たはつせいきんえん、ひふきんえん
多発性筋炎、皮膚筋炎
筋肉の炎症(筋炎)により、筋肉に力が入りにくくなったり、筋肉を動かすと痛くなる病気
9人の医師がチェック 116回の改訂 最終更新: 2022.08.21

多発性筋炎、皮膚筋炎の基礎知識

POINT 多発性筋炎、皮膚筋炎とは

免疫を担う細胞が筋肉を破壊することで、筋肉の痛みや筋力低下が起こる病気です。特徴的な皮疹が出ることもあり、皮疹を伴わない場合を多発性筋炎、伴う場合を皮膚筋炎と呼びます。筋肉の症状以外にも、発熱、息苦しさ、咳などを自覚することもあります。血液検査、CT検査、MRI検査、筋電図検査、筋生検(筋肉の一部を採取して顕微鏡で調べる)などを行います。治療はステロイド薬、免疫抑制薬が中心となります。治療薬の副作用としては感染症、糖尿病、高血圧などがあるため、定期的に通院し、薬の副作用チェックや病状の確認が必要となります。気になる人はリウマチ内科、膠原病内科を受診してください。

多発性筋炎、皮膚筋炎について

  • 筋肉が炎症(筋炎)により破壊され、筋肉に力が入りにくくなったり、筋肉を動かすと痛くなる病気
    • 筋肉の症状だけのときは多発性筋炎、筋炎に加えて特徴的な皮膚の症状もある場合は皮膚筋炎と呼ぶ
  • 中年発症が多いが、あらゆる年齢層に発症する
  • 成人では男女比1:2と女性に多く発症するが、子どもでは性差はない
  • 皮膚筋炎がんと一緒に発生することもある(10-30%程度)
  • 治療のためステロイド薬を飲み続けなければならない場合も多く、ステロイド薬による副作用に注意が必要
  • 厚生労働省が難病に指定している
    • 一定の基準を満たせば医療費の補助を受けられる

多発性筋炎、皮膚筋炎の症状

  • 筋肉の症状
    • 筋肉が細くなる(筋萎縮
    • 筋肉痛や筋肉を押された時に痛みを感じる
  • 筋力が弱くなることによる症状
    • しゃがんだ状態から立ち上がれなくなる
    • 腕を持ち上げるのが難しくなる
    • 首が下がる、飲み込みにくくなる
    • 重症では呼吸がしにくくなる
  • 皮膚の症状
    • まぶたが紫色に腫れる(ヘリオトロープ疹)
    • 指関節の背面や肘が赤くがさがさになる(ゴットロン徴候)
    • 赤い発疹:顔・首・胸・背中・肩・肘・足首など
    • 手のひらが荒れてひび割れができる
  • その他の症状
    • 発熱
    • だるさ
    • 体重減少
    • 関節の痛み
    • 寒いところで手の指が青くなる(レイノー現象
    • 不整脈
    • 息苦しさを感じたり、乾いた咳が出たりする

多発性筋炎、皮膚筋炎の検査・診断

  • 身体診察
    • 筋力検査:筋力低下の度合いから病気の重症度や改善の度合いを判定する
    • 皮膚の診察:皮膚筋炎に特徴的な皮疹が出ているかを見る
  • 血液検査
    • CKやアルドラーゼ:筋肉が壊れたときに上昇する
    • 抗Jo-1抗体、抗ARS抗体、抗TIF-1γ抗体、抗MDA-5抗体など:多発性筋炎皮膚筋炎で陽性になる特徴的な検査項目
  • 画像検査:筋肉の炎症や、がん合併していないかを確認するために行う
    • MRI検査(ガドリニウム造影):筋肉の炎症の同定に有用である
    • 胸部CT検査間質性肺炎肺がんを合併していないかを調べる
    • 腹部CT検査:お腹の臓器(肝臓・膵臓・子宮や卵巣など)にがんがないかを調べる
    • 胃カメラ検査:胃や十二指腸にがんがないかを調べる
    • 便潜血検査、大腸カメラ検査:大腸にがんがないかを調べる
    • マンモグラフィ、子宮頚部細胞診乳癌や子宮がんがないかを調べる(女性)  -心臓超音波検査:心筋に障害が及んでいないかをチェックする
  • 筋電図:筋炎に特徴的な異常がないかを調べる
  • 生検:筋肉、皮膚を免疫細胞が壊していないか確認する
    • 筋肉の一部または皮膚の一部を切り取ってきて顕微鏡で詳しく調べる
  • 呼吸機能検査間質性肺炎の重症度を調べるために行う

