前立腺がんの原因:年齢や遺伝、生活習慣との関連と、予防について
前立腺がんは50歳以降の人に多くみられ、高齢になるほどかかりやすくなります。また、家族に前立腺がんにかかった人がいると発生しやすいことがよく知られています。
1. 前立腺がんと加齢は関係があるのか
前立腺がんは50歳以降の人に多く見つかります。 年齢を重ねるにつれて発見される頻度が上がっていき、65歳ごろから急激に前立腺がんが発見される人が多くなります。一方で20歳代や30歳代で前立腺がんになることはまれです。
2. 前立腺がんは遺伝するのか
前立腺がんの発病には遺伝が関係していると考えられています。親兄弟が前立腺がんにかかった人は、そうではない人と比べて前立腺がんが発生するリスクが2.4倍から5.6倍とされています。
近年の研究で前立腺がんの発生に関係する遺伝子の異常(変異)が発見されてきています。今後のさらなる研究により前立腺がんの予防や、一人ひとりに合わせた治療に応用されることが期待されています。 しかしながら、現在のところ前立腺がんの有効な予防法は確立されてはいません。前立腺がんに命を脅かされないためには早期発見・治療が重要です。前立腺がんを
3. 前立腺がんとの関係が気になるもの:タバコ(喫煙)・飲酒・性行為・乳製品
前立腺がんとの関連が調べられている身近な生活習慣や食品などについて説明します。
タバコ(喫煙)
喫煙と前立腺がんの発生に関するはっきりとした関係性は不明です。喫煙本数と年数が多いほど前立腺がんにかかるリスクが高くなるという研究報告がある一方で、前立腺がんの発生と喫煙の関連性は薄いという報告もあり、現在のところ確たる証拠はありません。
前立腺がんによる死亡に注目すると、欧米からの報告では、1日に25本吸う、喫煙歴が40年以上のようないわゆるヘビースモーカーは、前立腺がんによる死亡の危険性が上昇したという欧米からの研究報告があります。
喫煙は肺がんに代表されるように多くの
「禁煙に失敗するのは当たり前 !?:ニコチン依存から抜け出すためにできること」や「禁煙外来に通えば「いったんは」禁煙できる!!」も参考にしてみてください。
アルコール(飲酒)
現時点では飲酒と前立腺がんに明らかな原因とは考えられていません。
アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドや、アルコールが性
前立腺への刺激
射精(性行為)
射精と前立腺がんとの関係は明らかではありません。
射精というデリケートな生活スタイルについての調査は簡単にはできないので、検証が不十分な可能性がありません。一方で、射精の回数が少ないと前立腺がんになりやすいとする報告もないわけではありません。
少なくとも前立腺がんを恐れて射精を控えることはなさそうです。
乳製品の摂取
前立腺がんの発生には
4. 前立腺がんは予防できるか?
前立腺がんには風邪のように人から人へうつる性質はありません。また、
飲み薬による予防は可能なのか
薬を飲むことにより前立腺がんの予防ができるかという試みが行われており、次の薬に予防効果が期待されています
しかしながら、上記の薬で現在のところ前立腺がんを予防できたという確たる証拠を出せたものはありません。前立腺がんの予防目的で有効と言える薬はないのが現状です。
食事療法による予防は可能なのか
前立腺がんの発生には人種により大きな差があります。
特に欧米人の前立腺がんの発生頻度はアジア人に比べて約10倍とされています。
また、人種だけではなく食事を含む環境も前立腺がんの発生に大きく関わると考えられています。過去に行われた研究によると、米国に移住した日本人の前立腺がんの発症率は日本に住む日本人と欧米人との中間程度だと報告されています。この現象の原因として、食事などを含む環境的な要因が前立腺がんの発生に大きく関わっていることが考えられています。
次に食事と前立腺がんの発生について調べた研究を中心に説明していきます。
■大豆・イソフラボン
豆類及び大豆に含まれる大豆イソフラボンの摂取により、前立腺がんにかかる危険性を下げるという報告がありますが、どの程度摂取をすれば効果があるかという見解は定まっていません。
■緑茶
緑茶に含まれるカテキンは物資が含まれており、抗
■コーヒー
コーヒーは前立腺がんの予防効果があるという報告とないという報告があり、関連については不明確です。
■トマト:リコペン
リコペンはトマトに多く含まれる赤い色素で、抗酸化作用が強いとされています。リコペンの摂取量が多いほど前立腺がんの発生リスクが低下するという報告がいくつかりますが、明確な予防効果についてはまだはっきりとはしていません。
■避けるべき食事
極端な肉食などによる動物性脂肪の過量摂取は避けるべきと考えられます。動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は血液中の男性ホルモンを増加させるので、前立腺がん発生のリスクを高めると考えられています。ただし、常識的な範囲なら肉を食べても影響がないと考えられるので、極端に肉の摂取を減らす必要はないと考えられます。
前立腺がんになった人の食事の考え方について
前立腺がんの進行予防に効果のある食事は、現在のところ明らかにはなっていません。一方で、前立腺がんの治療を進めて行く上では、全身状態を整えることが大事です。
前立腺がんと診断されてからは治療を考えることになります。前立腺がんの治療では手術、
例えば、もともと糖尿病がある人に前立腺がんが見つかったとします。手術療法を考えるときには、良好な
また、ホルモン療法を行う際には糖尿病の悪化は避けられません。前立腺がんになったから、がんの進行を遅らせるというよりも、バランスの良い食事をとって体力をつけ、しっかりと治療を行えるようにすることが大事です。
参考:
「前立腺がん診療ガイドライン」
「標準泌尿器科学」、(赤座英之/監)、医学書院、2014
Br J Cancer. 2013;108:708-14
Cancer Res. 1998;58:442-447
Nutr Cancer. 2008;60:421-441
Br J Cancer. 1991;63:963-969