はいがん(げんぱつせいはいがん)
肺がん(原発性肺がん)
肺にできたがん。がんの中で、男性の死因の第1位
29人の医師がチェック 297回の改訂 最終更新: 2024.03.05

肺がんの生存率は?余命は当たる?

肺がんは組織型とステージの進行度によって平均的な生存率は分かっています。

とは言え、これらは統計でまとめられた平均的な数字です。ご自身の肺がんに当てはまるとは限らないということは是非覚えておいてください。仮に余命が1年と言われても5年以上生きる人はいますし、残念ながら3か月ほどで亡くなってしまう人もいます。

数字は参考程度に捉えてください。

生存率とは?

生存率を考えるときによく使われる数字が、5年生存率や1年生存率です。5年生存率は5年後にも生存している人の割合です。1年生存率は1年後にも生存している人の割合です。

がんの生存率を語るときには基本的に5年生存率を用います。しかし、あまりにがんによって亡くなる率が高い場合は、5年生存率がほとんど0に近い数字になってしまいます。その場合は1年生存率を用いて考えます。

肺がんには、腺がんや扁平上皮がん、小細胞がんといった多くの種類があります。しかし、その性質から小細胞がんそれ以外に大別されることがあります。この分け方によって、小細胞がんと非小細胞がんと表記します。

生存率に関しても、小細胞がんと非小細胞がんで分けて考えることが多いです。以下にステージごとの非小細胞がんの生存率を表にします。

(以前のステージ分類のデータなので、現在の分類とは多少異なります。参考として御覧ください。)

【非小細胞がんのステージと生存率】

ステージ

5年生存率

ⅠA期

82.0%

ⅠB期

66.1%

ⅡA期

54.5%

ⅡB期

46.1%

ⅢA期

30.0%-38.0%

ⅢB期

15.0%

Ⅳ期

1年生存率50%

上の表は肺腺がんも肺扁平上皮がんもまとめて考えていますが、肺がんの種類によって治療法が少し変わってくることがあります。がんの種類ごとの治療法に関して詳しくは、「肺がんでステージと同じくらい大事な「組織型」とは?」のページや「肺腺がんとは?原因、症状、検査、治療について」のページ、「肺扁平上皮がんとは?」のページに詳細情報がありますので参考にしてください。

次に小細胞がんに関してです。

肺小細胞がんは、肺がんの中でも最も進行が早いです。肺がんに気づいた時にはすでに進行していて、手術を受けることは難しいことが多いです。

そこで小細胞では手術以外の治療法を選択する判断材料として、限局型と進展型という考え方をします。

限局型と進展型で肺小細胞がんの治療方法が変わります。肺小細胞がんの限局型と進展型の治療で大きく違う点は、放射線治療を行えるかどうかです。進展型の肺小細胞癌に対して放射線治療を行うと、放射線が当たる範囲が広くなってしまうので、放射線による肺へのダメージ(放射線性肺臓炎)のリスクが高くなりすぎてしまいます。

ここで、肺癌取扱い規約では限局型と進展型の境に明確な定義がありません。一般的な解釈としては、リンパ節転移が「腫瘍と同じ側の胸郭内リンパ節・両側縦隔リンパ節・両側鎖骨上窩リンパ節までに限られている状態で、癌性胸水や心嚢水のない場合」が限局型と呼ばれます。

もっと詳しく知りたい方は「肺小細胞がんとは?」のページを見てください。

【小細胞がんのステージと生存率】

病期

5年生存率

限局型(LD)

20%

進展型(ED)

50%(1年生存率)

残念ながら肺小細胞がんは治療しても生存率が低いです。特に進展型(ED)の場合は治療しても余命が平均1年程しかありません。もちろん、これよりも長く生きる可能性もありますので、自分に最もあった治療法を探すようにしてください。

1. 肺がんの生存率はステージで決まる?

肺がんの生存率はステージ(がんの進行度)によって推測できます。もちろんこの数字は平均的なものなので、必ずしも自分に当てはまるとは限りません。参考程度として見るようにしてください。

肺がんのステージごとの生存率は?

肺がんのステージは生存率の目安になります。肺小細胞がんではステージ分類を行わないことがほとんどですので、ここでは非小細胞がんに関して書いていきます。

肺がんのステージと生存率は以下のようになります。

(以前のステージ分類のデータなので、現在の分類とは多少異なります。参考として御覧ください。)

【非小細胞がんのステージと生存率】

ステージ

5年生存率

ⅠA期(手術)

82.0%

ⅠB期(手術)

66.1%

ⅡA期(手術)

54.5%

ⅡB期(手術)

46.1%

ⅢA期

30.0%-38.0%

ⅢB期

15.0%

Ⅳ期

1年生存率50%

ステージとは?

がんのステージとは、簡単にいうとがんがどれくらい進行しているかの指標です。がんがどれぐらいの範囲まで広がってきているのかを画一的に評価するものです。病気の進行度を評価するのには画一的な基準があることは重要です。ステージを基準としてがんの治療法が決定されます。

ステージはステージⅠからステージⅣまでに分かれます。肺がんではさらに細かくⅠA、ⅠBのように分けます。国際的にはローマ数字(Ⅲなど)で書き表すのが普通ですが、このサイトではアラビア数字(3など)で記載しているところもあります。

がんのステージを決めるために、TNM分類という方法が使われます。TNM分類とは、がんの大きさ(T)・リンパ節転移(N)・血行転移遠隔転移)(M)をそれぞれ段階に分けて評価する方法です。TNM分類に従ってがんのステージが決められます。

