みはれつのうどうみゃくりゅう(のうどうみゃくりゅう)
未破裂脳動脈瘤(脳動脈瘤)
脳の動脈にできたこぶ(異常な膨らみ)のこと。動脈瘤が破裂すると、くも膜下出血になる
11人の医師がチェック 205回の改訂 最終更新: 2023.02.27

Beta 未破裂脳動脈瘤(脳動脈瘤)のQ&A

    未破裂脳動脈瘤の原因、メカニズムについて教えて下さい。

    正確な原因は分かっていません。ただし、血圧が高い方、煙草を吸われる方にできやすく、動脈の壁が傷むことによってできると考えられています。また、ご家族にくも膜下出血を患われた方がいる、ご自身がくも膜下出血を起こしたことがある、多発性嚢胞腎という腎臓病がある場合にも、できやすい(見つかりやすい)ことから、体質的もしくは遺伝的な要素もあると考えられます。

    未破裂脳動脈瘤は、どのくらいの頻度で起こる病気ですか?

    40代後半以降の方を調べると、だいたい2-6%の方に見つかります。つまり、20人から50人に1人は未破裂脳動脈瘤を持っているということになります。

    未破裂脳動脈瘤とくも膜下出血の違いについて教えて下さい。

    未破裂脳動脈瘤から出血を起こすと、くも膜下出血を起こします。 逆に、外傷によるものを除いたくも膜下出血の原因のおよそ90%が脳動脈瘤からの出血です。

    未破裂脳動脈瘤が発症しやすくなる、または未破裂脳動脈瘤の人が他に注意すべき病気はありますか?

    未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、血圧が高いと出血を起こしやすいとされています。また、たばこも血管の壁を傷めるため、禁煙すべきです。 ご家族の方にくも膜下出血の方がいたり、動脈瘤が複数できていたりする場合には多発性嚢胞腎という腎臓病が見つかることがあります。

    未破裂脳動脈瘤は、他人にうつる病気ですか?

    感染症ではありませんので、他人にうつることはありません。

    未破裂脳動脈瘤は、遺伝する病気ですか?

    必ず遺伝する病気ではありませんが、ご家族のなかにくも膜下出血を患われた方がいる場合、未破裂脳動脈瘤が見つかる頻度は高くなります。

    未破裂脳動脈瘤は、どんな症状で発症するのですか?

    多くの未破裂脳動脈瘤は症状を出しません。そのため、動脈瘤とは関係がない頭痛やめまい、脳ドックなどで見つかります。 一方、症状を出して見つかる場合もあります。 具体的には、まぶたが上がらなくなる、ものが二重に見えるという症状で見つかる場合ですが、これは動眼神経という神経が動脈瘤によって圧迫されて起こります。このような動脈瘤はくも膜下出血を起こしやすい状態になっており、緊急での対処が必要なことがあります。

    未破裂脳動脈瘤の、その他の症状について教えて下さい。

    見つかる多くの動脈瘤は5mm未満の小型のものですが、10-15mmを越えるような大型の未破裂脳動脈瘤の場合には、脳自体が圧迫されて麻痺、ふらつき、言語障害、飲み込みづらさを起こして見つかることがあります。

    未破裂脳動脈瘤が重症化すると、どのような症状が起こりますか?

    未破裂脳動脈瘤が問題を起こすパターンは2通りあります。 一つは動脈瘤から出血を起こして、くも膜下出血を起こすことです。くも膜下出血を起こした場合、典型的には「経験したことのないような」「バットで殴られたような」頭痛があり、多くの場合で嘔気・嘔吐をともないます。 動脈瘤の部位によっては、その場で意識を失ったり、場合によっては呼吸が止まって、頓死ししたります。 もう一つは、稀ですが、大型の動脈瘤がさらに大きくなることで、麻痺や視力障害、嚥下障害を起こして、日常生活が困難になることです。ただし、このような脳神経の症状を起こすことはまれです。

    未破裂脳動脈瘤は、どのように診断するのですか?