多発性筋炎、皮膚筋炎の治療法

  • 入院して安静とし、ステロイド薬による治療が基本となる
    • 初期は多い量(10錠前後)のステロイド薬を1か月ほど内服し、徐々に量を減らしていく
    • ステロイド薬を長期に内服すると副作用が多いので、副作用を予防する薬を使う
    • ステロイド薬とあわせて使われる薬剤
      • ビスホスホネート、ビタミンD、カルシウム製剤、PTH製剤、デノスマブなど:ステロイド薬による骨粗しょう症の予防
      • プロトンポンプ阻害薬(商品名ネキシウムなど):ステロイド薬による胃潰瘍の予防
      • ST合剤(商品名バクタなど):感染症の予防
    • 以下の免疫抑制薬をステロイド薬と一緒に使うことがある
      • メトトレキサート(商品名リウマトレックスなど)
      • アザチオプリン(商品名イムランなど)
      • シクロフォスファミド(商品名エンドキサンなど)
      • タクロリムス、シクロスポリン (商品名プログラフ、ネオーラルなど)
  • 重症例では免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)を行うことがある
  • がん合併していることがわかった場合は、がんに対する治療を行う
  • 再発も多く、継続的に通院を続ける必要がある

多発性筋炎、皮膚筋炎の経過と病院探しのポイント

多発性筋炎、皮膚筋炎が心配な方

多発性筋炎皮膚筋炎では、手足の筋力が弱くなったり、全身のだるさや、まぶたや手、肘などに皮膚症状が出現します。

ご自身が多発性筋炎皮膚筋炎でないかと心配になった時、最初に受診するのは膠原病科かリウマチ科の病院が適しています。専門の医師はリウマチ専門医になりますが、リウマチ専門医には内科系の医師と整形外科系の医師がいるため区別が必要です(両者を認定しているのは同じ学会です)。その医師が内科に所属しているのか、整形外科に所属しているのかが分かれば判断がつくかと思いますが、多発性筋炎皮膚筋炎を診療するのは内科系のリウマチ専門医になります。

多発性筋炎皮膚筋炎の診断は問診と診察、血液検査、そして筋電図や筋生検といった特殊な検査で行います。血液検査では一般内科で測定しない特殊な項目も確認しますので、内科のクリニックを受診してその日のうちに診断がつく、というような病気ではありません。筋電図や筋生検は必須ではありませんが、他の検査だけで診断がつかない場合に行われます。地域の中核病院や大学病院でなければ受けられないような検査です。

特殊な医療機関としては、リウマチセンターを開設している病院もあります。これらの医療機関では、多発性筋炎皮膚筋炎を専門とする医師やその他スタッフが多く、重症度が高かったり、他の病気と似ていて診断の確定に難渋しているような方に適しています。なお、俗に「リウマチ」とだけ言うと医学的には関節リウマチを指すことが多いですが、「リウマチ系疾患」、「リウマチセンター」というような場合については、関節リウマチに限らず、その他の関節や全身の痛みを伴う疾患(膠原病疾患と重なります)をまとめて指します。多発性筋炎皮膚筋炎もこの中に含まれる疾患の一つです。

もしかかりつけの内科医師がすでにいるようであれば、筋炎が疑われた場合にはそこから診療情報提供書(紹介状)をもらった上でより専門的な病院を受診することをお勧めします。多発性筋炎皮膚筋炎を診断する上で普段の様子やその他の病気の有無、検査結果はとても参考になりますし、診療情報提供書がないと基本的な検査を一からやり直すことになってしまうためです。

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多発性筋炎、皮膚筋炎でお困りの方

多発性筋炎皮膚筋炎は自己免疫疾患といって、免疫細胞(白血球など)が不適切に活動してしまうことが原因の病気です。したがって治療は、免疫細胞の働きを抑えるような内服薬や注射薬になります。

治療の基本はステロイドですが、患者さんによって重症度や間質性肺炎の有無の違いなどがあることから使用される免疫抑制剤が異なること、同じ薬でもどの程度の量で効果があるかが異なることから、通院しながら少しずつ薬を調整して、その人に合った処方を探します。薬を減量する過程での再燃も多く、薬剤を完全に中止した上で筋炎症状がないという意味での「完治」の状態を達成するのは難しい方が多いため(薬剤を上手くつかって症状をコントロールするのが現実的な目標になります)、継続的に通院を続ける必要があります。

多発性筋炎皮膚筋炎で入院が必要となるのは、最初の診断確定と治療方針を決定する場合、病気が高度に再燃した場合、間質性肺炎や各種腫瘍(がん)の治療を行う場合です。

膠原病は専門性の高い分野です。小さな病院では膠原病が専門の医師がそもそもおらず、診療が難しい場合もあるでしょう。膠原病科のある総合病院であれば、院内で他の診療科(呼吸器内科や消化器内科、婦人科などのドクター)と連携相談しながら治療に当たってくれることが多いです。筋炎を含む膠原病自体の稀少性から、他の科の病気と比べると、適切に診療できる経験をもった医師の数自体が少ないのが膠原病ですが、長く付き合っていく病気であるため、信頼できる主治医を見つけることが大切です。

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