下にTNM分類とステージの対応を説明します。やや専門的になるので、自分に関係ないと思う部分は読み飛ばしてください。

【TNM分類(UICC及びAJCCのTNM分類第8版に基づく)】

T-原発腫瘍(腫瘍径はすりガラス影を含まずに充実成分で計測する)

  • TX:原発腫瘍の存在が判定できない、あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診でのみがん細胞は見られるが、画像診断や気管支鏡では観察できない
  • T0:原発腫瘍を認めない
  • Tis:上皮内癌(carcinoma in situ)充実成分径が存在せず、すりガラス影≦30mm
  • T1:腫瘍最大径≦30mmの腫瘍が臓側胸膜に覆われており、葉気管支より中枢への浸潤が気管支鏡検査をしても見えない(すなわち主気管支に及んでいない)
    また、腫瘍の大きさで以下の亜分類がある
    • T1mi:minimally invasive adenocarcinoma(MIA)充実成分≦5mmかつすりガラス影≦30mm
    • T1a:腫瘍最大径≦10mm
    • T1b:腫瘍最大径>10mmでかつ≦20mm
    • T1c:腫瘍最大径>20mmでかつ≦30mm
  • T2:腫瘍最大径>30 mmでかつ≦50 mmの腫瘍、または以下のいずれかであるもの
    • 腫瘍最大径<30mmで主気管支に腫瘍が存在する
    • 臓側胸膜に浸潤している
    • 肺門まで連続する無気肺か閉塞性肺炎があるが片側の肺全体には及んでいない
      また、腫瘍の大きさで以下の亜分類がある
    • T2a:腫瘍最大径>30mmでかつ≦40mm
    • T2b:腫瘍最大径>40mmでかつ≦50mm
  • T3:最大径>50 mmでかつ≦70mmの腫瘍、または以下の場合である
    • 横隔膜、胸壁(superior sulcus tumorを含む)、横隔神経、縦隔胸膜、壁側心膜のいずれかに直接浸潤している
    • 同一葉内の不連続な腫瘍結節(同一葉内の転移)
  • T4:最大腫瘍径>70mm、または大きさを問わないが以下の状態のあるもの
    • 縦隔、心臓、大血管、横隔膜、気管、反回神経、食道、椎体、気管分岐部への浸潤
    • 同側の異なった肺葉内の腫瘍結節(同じ側の肺の中で異なった肺葉内の転移)

N-所属リンパ節

  • NX:所属リンパ節評価不能
  • N0:所属リンパ節転移なし
  • N1:同側の気管支周囲や同側肺門、肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸潤を含める
  • N2:同側の縦隔や気管分岐部リンパ節への転移
  • N3:対側縦隔リンパ節、対側肺門リンパ節、同側あるいは対側の前斜角筋リンパ節、鎖骨上リンパ節への転移

M-遠隔転移

  • MX:遠隔転移評価不能
  • M0:遠隔転移なし
  • M1:遠隔転移がある
    • M1a:対側肺内の腫瘍結節,胸膜結節,悪性胸水,悪性心嚢水
    • M1b:他臓器へ単発の遠隔転移がある
    • M1c:多臓器へ多発の遠隔転移がある

【病期分類(ステージ)】

肺がんの状態

腫瘍や転移の状態

N0

N1

N2

N3

充実成分5mm以下、すりガラス影30mm以下

T1mi

ⅠA1

 ー

 ー

 ー

充実成分が10mm以下

T1a

ⅠA1

ⅡB

ⅢA

ⅢB

充実成分がが10-20mm

T1b

ⅠA2

ⅡB

ⅢA

ⅢB

充実成分が20-30mm

T1c

ⅠA3

ⅡB

ⅢA

ⅢB

腫瘍の大きさが30-40mm T2a ⅠB ⅡB ⅢA ⅢB

腫瘍の大きさが40-50mm

T2b

ⅡA

ⅡB

ⅢA

ⅢB

腫瘍の大きさが50-70mm

T3

ⅡB

ⅢA

ⅢB

ⅢC

胸壁、胸膜、心嚢などに浸潤

T3

ⅡB

ⅢA

ⅢB

ⅢC

同一の肺葉内に転移がある

T3

ⅡB

ⅢA

ⅢB

ⅢC

腫瘍の充実成分が70mmより大きい

T4

ⅢA

ⅢA

ⅢB

ⅢC

周囲臓器への直接浸潤

T4

ⅢA

ⅢA

ⅢB

ⅢC

肺葉内を超えているが同側肺内の転移

T4

ⅢA

ⅢA

ⅢB

ⅢC

肺がんによる胸水や心嚢水

M1a

ⅣA

ⅣA

ⅣA

ⅣA

反対側の肺内に転移がある

M1a ⅣA ⅣA ⅣA ⅣA

単発の遠隔転移がある

M1b ⅣA ⅣA ⅣA ⅣA

多発の遠隔転移がある

M1c ⅣB ⅣB ⅣB ⅣB

肺がんの治療を受けるためには、分類の基準を覚える必要は全くありません。ただ、自分のがんがどのくらい進行しているのか、自分はどうして手術を受けられないのかなどが、分類に当てはめることで理解しやすくなります。自分のステージが分からなくなったり気になったりした場合は、是非このサイトの内容を参考にしてください。

肺がんの生存率は、手術する場合としない場合で変わるのか?

肺がんの治療は、手術(外科的治療)・抗がん剤化学療法)・放射線治療の3つのいずれかを行います。なかでも手術治療の成績が最も良好で、手術を受けられる状況であれば受けるべきというのが基本的な考え方になります。

ステージⅠの非小細胞肺がんに対して手術を行った場合の5年生存率は70-80%程度です。それに対して、手術を行わなかった場合はどのくらいの生存率があるのでしょうか?

