鼠径ヘルニア(脱腸)の治療について:手術方法や用手的整復について
鼠径ヘルニアの根本的な治療は手術です。手術法には足の付根を数センチ切って行う方法や、
1. 鼠径ヘルニアの治療は応急的なものと根本的なものの2つに分かれる
鼠径ヘルニアの治療には次の2つがあります。
【鼠径ヘルニアの治療方法】
- 用手整復
- 手術
用手整復は鼠径ヘルニアが嵌頓を起こしたときに、応急処置的に行われる治療です。具体的には飛び出したヘルニアを手で押し戻します。用手整復が成功すると、嵌頓状態を一時的に治すことができますが、根本的には治っていないので、再発リスクは残ったままになります。
根本的に治すには手術が必要です。手術ではヘルニアとして飛び出している腸や脂肪を元のお腹の中に戻して、出てこないように足の付け根を補強します。
2. 用手整復:ヘルニアをお腹の中に押し戻す方法
用手整復はヘルニアを手で押し戻す治療のことを指します。皮膚を切らずに速やかに効果が得られるので、嵌頓を起こした鼠径ヘルニアに有効な治療です。ただし、根本的な治療ではないので、再び嵌頓を起こす可能性が残ります。嵌頓を起こさないためには根本的な治療である「手術」が必要です。
また、用手整復は次のような状態が認められる人には行われません。
【用手整復を行わない場合】
- 嘔吐や
腹部膨満 感など腸閉塞を疑わせる症状がある - 嵌頓してから長時間経過しており腸管が
壊死 している可能性がある
これらの条件がある人に用手整復を行うと、腸が傷ついてしまう可能性があるので、その代わりとして緊急手術が行われます。
3. 手術について:方法や入院期間、費用について

手術では飛び出してしまった腸などをお腹の中に戻します。そして、鼠径ヘルニアの原因である弱くなったお腹の筋肉を糸で縫い合わせたり、筋肉の代わりとなるメッシュを埋め込んで、腸などがお腹の中から出てこないようにします。
手術の目的について
先に説明した用手整復が応急的な治療なのに対して、手術は根本的な治療です。手術を行うと、症状(足の付け根の膨らみ、違和感、不快感など)が緩和されますし、嵌頓も予防することができます。
手術の方法について
手術の方法には鼠径部切開法(ヘルニアの真上を数センチ切る方法)と腹腔鏡下ヘルニア修復術(お腹に数箇所小さな穴を開ける方法)があります。
■鼠径部切開法
ヘルニアを起こしている場所を5cm程度切開して行う手術方法です。切り口からヘルニアを確認し、飛び出している部分をお腹の中に押し戻します。ヘルニアが起きた場所にメッシュを敷いたり、筋組織を縫い合わせたりして閉鎖します。
■腹腔鏡下ヘルニア修復術
皮膚を数センチ切る鼠径部切開法に対して、腹腔鏡手術では親指ほどの小さな穴をお腹に数箇所開けて行われます。開けた穴から腹腔鏡(
手術の内容は、鼠径部切開法とほとんど同じで、飛び出したものをお腹の中に引き戻して、その上にメッシュを敷いて閉鎖します。
■鼠径部切開法と腹腔鏡手術のメリットとデメリット
2つの手術法の主なメリット・デメリットをまとめると次の表になります。
| 鼠径部切開法 | 腹腔鏡下ヘルニア修復術 | |
| メリット |
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| デメリット |
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治療の効果は2つの術式でもほとんど差はないと考えられています。どちらの治療法が自分にあっているかを考えて、お医者さんと相談してみてください。なお費用についてはこの後説明します。
入院期間について
鼠径部切開法であれば局所麻酔でも行えるので、入院しなくてもよい場合があります(日帰り手術)。一方で、腹腔鏡下ヘルニア修復術であれば全身麻酔で行う必要があるので、数日の入院が必要となることが多いです。 ただし、入院の必要性や期間については医療機関によって異なります。気になる人は医療機関に問い合わせてみてください。
費用について
鼠径ヘルニアの治療には健康保険が適用されるので、自己負担額は実際にかかった費用の1割から3割ですみます。入院期間にもよりますが、治療にかかる負担額は3割負担で10万円から15万円程度になります。 また、高額療養費制度や限度額適用認定証を使うと、費用負担が軽くなることがあります。治療前に医療機関の窓口で制度の利用方法などについて確認しておくとよいです。
高額療養費制度について詳しくは厚生労働省のウェブサイトやこちらの「コラム」による説明を参考にしてください。
参考文献
・日本ヘルニア学会