    多くの場合、精密検査のために行うMRIで見つかります。脳血管を調べる条件で撮影して見つかることもありますが、ある程度の大きさがあれば、血管を見る条件以外でも見つかることがあります。 造影剤を使うとCT検査でも脳の血管を映し出すことができます。また、造影剤を使わないCTでも大型の動脈瘤が見つかることがあります。 診断自体は、上記のどれかで可能ですが、治療のために、さらに別の条件で再検査を行うことが多いです。

    未破裂脳動脈瘤の、その他の検査について教えて下さい。

    以前はカテーテルを用いた脳血管撮影という検査を行っていましたが、原則入院が必要な検査であり、通常のCTやMRIと比べて、検査自体にリスクのある検査になるため、治療を前提としない場合、あるいは治療すべきかどうかの判断が難しい場合以外は行わないことが多いです。

    未破裂脳動脈瘤と診断が紛らわしい病気はありますか?

    3-4mmの小型の動脈瘤では、MRI、CTでは血管の曲がっている部分と間違えられていることがあります。幸い、このような動脈瘤がくも膜下出血を起こすリスクは小さく、またMRIの性能が良くなっていることもあって、間違えられることは少なくなっています。

    大型の動脈瘤で内部に血栓があるものの場合には、脳腫瘍と間違えられることがあります。

    未破裂脳動脈瘤の治療法について教えて下さい。

    未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、まず血圧が高くないかを確認し、高血圧症がある場合、もしくは疑わしい場合には血圧を下げる薬を内服していただきます。また喫煙は出血のリスクを大きくするため、禁煙を勧めます。

    未破裂脳動脈瘤から出血するかどうか、一番影響があるとされるのは動脈瘤の大きさです。一般的に大きさが大きくなるほど、出血のリスクが高いとされます。 日本では一応の基準として、大きさが5mm以上の未破裂脳動脈瘤が見つかった場合には、根治的治療を”検討”します。5mm未満のものでも、動脈瘤の部位、形がいびつなものに関しては、別途考慮する必要があります。

    根治的治療には2通りあります。 一つは開頭クリッピング術手術で、頭皮を切開して、頭蓋骨に直径3cm-5cm程度の孔を開け、脳動脈瘤を露出して、その根元を金属のクリップで挟む治療です。 もう一方は、足の付け根の動脈からカテーテルを動脈瘤内部まで勧めて、中に詰め物をするコイル塞栓術と呼ばれる治療です。

    未破裂脳動脈瘤の治療法の使い分けについて教えて下さい。

    根治的治療法のどちらを選ぶかに関しての判断は、各医師で異なることが多いです。 動脈瘤のできている場所・大きさ・血栓の有無といった動脈瘤自体の要素、患者さんの年齢(動脈硬化の程度)、各病院がどちらの治療が得意か、を総合的に判断します。 一般的に中大脳動脈瘤は開頭クリッピング術が選択されることが多く、脳底動脈先端部はカテーテル治療が選択されることが多いですが、絶対にこれでなければならない、という基準はありません。

    未破裂脳動脈瘤の薬は、生涯飲み続けることになるのですか?

    カテーテル治療の場合には、術後に抗血小板薬と呼ばれる血液をさらさらにするお薬を飲んでいただくことがあります。これも使う器具によっては、かなりの長期間飲んでいただくよう勧められる場合があります。カテーテル治療で比較的単純な処置で終わった場合には1ヶ月程度の内服で済むことが多いです。 また再発のリスクが無視できないため、1年に1回程度はMRIによる確認が必要です。

    開頭手術による再発のリスクは非常に低いですが、5年に1回程度は新たな動脈瘤ができていないかなどの確認が勧められます。

    未破裂脳動脈瘤では入院が必要ですか?通院はどの程度必要ですか?