1980年代の日本のデータでは、ステージⅠの非小細胞肺がんに対して放射線治療を行った時の5年生存率は22%としています。この数字を見ると圧倒的に手術を行う方が治療成績が優れていることがわかります。そのため、手術を行える場合は手術をするべきという方針になっています。

しかし、このデータは80年代という古いものです。最近では、ステージⅠの非小細胞肺がんに対して放射線治療のやり方が改良されて来ています。例えば、体幹部定位放射線照射や画像誘導放射線、治療陽子線や炭素線照射などを用いて、線量を一部に集中し高い線量を肺がんに対して照射する放射線治療が行われています。

ステージⅠの肺がんに対して48Gy/4分割の定位放射線照射を行ったところ、ⅠA期肺がんの3年生存率は83%で、ⅠB期肺がんの3年生存率は72%という報告があります。この報告では、重篤な合併症は出現しなかったとされています。

このように、今や放射線治療は手術と同じ程度の成績が出てきつつあります。手術だけでなく放射線治療も化学療法も日々苦心改良されています。そのため、数年前にやっていた治療もやり方や成績がめざましく変わる可能性があります。

ガイドラインは治療選択する上で非常に重要ですし、より失敗しにくい治療をするには適したものです。しかし、ガイドラインの根拠となっているものは、数年前から10年ぐらい前のデータであることが多いです。つまり、近年の医療の目覚ましい進歩を全て反映できていないという欠点があります。

情報社会にいる我々は、常に新しい情報に耳を傾けていく必要があります。そのために、是非自分の気になっている情報をお医者さんに伝えてみてください。患者-医療者で相談しながら治療法を決めていくことが大切なのです。

また、インターネット上には根拠のない推論や個人意見が、さも世の真理かのように発信されています。こうしたエセ情報に引っかからないようにしなくてはならないので、より中立的で最新情報をカバーした発信源を見つけてください。エセ情報を流しているサイトは、仮にそれを信じてあなたが取り返しのつかない損をしたって、なんの補償もしてくれません。おそらく「ネット情報を採用するかしないかはあなたの判断だったはずです。」と言われるのがオチです。損する可能性があるのは患者さん自身なのですから、是非慎重に判断してください。

信頼できる情報を見分ける手掛かりをいくつか紹介します。

大学や政府関係機関、有力学会が発信している情報は基本的に信頼できます。URL(サイトのアドレス)に「.ac.jp」(大学)、「.go.jp」(政府)と入っているサイトは信頼度が高いと言えます。また、がんに限って言えば、国立がん研究センターによる「がん情報サービス」は非常に参考になります。

私的団体や企業によるサイトの場合、執筆者情報が明らかにされていることは大切です。サイトの見つけやすい場所に運営者の記載があり、どんな団体なのか詳しく書いてあること、特に複数の医師が中心的なメンバーであることは信憑性が高い要素です。

執筆者が個人名のときは、たとえ所属や経歴を明かした医師であっても、極端な意見や根拠不明の意見を発信している場合があります。どれが正しい情報かがわからない場合は、一度主治医に見てもらってもいいでしょう。

大手製薬企業が有益な情報サイトを作っている場合もあります。製薬企業は法的規制を受けていて、虚偽・誇大広告などが禁止されているので、事実無根のことは書きません。「薬を使うように誘導されるのではないか?」と心配に思えるかもしれませんが、状況としては、「薬は悪だ」と主張しているサイトにこそエセ情報を書いてあることが圧倒的に多いです。

2. ステージより大事な「組織型」とは?

肺がんの中には実はいろいろな種類があります。その各々で特徴が違います。治療法も変わってきます。肺がんの主な組織型は以下になります。

  • 腺がん
  • 扁平上皮がん
  • 小細胞がん
  • 大細胞がん
  • 多形がん

このページでは肺がんの種類による特徴を説明していきます。

肺腺がんってなに?

肺だけでなく、胃がん大腸がんなどにも腺がんという種類が存在します。腺がんとは、体の臓器にある分泌腺にできたがんのことです。つまり、肺腺がんは肺の分泌腺に存在するがんを指します。

肺がんの中で最も多いのが肺腺がんです。全ての肺がんのおよそ半数前後が腺がんとなります。

肺腺がんは女性に多い

男性の肺がんよりも女性の肺がんで肺腺がんの割合が高く、女性の肺がんの70%が腺がんであると考えられています。

タバコは肺腺がんの原因にならない?

肺がんの原因と言えばタバコがよく言われています。実際、タバコを吸う人は吸わない人に比べて4倍以上も肺がんになりやすいと報告されています。

肺腺がんに関しては、タバコを吸う人は吸わない人に比べて2倍程度の罹患しやすさとなっています。肺扁平上皮がんや小細胞がんでは喫煙の有無で10倍以上も罹患率が違います。肺腺がんは肺がんの中では比較的タバコの影響が出にくいと考えられます。

とはいえ、タバコの影響が存在することは事実です。肺腺がんに対しても禁煙することは非常に重要となります。

肺腺がんは症状が出にくい?

肺がんは進行するまで症状が出にくい病気です。中でも肺腺がんは症状が出にくいかもしれません。

というのも、肺腺がんは他の肺がんに比べて比較的肺の端っこにできることが多いです。肺の中心部に肺がんがある場合は、空気の通り道(気道)の太い部分に影響をおよぼすことが多く、空気を吸いづらかったり咳が出やすかったりします。しかし、肺の端っこにがんができると、かなり大きくなるまで症状が出ない場合が多いのです。

肺腺がんの中には粘液を作るタイプ(浸潤性粘液産生性腺がんなど)があり、この場合は比較的初期から症状が出ることがあります。粘液が空気の通り道に詰まったり、気道の粘膜に炎症を起こしたりして、痰や咳を生じます。

肺腺がんで症状が出るときはどんなものが多い?

