鼠径ヘルニア(脱腸)とはどんな病気なのか? 症状・原因・検査・治療について
鼠径ヘルニアは本来お腹の壁の中に収まっている腸や脂肪が足の付根付近で飛び出て、皮膚のすぐ下まできてしまう病気です。「脱腸」の名前で多くの人に知られており、耳にしたことがある人もいるかもしれません。このページでは鼠径ヘルニアの概要として、症状や検査、治療などについて説明します。
目次
1. 鼠径ヘルニア(脱腸)とはどんな病気?
鼠径ヘルニアは、内臓をお腹の中に納めている壁が弱まって、腸や腸間膜(腸に血流を送る膜)が、足の付け根付近(鼠径部)で壁から飛び出す病気です。鼠径部の膨らみとして自覚されることが多いです。一般的には「脱腸」と呼ばれ、周りで経験した人がいるかもしれません。
鼠径ヘルニアは男性に多いのか女性に多いのか
鼠径ヘルニアは男性に多い病気です。女性に起こることは比較的少ないと考えられています。女性に起こるヘルニアとしては大腿ヘルニアが知られています。
鼠径ヘルニアが多く見られる年代
鼠径ヘルニアが多く見られるのは高齢者と子どもです。高齢者にヘルニアが多いのはお腹の筋肉が衰えてくるためと考えられています。対して子どものヘルニアは、胎児期にお腹の中で作られた精巣が
外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアの違い
鼠径ヘルニアは外鼠径ヘルニアと内鼠径ヘルニアの2つに大別されます。
おおまかにはお腹の中の臓器が鼠径管という管を通っているかどうかで区別されます。鼠径管とは精巣動静脈(精巣に向かう血管)や精管(精子を運ぶ管)が通っている空間のことです。
鼠径管を通ってヘルニアを起こしているものを外鼠径ヘルニアといい、鼠径管とは関係なくヘルニアを起こしているものを内鼠径ヘルニアといいます。
2. 鼠径ヘルニア(脱腸)の症状について
鼠径ヘルニアの主な症状は足の付け根の膨らみです。不快感や違和感をともなうこともあります。鼠径ヘルニアによる膨らみは姿勢によって変化することが特徴的で、立ったときに膨らみが大きくなり、横になると小さくなることが多いです。 鼠径ヘルニアの膨らみに普段とは違う強い痛みを感じる場合には、「
3. 鼠径ヘルニア(脱腸)の原因について
鼠径ヘルニアは本来はお腹の中にある腸や脂肪が足の付根付近で飛び出でしまう病気です。その主な原因はお腹の筋肉に弱い部分ができたためと考えられています。筋肉は加齢にともない衰えるので、鼠径ヘルニアは高齢者に多く見られます。 一方、子どものヘルニアは大人のヘルニアと異なり、胎児期にお腹で作られた精巣が陰嚢に収まる過程で起きた異常が原因となります。詳しくは「こちらのページ」を参考にしてください。
4. 鼠径ヘルニア(脱腸)の検査について
鼠径ヘルニアが疑われる人には診察や検査が行われ、症状の原因が鼠径ヘルニアによるかどうかや、その程度が調べられます。
【鼠径ヘルニアが疑われる人に行われる診察や検査】
問診 - 身体診察
- 画像検査
超音波検査 CT 検査
鼠径ヘルニアの診断は主に問診と身体診察によって行われます。比較的まれですが、精索静脈瘤や、鼠径部の
検査の詳しい内容は「こちらのページ」を参考にしてください。
5. 鼠径ヘルニア(脱腸)の治療について
鼠径ヘルニアの治療は大きく分けて次の2つがあります。
【鼠径ヘルニアの治療】
- 用手的整復
- 手術
用手的整復は鼠径ヘルニアが嵌頓を起こした場合に、応急的に行われる治療です。飛び出したヘルニアを手で押し込んで、元の状態に戻します。一方で手術は根本的な治療です。飛び出している腸や脂肪をお腹の中に戻し、弱った筋肉の代わりにメッシュなどで補強します。
詳しくは「こちらのページ」を参考にしてください。
6. 鼠径ヘルニア(脱腸)で知っておくとよいこと
先述したとおり、鼠径ヘルニアの主な症状は足の付け根の膨らみです。この症状は鼠径ヘルニアがあるほぼすべての人に見られます。一方で、違和感や不快感といった症状は「ある人」と「ない人」がいます。
違和感や不快感といった症状がある人は迷いなく治療を考えるかもしれません。一方で、症状が足の付け根の膨らみだけの人は日常生活への影響がかなり小さいので、治療に消極的かもしれません。ほとんど症状がないのに、身体にメスを入れてまで治療することに抵抗を感じても無理はありません。ですが、症状が軽微であったとしても治療をおすすめします。というのは、普段はほとんど症状が気にならなくても鼠径ヘルニアはある日とつぜん「嵌頓」を起こす危険性をはらんでいるからです(嵌頓については「こちらのページ」を参考にしてください)。嵌頓がひどい場合には腸の一部を切除しなければならないこともありますし、症状もつらいものがあります。そうはならないためにも、鼠径ヘルニアに思い当たるフシがある人は、医療機関でお医者さんに治療の必要性などについて相談してみてください。
参考文献
・日本ヘルニア学会