ふせいみゃく
不整脈
心臓が正常な一定リズムで脈を打つのではなく、速くなったり遅くなったり、リズムが乱れたりすること。心臓の病気や薬剤による副作用、血液中電解質のバランス異常などが原因となる
11人の医師がチェック 123回の改訂 最終更新: 2021.06.14

不整脈の基礎知識

POINT 不整脈とは

心臓の鼓動は一定のリズムで打たれていますが、何らかの原因でリズムが乱れた状態を不整脈といいます。心臓を動かすのに必要である電気回路が正しく動いていない時に不整脈が起こりますが、その原因はさまざまです。主な症状は脈が飛ぶ感覚・動悸・冷や汗・吐き気・めまい・意識消失などになります。 症状や身体診察に加えて、心電図検査を行って診断します。一時的に起こる不整脈(発作性不整脈)の場合は、検査した時にたまたま不整脈が出ないことがあります。その場合は24時間装着型の心電図検査(ホルター心電図)を行うことがあります。治療には脈を抑える薬や脈のリズムを整える薬を用います。また、非常に重症である場合は電気的除細動を行います。不整脈が心配な人や治療したい人は、循環器内科を受診して下さい。

不整脈について

  • 心臓は普段は一定のリズムで脈を打つが、何らかの原因で、脈が速くなったり遅くなったり、リズムが乱れたりすることがある
    • こういった状況をまとめて「不整脈」という
  • 不整脈の原因
    • 心臓の中を電気信号が規則正しく走ることで鼓動が一定に保たれているが、その電気信号の流れに変化が起こることで不整脈が起こる
    • 多くの場合は体質や疲労やストレス、加齢なども間接的に影響しており、必ずしも心臓の明らかな病気があって起こるわけではない
    • 一部には、心筋梗塞心不全などの心臓が悪くなってしまう病気が原因になることで起こる不整脈もある
  • 不整脈の分類(詳細はそれぞれの疾患を参照)
  • 不整脈にはたくさんの種類があり、危険な不整脈とそうでない不整脈に大別できる
    • リスクの高い不整脈としては、次のようなものがある
      • 不整脈が起こると意識が遠のくもの(極端に脈が遅くなっているか早くなっている可能性)
      • 脈が遅くなり、息切れを感じるもの(心不全を起こしている可能性)心房細動(珍しい不整脈ではないが、脳梗塞に繋がり得る)

不整脈の症状

  • 不整脈の種類や程度によって症状が変わってくる
  • 本人は何も気づいていなくても、健康診断の心電図検査で不整脈があると言われることも多い
  • 不整脈の代表的な症状
    • 動悸(脈が速い不整脈に多い)
    • 冷や汗
    • 吐き気
    • めまい
    • 息切れ
    • 浮腫
    • 意識が遠のく(失神や意識消失)
  • 脈が飛ぶタイプ(期外収縮など)に特徴的な症状
    • 脈が飛んだり抜けたりしたような感覚がある
    • ドクンドクンという強い脈を感じる

不整脈の検査・診断

  • 心電図検査
    • 最も有効な検査で、心臓の電気の流れに異常がないかを数分で調べることができる
      • 場合によっては24時間装着して即ているタイプの心電図ホルター心電図)を行い、一時的な検査ではわからない心臓の状態などを調べる
      • 運動して心臓に負担がかかった時の心電図(運動負荷心電図)を行うこともある
      • USBのような小型の心電計を胸部に埋め込み心電図を長期にわたり調べることがある
        • 埋め込み型心電計といい意識が遠のく原因に不整脈が疑われるが他の検査で不整脈を特定できない時に行う
  • 画像検査:心臓の動きや大きさなどを調べる
    • 胸部レントゲン検査(X線写真)
    • 心臓超音波検査エコー検査)
  • 血液検査:不整脈の原因となる病気の有無を調べる

不整脈の治療法

  • 主な治療
    • 不整脈の種類と程度によって選択肢が変わる
    • 症状がなく、危険ではない不整脈に関しては様子を見ることが多い
    • 症状が辛い場合や緊急性の高いタイプの不整脈の場合には優先的に治療を行う
      • ほとんどの場合、まずは薬による治療を行う
      • 薬物療法でも治療効果がなければ電気的除細動を考慮する
    • 脈が遅い不整脈の場合
      • 意識が遠のく場合や心不全になる場合はペースメーカーを埋め込む
    • 脈が速い不整脈の場合
      • 血圧が下がったり意識が遠のいたりする場合には電気的除細動を行う
        • 心臓に強力な電気を通してリズムを一旦リセットする
      • 症状が強い場合はカテーテルアブレーション治療を行う
        • 余計な電気信号が出なくするためにカテーテル(細い管)を血管に通して心臓の治療を行う
        • 不整脈の原因となる部位を機械で焼灼する
      • 脈が速い不整脈で意識を失った場合には埋込型除細動器(ICD)を埋め込む
        • ペースメーカに似た機械、次に不整脈が出たときに自動で電気的除細動を行い不整脈を止める
  • 薬剤による治療
    • 抗不整脈薬
      • 脈を遅くする薬(不整脈が出たときに脈が速くなりすぎるのを抑える)
      • 脈のリズムを整える薬(不整脈を出にくくする)
    • 心房細動心房粗動に対して、脳梗塞を防ぐ目的の薬剤
      • 抗凝固薬(血液をサラサラにして血栓ができにくくする)
  • 体内に医療機器(ペースメーカー、ICDなど)を入れた場合の注意点
    • 体内の医療機器に細菌感染が起こると命の危険に関わる状態となる
    • 感染症が明らかな場合には医療機器の抜去を基本とする
    • その際、医療機器の再挿入は慎重な判断を要する