肺腺がんは進行するまで症状が出ないことがほとんどです。それでも進行した場合にはいろいろな症状が出てきます。

肺腺がんの症状は、ほかの肺がんの症状と同じです。肺腺がんだけに特徴的な症状はありません。以下が肺腺がんの代表的な症状になります。

  • 咳(咳嗽)
  • 痰(喀痰)
  • 血痰
  • 発熱
  • 呼吸困難感
  • 全身倦怠感
  • 体重減少
  • 胸痛
  • 息苦しさ(呼吸困難感)

肺腺がんの患者さんでこれらの症状が強くなってくる場合は、肺腺がんが進行している可能性が考えられます。詳しくは「肺がんの症状は?」のページで説明していますので参考にして下さい。

肺腺がんの治療について

肺がんの治療には、3大治療法として手術療法(外科的治療)・化学療法(抗がん剤)・放射線治療があります。

肺がんの病期(進行度)にあわせて、この3つの治療法から最も適切な治療法を選択することになります。

肺腺がんに対しては、手術に比べると化学療法と放射線療法は効きにくいことが分かっています。

肺腺がんに対する手術療法

肺腺がんに対して最も治療成績が良いのが手術療法です。ただし、手術は身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くないことが起こる場合もあります。手術を行えるかどうかは慎重に判断する必要があるのです。

手術を行えない場合は、化学療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、化学療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。

肺腺がんに対する化学療法

肺がんに対する化学療法は大きくわけて3種類あります。

  • 細胞傷害性抗がん薬
    • プラチナ系抗がん剤
      • シスプラチン
      • カルボプラチン
    • 第3世代抗がん剤
      • パクリタキセル
      • ナブパクリタキセル
      • ドセタキセル
      • ペメトレキセド
      • ビノレルビン
      • ゲムシタビン
      • イリノテカン
      • アムルビシン
      • S-1
  • 分子標的薬
    • EGFR-TKI(EGFRチロシンキナーゼ阻害薬)
      • ゲフィチニブ
      • エルロチニブ
      • アファチニブ
      • オシメルチニブ
    • ALK-TKI(ALKチロシンキナーゼ阻害薬)
      • クリゾチニブ
      • アレクチニブ
      • セリチニブ
    • 抗PD-1抗体
      • ニボルマブ
      • ペムブロリズマブ
    • CTLA-4抗体
      • イピリムマブ
      • トレメリムマブ
    • 抗VEGF抗体
      • ベバシズマブ
      • ラムシルマブ

これらは全身の状態やがんの持っている遺伝子の状況によって使い分けていくことになります。

特に分子標的薬は色々な方向から研究が進んでおり日進月歩です。しかし、現状では肺がんの患者さんの余命を著しく改善するには至っていません。副作用も出ることのある治療ですので、どういったことが予想されるのかは、治療を受ける本人が把握していなければなりません。治療を始める前にしっかりと主治医と相談し、どういった治療を行うかを納得した上で決めることが必要になります。

肺腺がんに対する放射線療法

肺腺がんは、手術に比べると放射線治療が効きにくいことがわかっています。しかし、全身の状態などから考えて、放射線治療で十分にメリットがあると判断された場合には放射線治療が行われます。

放射線治療には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。

その欠点を解消するために、サイバーナイフ治療などの高い精度で集中して放射線を当てる方法(いわゆるピンポイント照射)が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。

しかし、サイバーナイフ治療は動くものに放射線を当てることが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。

以上で簡単に肺腺がんの特徴と治療法について説明していきました。「肺腺がんとは?原因、症状、検査、治療について」というページでより詳しい説明をしていますので参考にして下さい。

肺扁平上皮がんの特徴

肺扁平上皮がんは肺がんの中で2番目に多いがんです。肺扁平上皮がんのおおよその割合は、肺がん全体の約20%ほどです。

肺扁平上皮がんは、扁平上皮という人体を外界から守るための丈夫な細胞ががんになってしまった病気です。

肺扁平上皮がんの特徴は、たばこを吸う男性に多いことです。また、年齢は60歳以上の人が多いです。

肺扁平上皮がんの原因

肺扁平上皮がんはたばこの影響を強く受けます。たばこを吸っている人のほうが吸っていない人と比べると扁平上皮がんに10倍以上なりやすいことが分かっています。肺腺がんと比べるとたばこの影響が非常に強く出るがんであることが分かります。

また、喫煙以外の原因としては、アスベストや肺の慢性疾患(COPD、肺線維症など)、大気汚染、肺結核などが挙げられます。

肺扁平上皮がんは症状が出やすい?

肺がんは種類に限らず初期の段階では症状の出にくいことが多いです。しかし、その中では扁平上皮癌は比較的症状が出やすい肺がんです。

肺扁平上皮がんは肺の端っこ(末梢)よりは中心部(中枢)にできやすいです。そのため、空気の通り道(気道)が中心部から変形させられてしまうことが多く、咳や痰や息苦しさといった症状が出やすいです。

肺扁平上皮がんの治療について

肺扁平上皮がんも肺腺がんと同じく、手術が可能であれば手術を優先的に行います。手術(外科的治療)・化学療法・放射線療法がメインの治療になるのですが、その中でも手術が最も治療効果の高い治療になります。

肺扁平上皮がんの手術療法について

肺腺がんと同じく、肺扁平上皮がんに対しても、治療法の中で手術が最も成績が良いです。ただし、手術は身体への負担の大きい治療ですので、誰でも行えるわけではありません。また、病気の進行度によっても、手術をすることでかえって良くないことが起こる場合もあります。手術を行えるかどうかは、がんの進行度と体力と肺の余力などを鑑みて、慎重に判断する必要があるのです。

