医師たちがつくる病気事典メドレー

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の基礎知識

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)とは?

  • 手足の静脈にできた血のかたまりが血管の中を流れて、心臓から肺へ向かう動脈に詰まってしまった状態
    • 血管が詰まると肺の血流が途絶えてしまい、酸素を体内に十分とりこめなくなってしまう
    • 急に症状を起こす場合が多いが、少しずつ血管が詰まることもある(慢性血栓塞栓性肺高血圧症
  • 塞栓の原因となり得る病気や状態
    • 血栓性静脈炎静脈血栓症
    • もともと血液が固まりやすい
    • 長時間同じ姿勢でいて、手足の血流が悪くなってしまった
    • 脱水症
    • 妊娠中や経口避妊薬(ピル)を服用中
    • 手術や大きなけがの後
      ・帝王切開のあとは要注意
    • がんの患者
  • 長時間の飛行機のフライトは、長時間同じ姿勢でいて、かつ脱水が起こりやすい環境であるため肺塞栓が起こりやすいと言われており、「エコノミークラス症候群」という言葉ができた

症状

  • 主な症状:以下のような症状が突然出現する
    • 胸の痛み
    • 息切れ、呼吸困難
    • 動悸
    • めまい、失神
  • 軽いものでは無症状のこともある一方、重症例では命に関わる場合もある
  • 塞栓の症状には様々なパターンがあり、症状のみから診断することは難しい
  • 肺塞栓症の原因が足の深部静脈血栓の場合、片方の足のむくみ(靴下の跡が強く残る等)などの症状が併存している場合がある

検査・診断

  • 画像検査
    • 胸部造影CT検査
    • 心臓超音波検査
      ・重症度を判断することができる
  • 血液検査や胸部レントゲン検査、心電図検査も参考になるが、それだけで診断をつけることはできない
  • 足に血のかたまりがあるかどうかは超音波検査CT検査で調べることができる

治療

  • 主な治療
    • 重症で、すぐに命に関わるような場合には手術を行ったり、心肺補助装置(PCPS)を使用する場合がある
      ・ただし、どこの医療機関でもすぐに行える治療ではない
    • 重症例以外には血のかたまりを溶かす薬を使う
      血栓を急激に溶かす方法と、それ以上血栓が大きくならないように抗凝固薬を使用して改善を待つ方法がある
      ・急激に血栓を溶かす治療は体の色々な場所で出血を起こす危険があるので、出血しそうな場所がないことを確認しなければ使えない
  • 補助的な治療
    • 酸素の取り込みが障害されるので、酸素マスクで補充することが必要
    • 重症の場合には人工呼吸器を使用することも必要になる
  • 塞栓は予防することが大事
    • 長時間のフライトなど、同じ姿勢を続ける場合には、時々立って歩いたり、足のマッサージをすることが有効
    • また、水をよく飲むことも重要
  • 足の血のかたまりの量があまりに多い場合は、下大静脈フィルターと言って、血のかたまりをひっかける「ざる」のようなものを胸の血管に留置して、血のかたまりが肺に流れるのを防ぐ方法もある

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)に関連する治療薬

クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)

  • ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
    • 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
  • ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
    • 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
    • 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)についてもっと詳しく≫

ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)

  • 血液が固まる過程を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因(血液凝固因子)が必要となる
    • 本剤は血液凝固因子の一つトロンビン(第IIa因子)を阻害し、血液の抗凝固作用をあらわす
ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)についてもっと詳しく≫

肺塞栓症(エコノミークラス症候群)の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

肺塞栓症では、息切れや胸痛、時には失神などの症状がみられます。

肺塞栓症の診断はCTで行います。国内の総合病院であればほとんどのところにCTの設備がありますので、診断の観点からは特殊な病院を選ぶ必要はありません。しかし、肺塞栓症の治療まで行うとなると一定以上の規模の病院である必要があることや、診断がつけば一刻も早く治療を行う必要があるためその点に注意が必要です。

病状によっては緊急での治療が必要で、カテーテル治療後もICU (intensive care unit), HCU (high care unit) などと呼ばれるような集中治療室で引き続き治療を行うことになります。このように、中規模以上の病院で、循環器疾患の診療体制が整っている病院であることが望ましいです。


この病気でお困りの方

肺塞栓症の根本治療としては、点滴や注射で血液を固まりにくくしたり、血の塊(血栓)を溶かすような治療を行う場合と、カテーテル治療、そして手術による治療があります。どの治療を行うかは、病気の重症度と病院の設備や医療体制によって分かれてきます。

手術を行うのは、極めて重症な場合や、何らかの事情で点滴や注射の治療、そしてカテーテル治療が行えないような場合(薬に対するアレルギーがあるなど)です。そのようなまれなケースを除けば、一般的にはカテーテル治療を行っている病院で治療を受けることになります。

肺塞栓症の治療は、診断がつけばその場で緊急で行われることが多いです。平日の日中であれば良いのですが、土日祝日や夜間は院内に残っているスタッフが少ないため、緊急で治療を行える病院と、そうでない病院があります。ある程度の規模の病院や、カテーテル治療の件数が多い病院、循環器専門医の多い病院の方が、時間外の緊急治療により迅速に対応できるところが多い傾向にあります。

そして肺塞栓症の治療が一旦落ち着いた後は、肺塞栓症の再発を防ぐことが治療の目的となります。血液をさらさらにする薬を内服するのは大切な方法の一つです。こちらであれば、一般的な内科、もしくは循環器内科のクリニックへ定期的に通院することで治療が可能です。

まだ体内(特に足の部分が多いです)に血の塊が残っていて、その血栓が流れてしまうと再び肺塞栓症を引き起こす可能性がある、という場合には、再発予防のためにカテーテル治療を行うケースもあります。この治療では、下大静脈フィルターと呼ばれる網の目状の金属を、血管の中に入れてそのまま置いておくことを目的とします。大きな血液の塊が流れてきた時に、それが大切な血管に詰まる前に、このフィルターに引っかけて食い止めるためのものです。初回の入院時に、治療に引き続いてこの予防処置を行ってしまうケースも多いでしょう。





version 7.4(β)
本サービスにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。本サービス上の情報や利用に関して発生した損害等に関して、弊社は一切の責任を負いかねますことをご了承ください。
©Medley, Inc. All Rights Reserved.