いっかせいのうきょけつほっさ
一過性脳虚血発作(TIA)
脳の血流が一時的に悪くなり、脳梗塞のような症状が短時間現れて消える病気。数日以内に脳梗塞に進行する可能性がある
20人の医師がチェック 238回の改訂 最終更新: 2022.02.19

Beta 一過性脳虚血発作(TIA)のQ&A

    一過性脳虚血発作(TIA)の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    一過性脳虚血発作の原因は大きく分けて2つあります。

     1つめは、血栓(血液のかたまり)が脳内の動脈に流れ、血管をつまらせてしまうことです。脳の血管がつまると、その部位が働かなくなり、脳がつかさどる部位に応じてさまざまな症状が表れます。血栓が小さく血栓のつまり方が弱ければ、一度つまった血栓は自然に溶けて、症状はなくなります。血栓は心臓の病気により生じる場合もあります。また、線維筋形成不全症という血管そのものの奇形や血管炎(血管の炎症)により血管がつまってしまうこともあります。

     2つめは、急激な血圧の低下です。動脈硬化(血管の弾力が失われ硬くなる症状)などの原因によって、全身の血圧が低下し、脳の血液循環が悪くなることです。この症状は、脳血管不全とも呼ばれます。

    一過性脳虚血発作(TIA)は、どんな症状で発症するのですか?

    血管がつまった部分により症状が異なりますが、片半身の麻痺、感覚鈍麻、失語(言葉がわからない・理解できない)、片眼の視野障害、めまい、複視(物が二重にみえる)、足の脱力感などの脳梗塞と似た症状がみられることがあります。  これらの症状は、急激におこり(5分以内)、2-30分(数分のことが多い)続きます。

    一過性脳虚血発作(TIA)が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    生じた血栓が血管を完全につまらせてしまった場合には、脳梗塞と呼ばれます。TIA自体の症状は重症化することはありません(24時間以内、多くは数分位内に症状が消失するものをTIAといいます)が、TIAがあった場合の10%が1年以内に、約30%が5年以内に脳梗塞を発症するといわれているため、早めに病院にかかることをお勧めします。

    一過性脳虚血発作(TIA)の、その他の検査について教えて下さい。

    問診(患者への質問)と、画像診断が行われます。  問診では、片半身の麻痺、感覚鈍麻、失語(言葉がわからない・理解できない)、片眼の視野障害といった症状が24時間以内に消失したことなどの症状が急激に生じたことを確認します。

     画像診断では、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)検査、拡散MRI検査などを行い、脳出血や脳腫瘍の有無、機能を失った脳組織の領域を確認します。MRA(磁気共鳴血液造影)やCTA(CT血管造影検査)を行い、脳に血液を送る動脈(内頸動脈と椎骨動脈)の画像からつまっている部分や程度を確認することもあります。また、超音波ドプラー検査によって、頸動脈の血管の厚さや動脈硬化になりそうな血管の有無を調べます。心臓の疾患が疑われる場合には、心エコー検査が行われます。

    一過性脳虚血発作(TIA)と診断が紛らわしい病気はありますか?

    TIAと区別しにくい疾患として、失神、てんかん、低血糖、末梢神経障害、末梢性めまい、末梢動脈疾患(間欠性跛行)などがあります。問診や診察だけでなく、画像診断などを用いた詳細な検査を併用することにより、TIAと診断します。

    一過性脳虚血発作(TIA)の治療法について教えて下さい。

    多くの場合、診察の際には症状がおさまっているので、再発の予防が重要になります。  再発の原因となりうる症状に対する治療(高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、経口避妊薬の中止、運動指導など)を行います。

    一過性脳虚血発作(TIA)の治療薬について教えて下さい。

    薬物の治療は、血栓ができた原因により異なりますが、血管内にできた血栓が原因の場合は、抗血小板薬(血小板血栓の生成を予防する薬)が用いられます。心臓からの血栓が原因の場合には、抗凝固薬(血液を固まらせる作用をもつフィブリンの生成を予防する薬)を用います。頸動脈が70%以上狭くなっている場合には、手術(頸動脈内膜剥離術)が行われます。

    一過性脳虚血発作(TIA)では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    入院の必要性は、症状が出たときの重症度や合併症、再発の可能性などに応じて決まります。通常は、1日から1週間入院し、その後は通院によって経過をみます。通院は、発症から2週間後と、その後の1ヵ月毎に必要とされています。

    一過性脳虚血発作(TIA)に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    高齢、高血圧、高コレステロール、糖尿病、脂質異常、心房細動、喫煙などが危険因子として知られています。そのため、血圧やコレステロール、心疾患の管理に加えて、禁煙、定期的な運動などを行うことが勧められます。

    一過性脳虚血発作(TIA)は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    一過性脳虚血発作(TIA)は、脳梗塞の前兆症状として知られています。特に、

    1)年齢が60歳以上

    2)血圧が140/90mmHg以上

    3)半身の脱力があった

    4)言葉のでにくさがあった

    5)発作の持続時間が長かった

    などの症状がみられた場合は、TIA発症後に脳卒中を発症する可能性が高いと言われています。 TIAの症状が、2週間以内の頻度でおこる場合や、徐々に重症になっている場合、心臓の異常が原因となっている可能性がある場合は、重症化に至らないよう、入院をする必要があります。