手術を行えない場合は、化学療法や放射線療法を行って治療していくことになります。また、化学療法や放射線療法も身体への負担が大きすぎて行えない場合は、肺がんによる症状を和らげる緩和療法のみを行うことになります。

肺扁平上皮がんの抗癌剤(化学療法)について

肺がんの治療薬を大きく分けると下の3系統になります。肺扁平上皮がんでは肺腺がんよりも使用できる治療薬が限られてしまいます。

  • プラチナ系抗がん剤
    • シスプラチン
    • カルボプラチン
    • ネダプラチン
  • 第3世代抗がん剤
    • パクリタキセル
    • ナブパクリタキセル
    • ドセタキセル
    • ビノレルビン
    • ゲムシタビン
    • イリノテカン
    • アムルビシン
    • S-1
  • 分子標的薬
    • ニボルマブ
    • ペムブロリズマブ
    • ラムシルマブ

肺腺がんでよく用いられるペメトレキセドは肺扁平上皮がんに用いることはできません。また、EGFR遺伝変異やALK融合遺伝子は肺扁平上皮がんではあまり存在しないことがわかっていますので、EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ)やALK-TKI(クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ)は使用できないと考えて良いでしょう。

これらの薬は各々で副作用が違うので、使い分けが重要になります。たとえば、もともと間質性肺炎のある人に副作用で肺障害が出やすい薬は避けた方が良いなどという判断がなされます。薬の副作用を含めた詳しい説明は、「肺がんの抗がん剤治療にはどんな薬を使う?」をご覧ください。

肺扁平上皮がんの放射線治療について

肺扁平上皮がんは放射線治療が効きにくいことがわかっていますが、状況次第ではメリットが高いと判断され、放射線治療が行われる場合もあります。

放射線治療には、放射線の当たった細胞を死滅させる力がありますが、狙った細胞だけ死滅させることが難しいという欠点があります。つまり、放射線は体を貫いて直進する性質がありますので、放射線が通っていく前後の細胞にもどうしても照射されてしまうのです。

その欠点を解消するために、サイバーナイフ治療などの高い精度で集中して放射線を当てる方法(いわゆるピンポイント照射)が出現しました。サイバーナイフ治療は360度のいろいろな角度から放射線を当てることで、狙った部位以外の細胞にあたる放射線を分散させることができます。

しかし、サイバーナイフ治療は動くものを狙うことが苦手です。このため、呼吸によって動く肺は対象外となっていました。近年は工夫が凝らされて、肺の呼吸による動きに同期してサイバーナイフ治療ができるようになってきています。

以上で簡単に扁平上皮がんの特徴と治療法を説明しました。「肺扁平上皮がんとは?」というページでより詳しい説明をしていますので参考にして下さい。

肺小細胞がんの特徴

肺小細胞がんは3番目に多い肺がんで、肺がん全体の15%ほどを占めています。進行は非常に速いことがわかっており、的確に診断し可及的速やかに治療することが望まれます。

肺小細胞がんは、非常に治療の難しいがんです。治療すると一旦良くなるのですが、がん細胞の増殖が速いため再発が起こりやすいです。

また、がんの進行のスピードが速いため気付いたときにはだいぶ進行してしまっていることも多いです。

肺小細胞がんの原因

肺小細胞がんの原因はタバコ以外にも見つかっています。詳細を説明していきましょう。

■喫煙

肺小細胞がんはタバコの影響を強く受けます。タバコを吸うと10倍以上肺小細胞がんのリスクが上がります。

煙草の煙には発がん物質が入っているので、がんを予防したい人も、がんの治療をしている人も、禁煙することが重要です。

また、受動喫煙も肺がんへの悪影響が言われています。副流煙を吸うとおよそ1.3倍肺がんになりやすくなります。愛煙家の人は周りの環境へ配慮して下さい。

■大気汚染物質

ディーゼルエンジンの排気ガスが問題となったことがありますが、最近では特にPM2.5が話題となっています。

PM2.5は非常に小さい粒子で、大気中に浮遊している2.5μm(1μmは1mmの千分の1)以下の小さな粒子のことを指します。大気を浮遊して人体への悪影響を与えうる物質として、以前は10μm以下の粒子である浮遊粒子状物質が注目されていましたが、それよりも4分の1の小ささの物質になります。

PM2.5の最も大きな問題は物質の大きさが非常に小さいことです。

  1. 粒が小さいため肺の奥深くまで入りやすい
  2. 粒が小さいためマスクなどで遮断しにくい

つまり有害物質が肺の奥まで入り込んでくるため、身体への悪影響が出やすくなってしまうのです。

■アスベスト

主に断熱材として壁などにアスベストが用いられていましたが、1975年に吹付けアスベストが国内で禁止となった経緯があります。ただ、それまでにアスベストのある環境で生活していた人では、肺がんや悪性中皮腫などの発症が多くなっています。

アスベストは国際がん研究機関(IARC)の発がん性物質分類でグループ1(発がん性物質であるという最も悪いランク)に位置づけられており、できるだけ環境に置かないようにするべき物質です。そのため、1975年より前に建てられた建築物が近くで改装あるいは解体されている際には、マスクをしてできるだけ空気を直接吸わないように気をつけてください。

■慢性肺疾患

慢性的な肺の病気を持っている人に肺がんは起こりやすいです。特に、慢性閉塞性肺疾患COPD)と呼ばれる病気は要注意です。

COPDは、タバコやその他の有害物質を含んだ空気を吸うことで肺に慢性的な炎症が起こる病気です。肺の細胞が有害物質によって直接ダメージを受けるだけでなく、慢性的な炎症を抑えるときに生じる活性酸素も正常な肺の細胞を傷つけてしまいます。傷ついた肺の細胞は修復されますが、何回も修復しているうちにいつしか癌化してしまうと考えられています。

