ほうけい
包茎
亀頭が包皮に覆われている状態。包皮をめくることが可能かどうかで真性包茎と仮性包茎に分けられる
5人の医師がチェック 60回の改訂 最終更新: 2022.02.09

包茎の治療:ステロイド治療、背面切開術、環状切除術

包茎の治療にはステロイド治療と手術の2つがあります。ステロイド治療は子どもの真性包茎に対して行われ、手術は大人にも子どもにも行われる治療です。この章では治療の詳しい内容や治療が必要な人などについて説明します。

1. ステロイド治療

ステロイド治療は小児の包茎に対して行われることがあります。具体的には、亀頭包皮炎を繰り返す子どもや排尿がうまくできない子どもです。

具体的な方法は以下の通りです。

  1. 無理のない範囲で包皮をむく
  2. 包皮をむいた部分にステロイドが少量含まれた薬を塗る
  3. むいた包皮をもとの位置に戻す

この一連を流れを1日に1回もしくは2回行います。最初は少し出血することもあります。少しにじむ程度は問題がありませんが、毎回出血する場合は医療機関を受診して様子を診てもらってください。

また、この治療で最も注意してほしいのは「3.むいた包皮をもとの位置に戻す」です。

包皮は少しずつしかむけないので、むいた後に元に戻さないと嵌頓包茎が起きてしまうことがあり危険です。必ず元に戻してください。この治療で多くの男児が亀頭を露出できるようになります。しかし、治療後に包皮をむくことをやめてしまうと、治療前の状態に戻ってしまうことがあります。このため、毎日のお風呂で包皮をむいて亀頭を露出させる習慣をもつことが大切です。

2. 用手的整復

嵌頓包茎に対して行われる治療です。

嵌頓包茎はむいた包皮が陰茎を締め付けてしまった状態で、真性包茎や仮性包茎の人が無理に包皮をむいたときに起こることが多いです。嵌頓包茎が起こると包皮によって陰茎の血液の流れが妨げられてしまいます。嵌頓包茎の状態が長く続くと陰茎の組織がダメージを受け、その後の性行為や排尿に影響を及ぼすことがあります。

用手的整復は手で包皮を元の状態に戻す方法です。嵌頓が起きた直後であれば自分で治せることもありますが、うまくいかないことも多く、時間の経過とともに整復は難しくなっていきます。自分で治せない状態になった場合は、早めに泌尿器科や救急外来を受診してください。包皮による締め付けが強く用手的整復が難しい場合には次に説明する手術を行います。

3. 手術

包茎の手術には背面切開術と環状切除術の2つがあります。それぞれの方法について説明します。

背面切開術

背面切開術は「真性包茎」や「用手的整復ができなかった嵌頓包茎」に対して行われます。「背面」とありますが、実際には陰茎の表側の包皮を縦方向に切開して、亀頭を露出させる方法です。切れ込みを入れた後は包皮同士を縫い合わせます。

環状切除術

環状切除術は主に仮性包茎に対して行われます。

陰茎と包皮の癒着がほとんどない仮性包茎に行うことができますが、亀頭の露出が不十分な場合にはできません。

環状切除術では、陰茎を覆っている余分な包皮を切り取って亀頭が常に露出した状態にします。包皮は陰茎をぐるりと一周するような形で切り取られます。りんごの皮をむく様子をイメージしてもらえるとわかりやすいです。切り取った包皮の間は糸で縫い付けられ、1-2週間程度でくっつきます。包皮が少なくなった分、亀頭が常に露出される状態になります。

手術は痛いのか?入院は必要なのか?

包茎の手術は局所麻酔で行われることが多いです。

痛みが十分に抑えられていることを確認してから手術が行われるので、痛みを感じることはほとんどありません。とはいえ、もし痛みがある場合は我慢をする必要はありません。遠慮なく医師に痛みがあることを伝えてください。局所麻酔を追加することで痛みをさらに抑えることができます。

手術はほとんどの場合外来で行われ、入院することはまずありません。

外来で手術を受けた後は自宅で手術をした場所に負担をかけないようにし、数日後に外来を受診して傷の状態を診てもらいます。自宅での過ごし方については「人には聞きづらい包茎で知っておきたいこと」で説明しているので参考にしてください。

4. 包茎で治療が必要なのはどんな人なのか

包茎には仮性包茎、真性包茎、嵌頓包茎の3種類があります。嵌頓包茎の人は治療が必要なのですが、悩ましいのは真性包茎と仮性包茎の人です。

■真性包茎

真性包茎は陰茎全体を包皮が覆っており、手で包皮をむいて亀頭を露出できない状態のことです。真性包茎の人は次の症状がある場合、治療を検討することがあります。

  • 亀頭包皮炎を繰り返す人
  • 嵌頓包茎を繰り返す人
  • 排尿障害ある人
  • 性行為に影響がある人

子どもの場合、陰茎が成長して真性包茎が治ることがほとんどなので、治療をせずに様子をみるのが一般的です。本当に手術が必要であるかは特に慎重に検討されます。

それぞれの症状について詳しく知りたい人は「包茎の症状」を参考にしてください。

■仮性包茎

仮性包茎は、普段包皮によって亀頭が被われているのですが、手で包皮をむけば亀頭を露出できる状態のことを指します。仮性包茎の人に問題が起こることはほとんどありませんし、異常な状態ではありません。特に症状がなければ治療の必要性はありません。どうしても見た目が気になる人などのみ治療を受けることがありますが、仮性包茎で絶対治療をしなければいけないケースは、決して多くないことを覚えておいてください。

5. 自分で無理に治そうとするのは避けましょう

包茎はデリケートな問題であり、人には相談しづらいことです。

このため、自分でなんとか治そうと無理をしてトラブルが起きてしまうこともあります。例えば、真性包茎の人が無理に包皮をめくったために嵌頓包茎を起こしたりすることもあれば、はさみなどで包皮の一部を切って出血が止まらなくなることもあります。

包茎が相談しづらいのは理解できますが、自分で無理に治そうとするべきではありません。お医者さんに相談して、どんなことで悩んでいるのかを聞いてみてもらってください。自分の性器の形は他の人とは違う、と思い込んでいても、実はみなと変わらないこともあると思いますし、手術が必要ないと言われることもあります。

相談しづらいことだからこそ、自分一人で抱え込むのはよくはありません。くれぐれも自分で無理に治そうとすることだけはやめるようにしてください。