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一過性脳虚血発作(TIA)

一過性脳虚血発作(TIA)の基礎知識

一過性脳虚血発作(TIA)とは?

  • 脳の血流が一時的に悪くなり、脳梗塞のような症状が短時間現れて消える病気
    • 脳細胞が死んでしまう前に血流が回復するため、脳細胞は再び元気になり症状は回復する(多くは数分から30分程度)
  • 一過性脳虚血発作は脳梗塞の「前触れ」でもあり、48時間以内に脳梗塞発症する確率は10%と高い。脳梗塞を予防するために治療することが大切
    • 一過性脳虚血発作の後、3ヶ月以内に脳梗塞を起こす人は20%
  • 主な原因
    • 下記のように、いくつかの原因が考えられる
    • 脳や首の血管が動脈硬化を起こし、その血管のついたゴミ(アテローム)が脳の血管に一時的に詰まって流れが悪くなる
    • 心房細動などが原因で心臓にできた血栓が、脳の細い血管に一時的に詰まって流れが悪くなる
    • もやもや病などの脳の血管の病気で起こる場合がある
  • 60歳以上や、高血圧、糖尿病などのある人に起こりやすい

症状

  • 症状の特徴は「短時間で消える脳梗塞のような症状」
    • 片方の手足の動かしづらさ(麻痺
    • 片方の手足のしびれ(感覚障害)
    • しゃべりづらさ(舌がもつれる、言葉がでてこない、口がうまく閉じない)
    • 突然片目の視界が真っ暗になったり、欠けたりする
  • 症状は数分から30分程度で消えることが一般的

検査・診断

  • いつ、どのような症状が起きて、どのくらい続いたのかという情報が一番診断の役に立つ
  • 画像検査:首や頭の血管の状態などを詳しく調べる
    • 頚動脈超音波検査:首の血管の詰まり具合を調べる
    • 頭部MRI:脳の血管で狭くなっている部分がないかを調べる
  • 頭部血管造影検査:必要に応じてカテーテルを使って、脳の血管が狭くなっていないかを調べる
  • 心臓の詳しい検査
    • 心電図ホルター心電図心房細動がないか調べる
    • 心臓超音波検査:心臓の中に血栓(血のかたまり)、あるいは血栓を作る原因がないか確かめる

治療

  • 一過性脳虚血発作を起こした場合、脳梗塞発症する可能性が高い。疑われる場合は早めの検査と治療が大切
    • 症状が完全に消えていても、入院して検査・治療することがある
  • 再発や脳梗塞への進行を予防するため、原因に応じた、薬物治療を行う
    • 抗血小板薬抗凝固薬:血液をさらさらにして、血管が詰まりにくくする薬
    • 降圧薬、血糖降下薬:脳梗塞になるリスクを下げるために、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の治療を行う
  • 手術
    • 近年は手術をすることは減ってきているが、例えば首の血管の一部だけ細くなっていて脳の血流が悪くなっているような場合は、血管を拡げる手術が有効である
    • 手術方法は主に2つ
    • それぞれメリット、デメリットがあるので、個々の場合によって適した治療が選択される
    • 頚動脈内膜剥離術(CEA):首の皮膚を切って、頚動脈をあらわにして、切開し、血管内にできた塊(脂肪や石灰化部分など)をとることで、血管が拡がり、脳への血流が良くなる
    • 頚動脈ステント留置術(CAS):近年手術方式や手術器械の進化により発展してきているカテーテル治療。太ももの血管から管を入れて治療を行うので、全身麻酔で皮膚を大きく切ったりする必要がなく、全身への負担も少ない

一過性脳虚血発作(TIA)に関連する治療薬

FXa阻害薬(抗凝固薬)

  • 体内の血液が固まる作用の途中を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)が必要である
    • 本剤は血液凝固因子の因子Xa(FXa)を阻害し、抗凝固作用をあらわす
FXa阻害薬(抗凝固薬)についてもっと詳しく≫

ADP阻害薬(抗血小板薬)

  • 血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑え血管をつまらせないようにする薬
    • 血小板が凝集すると血液が固まりやすくなり血栓ができやすくなる
    • 体内にADPという血小板凝集を促進させる物質がある
    • 本剤は血小板でのADPの作用を抑えることで、抗血栓作用をあらわす
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クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)

  • ビタミンKが関与する血液凝固因子の産生を抑え、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 体内で血液を固める要因になる物質(血液凝固因子)の中にビタミンKを必要とするものがある
    • 本剤は体内でビタミンKの作用を阻害し、ビタミンKを必要とする血液凝固因子の産生を抑えることで抗凝固作用をあらわす
  • ビタミンKを多く含む食品などを摂取すると薬の効果が減弱する場合がある
    • 納豆、クロレラ、青汁などはビタミンKを多く含む
    • 本剤を服用中は上記に挙げた食品などを原則として摂取しない
クマリン系抗凝固薬(ワルファリンカリウム製剤)についてもっと詳しく≫