肺結核

あまり知られていませんが、肺結核になると実は肺がんになりやすくなります。

肺結核になると肺の細胞に大きなダメージが与えられてしまいます。肺結核は自然に完治することは少なく、治療のために最低6ヶ月はかかるような治りにくい感染症です。つまり、持続的に肺の中で感染による炎症が起こるため、慢性的に肺の細胞が傷ついてしまいます。

肺結核と診断されてから2年以内では、肺がんになるリスクはおよそ5倍になると言われています。また、結核と診断されてから2年以上経って結核の影響が治まっても、肺がんのリスクはおよそ1.5-3.3倍あると言われています。

肺小細胞がんの症状は出やすい?

肺がんは種類によらず初期では症状が出にくいです。そのため早期発見が難しく、気付いたときには進行してしまっていることが多いです。

皮肉な話ですが、肺小細胞がんは進行が速いため症状が出やすいという特徴があります。また、扁平上皮がんと同じく肺の中心部(中枢側)にがんができることが多く、肺腺がんに比べて血痰や呼吸困難感といった症状が出やすいです。

肺小細胞がんの治療

肺小細胞がんは肺腺がんや肺扁平上皮がんに比べて化学療法や放射線療法が効きやすいです。しかし、がんを完治させるにはそれでも手術の方が優れています。

そのため肺小細胞がんの治療では、手術が可能であれば手術を行い、手術が難しければ化学療法(抗がん剤)や放射線療法を行います。

ではもう少し具体的にどんなことをやるのか解説していきましょう。

肺小細胞がんの手術

肺小細胞がんの中でも初期のもののみ手術を行うことができます。(詳細は「肺小細胞がんとは?」のページに譲ります。)

肺小細胞がんに対する手術をしたときは、どんなに初期であっても手術後に化学療法を行うことが原則になります。肺小細胞がんは進行が速く、目に見えないがん細胞が体内のどこかにひそんでいることが多いです。そのため、目に見えるがんを手術で切除しても完全には取り切れていないことがあるので、手術後に化学療法を行うことになります。

肺小細胞がんの化学療法

手術ができない場合に有力な治療となるのは化学療法です。小細胞がんの治療に使える抗がん剤は肺腺がんの治療薬よりもだいぶ少ないため、選択肢は狭くなります。

以下が主に使用される抗がん剤です。

  • シスプラチン+イリノテカン(CDDP+CPT-11)
  • シスプラチン+エトポシド(CDDP+VP-16)
  • カルボプラチン+エトポシド(CBDCA+VP-16)
  • アムルビシン(AMR)
  • ノギテカン(NGT)
  • イリノテカン(CPT-11)

これらを用いることになるのですが、最初の治療の際に選択されるのは上の3つ(シスプラチン+イリノテカン、シスプラチン+エトポシド、カルボプラチン+エトポシド)のことがほとんどです。

肺小細胞がんの放射線療法

肺小細胞がんに対して放射線治療は有効です。

特に手術のできない人に対しては、全身状態が良ければ化学療法に重ねて放射線治療を行うことが多いです。しかし、病状の進んでいる人は放射線療法を行っても良くならないこともあり、その人の全身状態とがんの進展状態から放射線療法を行うべきか(適応)が判断されます。

また、肺小細胞がんでは予防的全脳照射という治療が行われることがあります。予防的全脳照射を行うかどうかはその人の治療背景によります。

以上で簡単に肺小細胞がんの特徴と治療法について説明しました。「肺小細胞がんとは?」というページでより詳しい説明をしていますので参考にして下さい。

肺大細胞がんの特徴

肺がんの中には大細胞がんという種類があります。あまり聞き慣れないとは思いますが、肺がん全体の数%程度が大細胞がんです。

肺大細胞癌は、肺の端っこ(末梢部)に生じやすいです。そのため、初期には症状が出にくいです。肺大細胞がんで症状が出てきたときにはかなり進行している可能性が高いです。

肺大細胞がんは進行が速いことも特徴に挙げられます。肺の末梢で症状が出にくい上に進行が速いため、なかなか早期発見が難しくなります。

肺大細胞がんの治療

肺大細胞がんの治療においても、肺がんの基本原則と変わらず手術のできる場合は手術で治療します。手術が不可能な場合は、化学療法や放射線療法を行うことになります。

治療に用いる抗がん剤のほとんどは肺腺がんに用いるものと同じです。尚、LCNEC(大細胞神経内分泌がん)というがんは、大細胞がんのような名前がついていますが、性質上小細胞がんと類似しているため、小細胞がんと同じ治療を行うことが多いです。

肺多形がんの特徴

多形がんは非常にまれながんです。進行が速い上になかなか治らないことが知られています。

肺多形がんは、肺がんの色々な種類(肺腺がん、肺扁平上皮がんなど)に肉腫と呼ばれる成分が混じったようなものです。

60歳以上の喫煙習慣のある男性に多いことが分かっています。

肺の上の方(上葉)に大きな腫瘍を作ることが多く、腫瘍の大きくなる速度が速いことが特徴です。

治療してもなかなか治ることの難しい病気です。

肺多形がんの症状

肺腺がんと同じく、肺の末梢にがんができると、がんが大きくなるまで症状が出ないことがほとんどです。そのため、肺多形がんで症状が出てきたときには進行していることが多いです。

