しゅようせいすいのうほう
腫瘍性膵のう胞
膵臓にのう胞ができる病気
4人の医師がチェック 76回の改訂 最終更新: 2024.02.19

腫瘍性膵のう胞瘍に起こりやすい症状について:ほとんどは無症状

腫瘍性膵のう胞があってもほとんどの人で症状はなく、健康診断や人間ドックでの画像検査(腹部エコーCTMRIなど)をきっかけに偶然発見されることが多いです。また、別の病気で受診した際に行った画像検査でたまたま見つかるということもあります。しかし、まれに、吐き気や腹痛、黄疸などの症状が出ることがあります。

1. ほとんどの腫瘍性膵のう胞は無症状

腫瘍性膵のう胞とはのう胞が膵臓にできた状態です。のう胞とは液体の入った袋状のものを指します。腫瘍性膵のう胞ができても症状が現れることはほとんどありません。しかし、まれではありますが、次のような場合に症状が出ることがあります。

  • 腫瘍性膵のう胞により急性膵炎が起きた場合
  • 腫瘍性膵のう胞により胆汁の流れが悪くなった場合
  • 腫瘍性膵のう胞がホルモンを産生している場合

それぞれで現れる症状が異なるので、詳しく説明します。

2. 腫瘍性膵のう胞により急性膵炎が起きた時の症状

膵臓では、消化液の一つである膵液が作られています。腫瘍性膵のう胞が大きくなると、膵液を流す管(主膵管)を圧迫して膵液の流れを妨げるようになります。膵液の流れが悪くなると、膵液が膵臓自身を消化するようになって急性膵炎が引き起こされます。

また、腫瘍性膵のう胞の中でも膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と呼ばれるタイプはどろどろした粘液を産生します。粘液が多く作られて膵管に流れ込むと膵液の流れを妨げる原因となり急性膵炎が起こります。

急性膵炎になると主に次のような症状が出ます。

急性膵炎の主な症状】

  • 腹痛
  • 背部痛
  • げっぷ
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 発熱
  • ふらつき

急性膵炎についてさらに詳しく知りたい人はこちらのページも参考にしてください。

3. 胆汁の流れが悪くなることで起こる症状:腹痛・吐き気・黄疸

膵臓の膵頭部、膵体部、膵尾部

腫瘍性膵のう胞が十二指腸に近い部分(膵頭部)にできた人では、次のような症状が出ることがあります。

  • 腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 黄疸:白目や皮膚が黄色くなる

これらの症状は、膵頭部にできたのう胞が総胆管と呼ばれる管を圧迫して、中を通過する胆汁の流れを妨げるために起こります。また、流れが悪くなると細菌が増殖しやすい状態になり、胆汁に細菌感染して胆管炎を起こすと発熱の原因となります。

さらに詳しく知りたい方は「急性胆管炎」も参考にしてください。

4. 腫瘍性膵のう胞がホルモンを産生して起こる症状

腫瘍性膵のう胞の中にはホルモンを産生するタイプの腫瘍があります。これは、神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor, NET)と呼ばれ、その一部はホルモンを過剰に産生して全身の症状を引き起こします。

現れる症状は、産生されるホルモンの種類によって異なります。

インスリン血糖値を下げるホルモン)が過剰に産生されると、血糖値が下がりすぎる「低血糖」の状態になり、ふらつき・冷や汗・失神などの症状が起こります。ガストリン(胃酸の分泌を増やすホルモン)を過剰に産生する腫瘍では、胃の中で胃酸が多くなりすぎて「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」が引き起こされ、腹痛・吐き気・嘔吐・ふらつき・冷や汗・黒色便(炭やコールタールのように黒い便)などの症状が起こります。血管作動性腸管ペプチド(VIP)というホルモンが過剰に産生されると、小腸から水分が多く分泌されるようになって重い下痢が起こります。

このようにホルモンを産生して症状を起こす神経内分泌腫瘍(NET)は「機能性NET」と呼ばれます。

症状を起こす腫瘍性膵のう胞はまれではありますが、症状の原因が腫瘍性膵のう胞であると診断された人は、外科手術を含めた治療が必要になります。特に、急性膵炎や黄疸を起こすような腫瘍性膵のう胞はがん化している可能性が高いと考えられているため、膵臓を切除する手術が勧められます。