • 心電図:右室肥大の所見などを調べる
  • 画像検査:心臓の構造的異常などを調べる
    • 胸部レントゲン検査(X線写真)
      • 心臓の形が木靴のような形に見えることが多い
        • 肺動脈低形成によって起こる第2弓陥凹と心尖部挙上が原因
      • 上行大動脈が太くなり、右側に大動脈弓が見られることがある
      • 重症になると肺血管が目立たなくなる
    • 心臓超音波検査:心臓の構造や血流を確認する最も重要な検査(必要に応じて繰り返し行う)
  • 血液検査:貧血や多血がないかなどを調べる
  • 心臓カテーテル検査:心臓や血管の圧力や形を調べる

ファロー四徴症の治療法

  • 無酸素発作を起こした際には、胸膝位をとり落ち着かせる(体を丸めるようにして抱く)
    • β遮断薬の飲み薬で無酸素発作を予防する
    • 脱水の補正なども重要
  • カテーテル治療も行われているが、根治には手術が必要となることが多い
    • 体重増加や左心室の成長を待って、1-2歳頃に根治術を行う
    • 右室流出路狭窄の解除と心室中隔欠損の閉鎖を行う
    • 右室流出路狭窄の解除の方法は狭窄の程度により大きく異なる
  • 症状が強い場合や体重が軽く根治術をすぐに行えない場合には、体肺動脈吻合術を行う
    • 全身に行く血管から肺へとシャント(抜け道)を作って肺に行く血液を増やす
  • 術後は不整脈や肺動脈弁逆流や肺動脈狭窄残存による右心室の機能障害などを起こす可能性があり、長期的に経過をみる必要がある
  • 心内修復術後は激しい運動は制限されるが、日常生活の制限はほとんどなくなる

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