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多発性筋炎、皮膚筋炎

多発性筋炎、皮膚筋炎の基礎知識

多発性筋炎、皮膚筋炎とは?

  • 筋肉が炎症(筋炎)により破壊され、筋肉に力が入りにくくなったり、筋肉を動かすと痛くなる病気
    • 筋炎の症状だけのときは多発性筋炎、筋炎に加えて特徴的な皮膚の症状もある場合は皮膚筋炎と呼ぶ
    • 一部に筋炎の症状がほとんど出ないパターンもあり、その場合は肺のダメージが出やすく注意が必要である
  • 男女比1:2と女性に多く発症し、子どもから高齢者まで発症する
  • 自己免疫疾患の一種
    • 自己免疫疾患とは、免疫が異常に働いて、自分自身の体を攻撃してしまう病気のこと
  • ほかの自己免疫疾患と一緒に起こることが多い
  • 皮膚筋炎はがんと一緒に発生することも多い
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎で筋力が低下すると、筋肉トレーニングを行っても筋力は戻らない
    • 筋力を戻すには原因となっている病気自体を治療する必要がある
  • 長年のうちに肺や心臓の異常を起こして死に至る場合もある

症状

  • 筋肉の症状
    • 体の胴体に近い部位の筋肉(二の腕や太もも、首)の力が弱くなる
    • 左右対称に筋力が低下し、数週間から数か月でしだいに進行する
    • 筋肉が細くなる(筋萎縮
    • 筋肉痛、筋肉に圧力をかけたときの痛み(圧痛)が出る
  • 筋肉の力が弱くなることで起きる症状
    • しゃがんだ状態から立ち上がれなくなる
    • 腕を上に持ち上げるのが難しくなる
    • 首が下がる、飲み込みにくくなる(嚥下障害
    • 進行すると手先の動きもしにくくなる
    • 重症では呼吸の動作もしにくくなる
    • 顔の筋肉には症状が出にくい
  • 皮膚の症状
    • まぶたが紫色に腫れる(ヘリオトロープ疹)
    • 指関節の背面や肘が赤くがさがさになる(ゴットロン徴候)
    • 赤い発疹:顔、首、胸、背中、肩、肘、足首など
    • かゆみが出ることもある
    • 手のひらが荒れてひび割れができる
    • 皮膚の下に硬い塊(石灰化)ができる
  • その他の症状
  • 感覚の異常はない
  • 間質性肺炎合併することがあり、その場合は今までと同じ動作でも息苦しさを感じたり、咳が出たりする

検査・診断

  • 診断においては、薬によるものや、内分泌疾患(ホルモンの異常)、遺伝性筋疾患(生まれつき筋肉が壊れやすい病気)などと区別することが重要
  • 皮膚症状の診察
    • 皮膚筋炎に特徴的な皮膚の症状がないかなどを調べる
  • 筋力測定:筋力低下がないかを調べる
  • 身体診察
    • 神経の異常による症状が出ていないかを調べる
    • 多発性筋炎・皮膚筋炎では神経に異常はないが、神経の病気で筋力低下が出る場合もあるので区別が必要
  • 血液検査
    • 筋肉が壊れたときに上昇するCKやアルドラーゼの値をチェックする
    • 多発性筋炎・皮膚筋炎で特徴的に陽性になる自己抗体(抗RNP抗体や抗Jo-1抗体など)を調べる
  • 画像検査:悪性腫瘍がん)を合併していることもあるため、体にがんがないかなどを調べる
    • 超音波検査
    • 胸部CT検査間質性肺炎肺がんを合併していないかを調べる
    • 腹部CT検査:お腹の臓器(肝臓・胃・膵臓など)にがんがないかを調べる
    • MRI検査:筋肉に炎症がないかの特定にも有用である
  • 筋電図:筋炎に特徴的な異常がないかを調べる
  • 生検:筋肉、皮膚にリンパ球の浸潤がないか調べる
    • 筋肉の一部または皮膚の一部を切り取ってきて顕微鏡で詳しく調べる

治療

  • 入院して安静とし、ステロイド薬(プレドニゾロンなど)内服による治療が基本となる
    • 症状にもよるが、最初は多い量を1か月ほど内服し、徐々に内服量を減らしていく
    • ステロイド薬を減らしていく過程で、免疫抑制薬の内服も併用することがある
    • ステロイド薬を長期内服すると副作用が多いので、副作用に対処する薬などを使う
    • ステロイド薬とあわせて使われることがある薬剤
      ビタミンD、ビスホスホネート:ステロイド薬による骨粗しょう症の予防
      ・プロトンポンプ阻害薬:ステロイド薬による胃潰瘍の予防
      抗菌薬:免疫を抑えることによる感染の予防
  • 使われる免疫抑制薬の例
    • アザチオプリン(商品名イムランなど)
    • メトトレキサート(商品名リウマトレックスなど)
    • シクロフォスファミド(商品名エンドキサンなど)
  • 薬の治療で症状の改善が期待できるが、筋力低下が残る場合や再発する場合も多い
  • 間質性肺炎合併している場合は、より強く免疫を抑える治療が必要となることが多い
  • 悪性腫瘍がん)が合併していることがわかった場合は、がんに対する治療を行う