以下に肺多形がんで出やすい主な症状を記します。

  • 喀血
  • 咳嗽
  • 胸痛
  • 背部痛
  • 発熱
  • 体重減少

肺多形がんは多彩な症状が出るため、ここに挙げた以外の症状もありえます。明らかな原因なくこれらの症状が続いた場合は、一度医療機関にかかるようにしてください。

肺多形がんの治療

多形がんに対する治療は明確にこうするべきという指針がありません。そのため、腫瘍の増殖スピードや病期進行度、顕微鏡検査によるがんの傾向によって最適な治療法を決定することになります。

手術が可能な場合は手術で切除することが多いです。しかし、手術が難しい場合は化学療法や放射線療法を選択することになります。

化学療法はあまり効果的でないですが、抗がん剤の中ではタキサン系と呼ばれる抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル)の効果が高いという報告があります。また、出血のリスクが低い場合には、これに加えてベバシズマブという薬を追加したほうが治療効果が上がるという報告もあります。

3. 高齢者が肺がんになったら治療は?

高齢者の肺がんを考える上で1つ確認しておかなければならないことがあります。何歳以上が高齢者なのでしょうか?

これに厳密な結論はありません。想像してみてください、85歳でもプールやゴルフをするような元気な人もいれば60歳でも足腰が弱って歩くのがままならない人もいます。特に平均年齢の高い現代日本において、年齢で区切ること自体の意味が薄れつつあります。

以前の肺がんの治療方針は、年齢が高い人には手術もしなければ、ともすれば抗がん剤も使用しないことも多かったです。しかし、最近の肺がんの治療では、年齢ではなくて身体の元気さで判断しようという風潮になりつつあります。

とは言え、高齢者の肺がんに対して治療を行う場合に、肺癌診療ガイドラインでも75歳以上は治療方法(特に抗がん剤)について慎重に判断するべきとなっています。実際に身体への負担の強いシスプラチンなどを使いづらいのは事実です。そのため、身体の元気さをきちんと評価して、どの程度の治療まで耐えられるかを判断しなくてはなりません。

身体の元気さを評価する上で重要なのは以下のものです。

  • 心機能
    • 心臓エコー検査
    • 心電図検査
  • 肺機能
    • 呼吸機能検査
  • 腎機能
    • 蓄尿検査+血液検査(クレアチニンクリアランス)

これらを行って、どれもが正常であった場合は高齢者であろうと、通常の治療を検討することになります。

実際に身体の元気な高齢者に対して肺がんの手術を行った時のデータを新潟県立がんセンター新潟病院がまとめたものがあります。その結果によれば、高齢者の肺がんに対する手術の治療成績は一般的には肺がんの手術成績と変わらないとなっています。おそらくこうしたデータの蓄積がされればされるほど、年齢よりも身体の状態の方を重要視しようという風潮は高まると思われます。

4. 肺がんが再発すると生存率は?

肺がんは再発することがあります。再発した場合も治療法がないわけではありません。治療することでがんを根治あるいは制御できる見込みがあれば治療します。治療に入る前にがんの状況と進展度(ステージ)を再度評価し、その評価をもとに治療できるのかどうかを判断します。

手術した後に再発したがんが小さくリンパ節転移も遠隔転移も見られない場合は再度手術を検討することがあります。とは言え、最初の手術のときよりも全身状態が悪化していたり、肺活量が減っていたりすることがほとんどであるため、手術が可能かどうかは慎重に判断する必要があります。

手術ができない場合には、再発に対する治療法として化学療法や放射線療法が選択されます。

前回治療で抗がん剤を使っている場合は、もう一度同じ抗がん剤を用いても効果が低いため、違うものを選んで使用します。

しかし、肺小細胞がんの場合は少し違ってきます。肺小細胞がんの再発では、治療が終了してから90日以上経ってから再発した場合は、前回使用した抗癌剤を使って良いことになっています。

これには主に2つの理由があります。

  • 肺小細胞がんに使用できる抗がん剤は少ない
  • 肺小細胞がんに対して抗がん剤が非常によく効く

そのため、再発した肺小細胞がんに同じ抗がん剤を投与してみても、肺がんに対して効果を発揮することがあります。

再発性肺がんに対して治療を行う場合、治療法の選択肢が狭まるのは事実です。また、2種類目3種類目と抗がん剤を変えていくごとに、どうしても効果が薄れる(奏効率が落ちる)ことがわかっています。つまり、初発の肺がんと比べると生存率が下がってしまいます。どのくらいの生存率なのかは、再発したがんの状況や身体の状態によるため、主治医に一度聞いてみても良いかもしれません。

5. ステージ4だと余命は?

ステージⅣの非小細胞肺がんの余命はおよそ平均で1年です。近年の治療薬(特に分子標的薬)の改良によって余命は伸びている傾向にあります。中でも分子標的薬が奏功する場合は何年も生きることができますが、一方で分子標的薬が奏功しない場合は余命が数ヶ月伸びる程度です。

ステージⅣの肺がんは平均で1年の余命ですが、個人差も大きいです。分子標的薬の使える人やタバコを吸わない人や体力のある人などは、平均の余命より長生きできる可能性が高いです。とにかく最善の治療を目指して、主治医と相談しながら治療を決めていくことが重要です。

肺がんが脳転移すると生存率は?