    開頭手術では、抜糸まで1週間程度必要なことが多いので、9-14日程度の入院が必要です。カテーテル治療では手術後4-5日程度経過を見ることが多く、概ね5-日程度の入院が多いと考えられます。

    未破裂脳動脈瘤は、再発を予防できる病気ですか?

    血圧のコントロール・禁煙などが推奨されますが、完全に再発を予防する方法は分かっていません。一方、幸い完全に閉塞した動脈瘤が再発することはまれです。

    未破裂脳動脈瘤に関して、日常生活で気をつけるべき点について教えて下さい。

    根治的治療を行っていない場合は、家庭血圧を付けていただき、高血圧が続くようであれば、担当医と相談して、降圧薬の調整を行うべきです。

    未破裂脳動脈瘤は、完治する病気ですか?あるいは、治っても後遺症の残る病気ですか?

    症状のない未破裂脳動脈瘤の治療に関しては、くも膜下出血を防ぐということが目的になります。開頭クリッピング術では動脈瘤の根元が完全につぶれていれば、原則完治と考えてよいと思われます。 カテーテル治療の場合にも、経過観察の血管撮影で正常な循環から動脈瘤が完全に切り離された形で造影されたり、あるいは治療数年後の血管撮影で全く動脈瘤内に血液が入り込まなくなっていれば完治と考えてよいと思われます。

    両方の治療法に、後遺症のリスクがあります。つまりどちらの治療法も動脈を直接扱う治療ですので、トラブルでこの動脈が詰まってしまうと、脳梗塞を起こして、その部分が担当していた部分の機能が障害を受け、場合によっては半身麻痺、言語障害などが起こり得ます。 開頭クリッピング術の場合には、皮膚を切開することによる、創の痛みや、口の開けづらさなどが一時的に出ます。

    未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング術では、丸坊主にしますか?

    病院によりますが、今では多くの病院で、なるべく狭い範囲だけ髪を切って行うようになっています。剃髪しないことによって感染の危険性が上がるということはありません。 髪の毛に、血糊が付くことで、洗髪できるようになるまで気持ち悪いといことはあるかもしれません。

    未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング術では髪はいつから洗えますか?

    これも病院によりますが、手術後3-4日目から洗えるところが多いと思います。傷の近くに血糊が付いていることによる菌の繁殖を抑えるためです。

    未破裂脳動脈瘤の開頭クリッピング術の後、してはいけないことはありますか?

    頭皮に傷があるため、パーマ液や、いわゆる毛染めのような刺激の強いものは、3ヶ月程度は避けて下さい。 また海・プール・温泉などは、雑菌が多いため、やはり避けていただく方が無難です。

    未破裂脳動脈瘤では、カテーテル治療の方が開頭手術より安全なんですか?

    カテーテル治療が明らかに優位なのは、頭皮を切って頭蓋骨に孔を開けなくて良い、ということです。これは、患者さんにとっては非常に大きな要素ではありますが、それだけで安全ということにはなりません。

    カテーテル治療も手術であり、リスクはあります。動脈のなかにカテーテルを入れて治療を行うため、カテーテルの周りに血栓ができたり、コイルが動脈瘤から出て正常な動脈を詰まらせたりして脳梗塞を起こすリスクや、まれに動脈瘤などから出血を起こした場合に、うまく止血できないといったリスクがあります。 一方、開頭クリッピング術も、顕微鏡や手術道具・手技の進歩により、例えば2000年代よりもずっと安全になっています。 そのため、各動脈瘤に対して最適な治療を選ぶことが重要で、どちらかの治療法が全ての動脈瘤に対してより安全ということはありません。

    未破裂脳動脈瘤では、治療後すぐに働けますか?

    カテーテル治療の場合には、動脈を刺した部分のトラブルなどがなければ、退院後すぐに仕事の戻れることが多いです。 開頭クリッピング術の場合も、退院後は特に制限はないですが、術前と比べると疲れやすいという方が多いです。