COX阻害薬(抗血小板薬)

  • 体内の酵素であるCOXを阻害し血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑えて血管をつまらせないようにする薬
    • 血小板が凝集すると血液が固まりやすくなり血栓ができやすくなる
    • 体内で血小板凝集を促進させるTXA2という物質はCOX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素によって生成される
    • 本剤はCOXを阻害することでTXA2の生成を抑える作用をあらわす
  • 薬剤の中には川崎病の治療などに使用される薬もある
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ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬)

  • 血液が固まる過程を阻害し、血栓の形成を抑え脳梗塞心筋梗塞などを予防する薬
    • 血液が固まりやすくなると血栓ができやすくなる
    • 血液凝固(血液が固まること)には血液を固める要因(血液凝固因子)が必要となる
    • 本剤は血液凝固因子の一つトロンビン(第IIa因子)を阻害し、血液の抗凝固作用をあらわす
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一過性脳虚血発作(TIA)の経過と病院探しのポイント

この病気かなと感じている方

一過性脳虚血発作では、急にろれつが回らなくなったり、手足が動かなくなったりします。脳梗塞と同様の症状が出ますが、症状がずっと続いてしまう脳梗塞と異なり、数十分以内に大抵は治まるのが特徴の一つです。

一過性脳虚血発作は、神経内科、脳神経外科、脳外科が専門の診療科です。注意が必要な点としては、病院によっては神経内科と脳神経外科(脳外科)が両方ありながら、病院ごとにどちらの科が一過性脳虚血発作や脳梗塞といった病気を診療しているかが異なるという点があります。どちらの科を受診しても(もしその後入院が必要そうであれば)適切に案内してもらえるはずですが、事前に確認しておきたければ、病院に直接問い合わせてみるのも良いかもしれません。

一過性脳虚血発作を主に診療する専門医は、神経内科専門医、または脳神経外科専門医です。神経の病気といっても脳出血脳腫瘍のように手術を必要とする病気から、アルツハイマー病パーキンソン病のように脳そのものに変化が生じてくる病気まで様々ですが、これらの専門医であれば一過性脳虚血発作についても一定以上の経験があると言えます。ただし、専門医でなければ一過性脳虚血発作の診断ができない、治療が行えないというわけではありません。

一過性脳虚血発作の診断は、特定の検査ではなく診察と問診で行います。CTでは診断をつけることができません。MRIは一部のケースでは有用ですが、一過性脳虚血発作ではMRIで異常が見つからないことも多く、検査だけでは診断することが難しい病気です。

脳梗塞のような症状が出てから短時間(通常は数分〜十数分)で症状が消えてしまうというのが一過性脳虚血発作の特徴ですが、少しでも症状が残っている時には、一過性脳虚血発作ではなく脳梗塞の可能性があります。そのような場合では、MRIの検査を行える医療機関を受診することが勧められます。MRIの機械があっても、たとえば夜間は専門の放射線技師が不在の場合がありますので、機械さえ病院にあれば土日や夜間でも行える検査だというわけではない点には注意が必要です。


この病気でお困りの方

一過性脳虚血発作は、いわば「脳梗塞になりかけたが、一旦治まって元通りになった」という状態ですから、その診断が確実であれば根本治療は必要ありません。しかし、一度脳梗塞になりかけたということは二度目、三度目の危険性が高いということであり、また一過性脳虚血発作の直後数日間は特にそのリスクが高いことが知られています。一過性脳虚血発作では入院が必要となることが多く、脳梗塞への進展を予防するために血液をさらさらにするような治療を行います。一過性脳虚血発作の治療は特殊な設備を要するものではなく、入院が可能な医療機関ならばどこでも行うことができます。

一過性脳虚血発作を起こした場合、その後に血液が固まりにくくする薬を飲み続ける場合があります。こちらについては、もし入院したのであればそちらの科の外来に退院後もかかり続けることがあるでしょうし、すでに高血圧や脂質異常症などでかかりつけの病院、クリニックがあるのであれば、そちらで薬をまとめて処方してもらうことも可能です。

現在の日本の医療体制では、「通院は近所のかかりつけ医、入院は地域の総合病院」といった分業と、医療機関同士の連携が重視されています。重症の患者さんが安心していつでも総合病院にかかれるように、総合病院でなくとも診療が行える病状の方はできるだけ地域のクリニックを受診してもらって、住み分けを行うという形です。これには、地元に自分のかかりつけ医(主治医)を作ることで、その人の病状全体が把握できるというメリットもあり、必要あればその都度、病気ごとに専門の医師や医療機関と連携して診療を行います。一過性脳虚血発作後の通院については、内科のクリニックであれば、特に専門を限らずに定期的な処方と対応が可能です。





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