肺がんは脳に転移しやすいです。長期間肺がんが体内にいたら早晩脳転移します。がんが転移することで生じた脳腫瘍転移性脳腫瘍)の約50%が肺がんによるものとも言われています。

脳転移が起こると非常に状況が悪くなります。というのも、脳転移に対して手術は難しいのと抗がん薬が効きにくい背景があるからです。また、脳に転移するということはがん細胞は全身に到達しうる状況でもあります。このようなことから脳転移が起こった肺がんの余命は長くないです。

実際にどの程度の余命なのかは、脳転移の数や大きさにもよるので一概に言うことは難しいです。それでも一つの指針となるものとして、脳転移に対して効果の高い治療法である放射線療法を行ったときの治療成績のデータがあるので紹介します。

そのデータによると1-3個(大きさ4cm以下)の脳転移のある人に対して全脳照射+定位放射線照射を行った場合、平均の生存期間は6.5か月となっています。放射線治療を行ってもこのくらいの生存期間である一方で、化学療法と放射線療法などを用いて長期間生存できる人もいます。自分に適した治療を行えば、良い結果がもたらされる可能性が上がります。

6. 肺がんで余命宣告を受けたらどうすればいい?

肺がんであることを告知されるとき、その段階の推測から余命が宣告されることがあります。その数字に少なからずショックを受けることでしょう。というのも、肺がんの余命は1年やら数ヶ月やらと言われることも多いからです。

余命を告げられたらどういうふうに考えたら良いのでしょうか?

余命1年と言われたら?

余命1年と言われることはしばしばあります。というのも、非小細胞がんのステージ4や小細胞がんの進展型(ED)の余命がおおよそ1年だからです。

突然余命が1年と言われた場合に受けるショックは計り知れません。これを受け入れるには努力と時間を要します。多くの場合、家族や友人などのサポートが手助けになって受け入れる体勢ができていきます。そのため、余命1年と言われた場合には、少し心が落ち着いたら信頼している人と話してみると良いかもしれません。詳しくは、「肺がんを告知されたらどうする?」のページを見てください。

余命1年は平均の数字です。自分にあった治療を行うことでもっと長く生きることができる可能性があります。特に分子標的薬(EGFR-TKIやALK-TKI)の使用できる場合は、予想よりも長く生きることができることもあります。そのため、自分の詳しい状況と治療法について主治医とよくよく相談してください。

さらに、1年という数字は色々なことができる時間でもあります。自分のやりたいことややらなければいけないことを一度まとめてみるのが良いかもしれません。治療しているうちにどういったことになるかは推測できませんので、自分らしい時間を作ることができるうちに、やるべきことをやると良いかもしれません。

余命1ヶ月と言われたら?

余命1ヶ月と言われた場合は、余命1年とは状況が大きく違います。多くの場合は体力も落ちており、日常生活を送るのがやっとで、ベッドの上で生活しているような状況になります。

この状況から治療を行って元気になる可能性は低いです。たいていの場合は、積極的な治療は行わずに、緩和治療を中心に行うことになります。この状況になるとしんどい症状が多く出てきますので、緩和治療は非常に重要です。詳しくは、「緩和医療って末期がんに対して行う治療じゃないの?」のページを見てください。

この時期はいかに自分らしく生活を送るかも重要になります。親しい人と過ごしたり、自分の好きなこと(音楽鑑賞、映画鑑賞など)をすることもよいでしょう。

余命半年と言われたのに元気なのはなぜ?

余命半年と言われたのに自分は元気でおかしいなあと思うこともあると思います。実はこれには2つ原因が考えられます。

  1. 平均的な余命から6ヶ月と推定されているが、実はもっと状態が良い
  2. がんの進行が症状となってまだ出てきていない

これらは一体どういったことでしょうか?詳しく考えていきましょう。

■平均的な余命から6ヶ月と推定されているが、実はもっと状態が良い

多くの場合、余命はがんの種類とステージから推定されます。しかし、その推定は今までの統計の平均値を表しているに過ぎません。つまり、本当はばらつきがあるので、自分が平均よりも長生きすることは多々あるのです。

また、ステージ自体も実は幅広いものをひとまとめにしています。ステージは、腫瘍の大きさ・リンパ節転移の程度・遠隔転移の有無で決まります。これを画一的に評価してステージは決められるのですが、例えば、同じステージⅢAでも腫瘍の大きさや周りの臓器への影響、リンパ節転移の程度は一人一人異なります。つまり、同じステージでも人によって状況は結構違うということです。

■がんの進行が症状となってまだ出てきていない

がんはある程度進行しないと症状として出てきません。実はステージⅣでも症状の自覚がほとんどないといったことはあります。がんは進行してくると、あるところで突然つるべ落としのように状況が悪くなります。このターニングポイントの手前にいる場合は、本当に元気なんだけどどうしてだろうと言ったことが起こりえます。

7. 症状で余命は分かる?

症状で余命を推測することはかなり難しいです。

なぜなら、がんは進行するまで症状が出ないことが多いですし、進行した際に出る症状も多彩だからです。また、症状が出てきたときも、実際に肺がんによって症状が出てきたのかはわかりにくいです。

ただし、データから大まかに見当がつく状況もあります。骨転移で骨が痛んできた場合と脳転移で症状が出てきた場合です。

骨転移で骨が痛んできた場合

肺がんはたびたび骨に転移します。骨に転移すると強い痛みが出たり、時には壊れた骨が神経を圧迫してしびれが出たりします。これに対して放射線療法や薬物療法(デノスマブやゾレドロン酸)を行います。

一般的に、骨転移が起こったら余命は12ヶ月以内と言われています。

脳転移で症状が出てきた場合

脳転移が起こると一般的には余命は6ヶ月以内と推定されます。脳転移の症状は多彩ですが、起こりやすいものは以下です。

  • 物が二重に見える
  • 左右どちらかの手足がしびれる
  • しゃべりづらい
  • 頭痛がする
  • 認知機能が落ちる
  • けいれん

肺がん患者にこれらの症状が出た場合は脳転移を疑わなくてはなりません。もし自覚があれば、必ず医療機関にかかって検査を受けてください。

参照文献

Int J Cancer. 2002 May 10