不整脈に関連する治療薬

FXa阻害薬(抗凝固薬)

  • 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞や心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
    • 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
FXa阻害薬(抗凝固薬)についてもっと詳しく

Naチャネル遮断薬(I群抗不整脈薬)

  • 脈に関与する電気信号の一つであるNa(ナトリウム)イオンの通り道を塞ぎ、乱れた脈(主に頻脈)を整える薬
    • 不整脈は何らかの原因で脈が速くなったり、遅くなったり、リズムが乱れる
    • 脈(脈拍)はNaやK(カリウム)などの金属イオンの心筋細胞への出入りによる電気信号(活動電位)によりおこる
    • 本剤はNaイオンの通り道であるNaチャネルを遮断し、脈の乱れを整える作用をあらわす
  • 抗不整脈薬はその作用などによって、I~IV群に分類される
    • 本剤はI群に属する薬剤となる
  • 本剤はNaチャネル遮断作用以外の作用や特徴によりさらにIa群、Ib群、Ic群に分けられる(薬剤の中には複数の作用をもつものもある)
    • Ia群は活動電位がおさまるまでの時間を延長する
    • Ib群は活動電位がおさまるまでの時間を短縮する
    • Ic群は活動電位がおさまるまでの時間を変えない
Naチャネル遮断薬(I群抗不整脈薬)についてもっと詳しく

心抑制型カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)

  • 血管や心筋の細胞内へのカルシウムイオンの流入を阻害し、血管を広げ、心臓の負担を軽減する薬
    • 狭心症では血管が狭くなることで心臓に十分な酸素などが届かなくなっており、胸のしめつけや息苦しさなどがあらわれる
    • 血管の収縮や心臓の拍動はカルシウム(Ca)イオンの細胞内への流入が関与する
    • 本剤は血管や心筋でのCaイオンの流入を阻害する作用をあらわす
  • 薬剤によっては、頻脈性の不整脈や高血圧などへ使用するものもある
心抑制型カルシウム拮抗薬(ジルチアゼム、ベラパミル)についてもっと詳しく

不整脈の経過と病院探しのポイント

不整脈が心配な方

不整脈とは心臓内の電気信号の流れが乱れ、適切に脈を打つことができない状態です。期外収縮といって健康な人にも常日頃から瞬間的に生じているものもあれば、心室細動といって数秒間で意識を失い、除細動を行わないと数分以内に死に至る危険な不整脈もあります。このように安全なものから危険なものまでを全て含めて不整脈と呼びます。

健康診断で不整脈を指摘されたり、ご自身で胸の動悸(ドキドキする感覚)に気づいたような場合には、もしかかりつけの内科クリニックがあれば、まずはそこで相談してみることをお勧めします。特に普段かかっている病院がなければ、一般内科もしくは循環器科クリニックの受診も良いでしょう。

不整脈を診断する上で最も重要な検査は心電図検査です。内科のクリニックでも心電図計を置いているところは多いですし、循環器科クリニックではほぼ必ず置いてあるでしょう。受診前には心電図計があるかどうかを事前にお問い合わせされるのも良いかもしれません。

心電図計では、不整脈が発生しているその瞬間に計測を行わないと不整脈の診断をつけることができません。そのため、一時的もしくは瞬間的にしか出ない不整脈の場合には、それを心電図で捉えるのが難しいことが多いというのが難点です。このようなケースではホルター心電図といってウェアラブルで装着したまま1日過ごせる小型の心電図計を使用します。連続で1-2日ほど装着していれば、その間のどこかで不整脈が発生する可能性が高いという考え方です。実際のところは不整脈の様子(どのくらい速いテンポになるのか、何秒何分続くのか、脈のリズムは一定かランダムか)から不整脈の危険度が分かることもありますので、ホルター心電図の検査が必要かどうかを含めて、お近くの内科で見てもらうのが良いでしょう。

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不整脈でお困りの方

不整脈の中には特に治療が必要ないものもあります。「時々胸がどきどきするがいつも自然と治まる」という場合には、危険なものでなければ治療を行わずに様子を見るべきと判断される場合もあるのです。不整脈の発生を抑える薬というのもありますが、効果が確実ではない一方で、中には薬によってかえって不整脈がひどくなってしまう人もいるため、「熱に解熱剤」といったような感覚でとりあえず「不整脈には抗不整脈薬」というわけにはいかないという問題があります。

不整脈の治療を考える際には不整脈の種類を特定することが大切ですが、不整脈は出たり引っ込んだりするので、病院の検査の時に異常が見つからないことも多いです。そのような時には、市販の携帯型心電計などで症状が出たときの心電図を記録することが診断のカギになることもあります。

特に治療が必要な不整脈や、症状が強い不整脈の場合にはカテーテルを用いた治療があります。この治療では不整脈の再発が完全に抑えられる可能性もある一方で、ごくまれに心臓の壁に小さな穴が空いてしまったり、別の種類の不整脈が出現してしまったりするリスクがあります。この治療を行うかどうかはリスクと期待される効果のバランスによりますので、循環器内科の医師から詳しい説明を受けた上で一緒に治療を選ばれるのが良いでしょう。

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