多発性筋炎、皮膚筋炎の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

多発性筋炎、皮膚筋炎では、手足の筋力が弱くなったり、全身のだるさや、まぶたや手の皮膚の変化(色や質感の変化)が出現します。

ご自身が多発性筋炎、皮膚筋炎でないかと心配になった時、最初に受診するのは膠原病科かリウマチ科の病院が適しています。専門の医師はリウマチ専門医になりますが、リウマチ専門医には内科系の医師と整形外科系の医師がいるため区別が必要です(両者を認定しているのは同じ学会です)。その医師が内科に所属しているのか、整形外科に所属しているのかが分かれば判断がつくかと思いますが、多発性筋炎、皮膚筋炎を診療するのは内科系のリウマチ専門医になります。

多発性筋炎、皮膚筋炎の診断は問診と診察、血液検査、そして筋電図や筋生検といった特殊な検査で行います。血液検査では一般内科で測定しない特殊な項目も確認しますので、内科のクリニックを受診してその日のうちに診断がつく、というような病気ではありません。筋電図や筋生検は必須ではありませんが、他の検査だけで診断がつかない場合に行われます。地域の中核病院や大学病院でなければ受けられないような検査です。

特殊な医療機関としては、リウマチセンターを開設している病院もあります。これらの医療機関では、多発性筋炎、皮膚筋炎を専門とする医師やその他スタッフが多く、重症度が高かったり、他の病気と似ていて診断の確定に難渋しているような方に適しています。なお、俗に「リウマチ」とだけ言うと医学的には関節リウマチを指すことが多いですが、「リウマチ系疾患」、「リウマチセンター」というような場合については、関節リウマチに限らず、その他の関節や全身の痛みを伴う疾患(膠原病疾患と重なります)をまとめて指します。多発性筋炎、皮膚筋炎もこの中に含まれる疾患の一つです。

もしかかりつけの内科医師がすでにいるようであれば、いずれの場合でもそこから診療情報提供書(紹介状)をもらった上でより専門的な病院を受診することをお勧めします。多発性筋炎、皮膚筋炎を診断する上で普段の様子やその他の病気の有無、検査結果はとても参考になりますし、診療情報提供書がないと基本的な検査を一からやり直すことになってしまうためです。


この病気でお困りの方

多発性筋炎、皮膚筋炎は自己免疫疾患といって、免疫細胞(白血球)が不適切に活動してしまうことが原因の病気です。したがって治療は、免疫細胞の働きを抑えるような内服薬や注射薬になります。

患者さんによって効果的な薬が異なることと、同じ薬でもどの程度の量で効果があるかが異なることから、通院しながら少しずつ薬を調整して、その人に合った処方を探します。治療のために必ず入院しなければならないというような病気ではありませんが、完治が簡単に望める病気でもないため(症状が取れたり、薬の内服が必要なくなったりすることはあります)、継続的に通院を続ける必要があります。

多発性筋炎、皮膚筋炎で入院が必要となるのは、最初の診断確定の検査で入院が必要な場合、そして多発性筋炎、皮膚筋炎で生じやすい間質性肺炎や各種腫瘍の治療を行う場合です。

膠原病は専門性の高い分野ですので、膠原病科(あるいはリウマチ科)の医師の中でも、専門とする分野が分かれていることが多いです。多発性筋炎、皮膚筋炎のような自己抗体関連疾患(関節リウマチ全身性エリテマトーデスなど)を中心で診ている人もいれば、脊椎関節炎(強直性脊椎炎など)や血管炎(顕微鏡的多発血管炎など)などを専門に見ている人もいます。小さな病院では膠原病が専門の医師がそもそもおらず、診療が難しい場合もあるでしょう。膠原病科のある総合病院であれば、それぞれの分野の専門家がいるでしょうから、適切な医師が担当となったり、院内で連携相談しながら治療に当たってくれることが多いです。他の科の病気と比べると、適切に診療できる経験をもった医師が少ないのが膠原病でもありますが、長く付き合っていく病気であるため、信頼できる主治医を見つけることが大切です。





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